第65話 思わぬ味方

「やはりか! 私は神原かんばら 祐二ゆうじ。士道さん、あなたのお爺様には随分お世話になった」

「は、はぁ……」


 えっ? 俺のじいさんが、署長――神原さんに、何かしたのか?


「とても目をかけてもらえたものだよ。いろいろと教えてもらったこともある。その恩人のお孫さんが困っているなら、何もしないわけにはいかないな」


 神原さんが俺を見て、頷く。


「よろしい! 士道さんたちには、正式に護衛をつける。といっても近くを歩くわけじゃなく、少し離れた場所から見てる感じだがな。私たちとしても、懐王猛流や怒羅恨ドラゴンは対処したい存在だ」


 あれよあれよという間に、話が決まってしまった。


「とは言っても、士道さんたちの行動を制限するような真似はしない。ただ、視線は感じるかもしれないが……大丈夫か?」

「俺は大丈夫です」


 そのくらいなら気にしない。むしろ大助かりだ。

 礼香とリリアンネも、同意していた。


「なら決まりだ。何かあったら、いつでも電話してくれ。うちの警官たちが駆けつけるだろうさ」

「はい!」


 思わぬ味方を得て、俺たちは警察署をあとにした――。


     ***


 警察署から出ると、学校用アドレス宛にメールが届いてたのを見つける。

 差出人は、須王さんだった。


「『もう警察署には行ったか』……手回しが早いなぁ」


 文末には、『今手すきなら電話くれ』とあった。


「リリアンネ、礼香。ちょっと止まってくれ。電話したい」


 適当な場所で端によけてから、須王さんに電話する。


「もしもし? 士道です」

『勇太さんか。メールは見てくれたか?』

「はい、見ました」

『そうか。なら、今から言うホテルまで来てくれ。俺が事務所代わりにしてるホテルだ。そこで直接話したいことがある。後で地図も送ろう』


 士道さんが、ホテル名を読み上げる。幕浪の駅から、さほど離れていない場所にあるホテルだ。


「服は……どうしますか?」

『そのままでいい。俺がかけあって通れるようにしとく』

「わかりました。今から向かいます」


 それだけ言って、電話が終わった。

 俺はリリアンネと礼香に声をかけてから、幕浪駅へ向かう。


 ――と。

 俺の背中を、悪寒が走り抜けた。


 誰かに見られてる? 刑事さんたちの尾行は当然だけど……なんか違う気配な気がする。


「ゆーた、速いよー!」

「えっ? あっ、しまった。つい……」


 いつの間にか、早足になってたようだ。

 あせる気持ちを落ち着かせながら、俺はリリアンネと礼香が合流するのを待った。


     ***


 そして、三人で指定のホテルまで到着した。


「おう、待ってたぞ。こっちに来い」


 須王さんが、手をひらひらと振る。


「まずはこれを受け取れ」


 差し出されたのは、2402と2403と書かれた鍵だった。うちと同じで電子タイプなのか、カードキーだ。


「これは……ホテルのルームキーじゃないですか!? どうして?」

「こんな共有区画じゃ話せねぇからな。そのぶん、客室なら秘密が守られる。まずは俺の部屋までついてこい」


 言われるがまま、俺たちは須王さんについていく。




 エレベーターで向かった先は、最上階だった。

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