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「聞いたところ――アルトという冒険者は決闘の際、どんな条件も
こいつ、やはり事前に下調べを済ませている。これまでの話はすべて演技で、真の目的は俺を
とすると恐らく俺に突きつけてくる要求は、ワンショット制かあるいは縛りプレイの――。
「……ごたくはいい。さっさと決闘申請をしてきたらどうだ。どのような内容でも俺は構わん」
「どのような、か……聞いたな皆の衆、アルトはどんな決闘でも受けて立つそうだ!」
ケベルが勝ち誇ったかのように大声をあげる。
それにつられて『オオオ!』と賛同する冒険者たち。この演出すらもケベルの用意したものかどうかは知らないが、なるほど、外堀りを埋める
「ねえアルト、大丈夫なのあえて不利な条件なんて呑んで」
と、ここでコトハが耳打ちしてきた。不安を隠せないのか、表情がくもっている。
「大丈夫、これまでも不利な場面なんていくらでもあったろ」
「で、でも……それでもしアルトが負けちゃったら……」
「コトハ、お前はひとつ誤解をしている。――俺は決して楽観主義者じゃない。勝てる戦いじゃなければ承諾しないよ」
コトハはまだ何か言いたげにジッと見つめていたが、やがて仕方ないと言いたげに息を吐いた。
「ほんとにもう、アルトはまったく……」って聞こえてますよーコトハさーん。俺なにかやらかしたかな。
「これはこれは、まだ
ケベルが
その言い方からして、どうやら決闘相手が奴ではないようだ。やはり俺の見立て通り、ケベルは初めから俺とやり合うつもりで話を持ち掛け、さらに決闘専用の
「ひ、卑怯者め、そうまでして勝ちたいというのか!」
沈黙していたフィイが声を荒げた。
「ふん、何とでも言え。良いと受けて立ったのはそこの彼だ。おじけづいてやっぱりやめたいと言うのなら話は別だが……これだけの観衆の前で
「
すると彼女はうぐぐ、と
「俺のために怒ってくれてありがとうフィイ。だけど大丈夫だから安心してくれ。――さあケベル、切り札を用意しているのだろう。ならばさっさとそいつを招いてはどうか。そう心配せずとも俺は逃げも隠れもしない」
俺の宣誓に合わせて、ケベルが口角を吊り上げる。欲望にまみれたいやらしい笑みだ。
「であればお望み通り見せてあげましょう。こちらがあなたの対戦相手を務める――ハイランダーのルドラさんですぞ!」
あれ……いまルドラって言ったか? その名前どこかで聞いたことのあるような……。
「彼の対人戦績は圧倒的な百十九勝一敗。ほぼ負けなしといった間違いのない
ケベルの
いよいよ現れた決闘代理役の冒険者、ルドラの様子がおかしいと気づいたのである。
「……」
ルドラは俺をまじまじと見つめながら、真っ青な顔色で全身をみっともなく震わせている。とても有利な戦いと思い込む戦士の顔つきではない。既に
やっぱりこいつ、アレだな。俺がバルドレイヤに来た初日にやっつけたあのハイランダーか。たとえ剣でのタイマンだとしても脅威じゃない。
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