061


「――もし良かったら一緒にレベリングをしてみないか? 俺たちのパーティーに入ってみれば、色々と得られるものがあると思う」


「私たちがアルトさんのパーティーに、ですか!?」


 ラートの驚嘆と共に、テオとハルワ、ナッキがどよめく。


「これはなかなかいいチャンスかもな、効率の良い手段が学べるってわけだ」


「期待できるかもしれないわね!」


「やり方さえ分かりゃあ、俺たちだって最強の冒険者も夢じゃねえ!」


 三人はがやがやと歓喜かんきの声を飛び交わせている。……嫌、ではないんだよな?


 期待してくれてるのはいいけど、そんなに大したことじゃないぞ。


「それじゃあ一時的にこっちにきてくれ、申請しておくから通しておいて欲しい」


 パーティー画面を開いて、ラート、テオ、ハルワ、ナッキの四名にパーティー申請を送る。――承諾はすぐにされた。


 これだけの大人数でパーティーを組むのも懐かしいな。最大で八人までメンバーは増やせるんだけど、前じゃ基本的にソロだったし。こういうのも悪くない。


「よしこれで揃ったな。まずはきみ――テオがタゲを取ってきてくれ。その後どうなるか、もう一度見てみたい」


「おぉ、合点だ!」


 生き生きとした返事をして、テオはモンスターの群へと突っ込んでいく。


〝トルニヤ峠〟はMOBの湧きがそこそこいいから、中途半端な立ち回りをすると、想像以上にMOBを集めてしまう。だからその塩梅あんばいが難しいんだけど……。


「スキル〝挑発〟! さあこいモンスターたちよ、俺さまはここにいるぜ!」


 テオはモンスターが密集している場所で〝挑発〟を発動させた。その結果、釣れたモンスターの数は三十……いや四十ちょっと。これはまた大量に釣ってきたなーあいつ。


「ねえだから多すぎるんだってば! そのにまで減らさないと!」


 群となったモンスターたちを見て、ハルワが声を荒げる。


「ガハハ、心配ねえさ! なにせ今回はアルトさんたちがいるんだ、これくらいどうってことはねえ!」


 いやこれはそういう趣旨ではないんだよテオ。やりたいことは分かるけども。


「この数は俺たちじゃあ倒しきれないぜ、せめてじゃないとなあ」


 ナッキがやるせない風に言った。


 聞いたところ、テオ、ハルワ、ナッキは自分たちの処理できるモンスター数の認識にバラつきがある。テオは四十、ハルワは四、ナッキは二十。その認識をすり合わせしないままレベリングを行うから失敗するんだ。最初は誰もが通る道、単純なコミュニケーションエラーだ。


「次はアタッカー陣が攻撃してみてくれ。全部倒そうと思わなくてもいいから」


「えぇ、あれと真正面から戦うの!?」


「あんまりやる気がでねえなあ」


「いいからいいから、試しにスキルを撃ってみてくれ」


 あまり乗り気ではなさそうに、二人は武器を構え直す。


 ナッキは長弓を、ハルワが長杖を振りかざしてスキルを唱えた。


「アローレイン!」


「マジックボルト!」


 雨のように降り注ぐ弓矢と、大気を駆ける複数の魔力弾。


 弓矢は指定先が悪かったのか、先頭だけのモンスターにしか当たっていない。魔力弾に至っては、ほとんど射程距離外だったため、モンスターを捉える前に途中で消滅してしまった。


 なるほどなるほど、こいつらの悪いところがだいぶ明らかになってきたぞ。


「ちょっと、やっぱりこんなの無茶よ!」


「なあアルトさん、悪いけど手伝ってくれ!」


 そしてパニくるアタッカー陣。


 放っておいてもあれだし、とりあえず処理しておくか。


「言っておくが俺のパーティーメンバーは全員強いんだぞ? 俺じゃなくたっていい――やれるなコトハ」


 こくりと頷いて彼女はモンスターの群へと飛び出していく。


『うおぉ……すげぇ……』


 コトハは迫るモンスターを、うまく立ち回って最小限の被ダメージのまま、持ち前の二刀で溶かしていった。これまで散々、床を舐めてIDで頑張ってきたんだ。対複数戦での動きも理解してる。いまさら格下モンスターなんて相手にならない。


「――みんなおつかれさま。早速、反省点を聞いてみたいんだけど、三人は今の狩りでどこが悪かったと思う?」

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