第51話 新年、初日の出

「ふわぁ……」


 新年の寝起きは、なかなかどうしていいものだった。まさか夢でまで、リリアンネと一緒だなんて。しかも見た夢は、一富士二鷹三茄子だ。最高に歓迎されていると思う他ない、そんな夢だった。


 時計を見れば、午前6時。

 まだギリギリ、初日の出が見られるかもしれない。


「おはよう、リリアンネ。起きられるか?」

「ん、んん……」


 寝不足だろう。年を越すその時まで、起きていたのだから。

 しかし不満な顔一つせず、リリアンネは起きてくれた。


「よし、初日の出を見よう!」

「うん……!」


 俺はリリアンネを連れ、ベランダに出る。

 そこには、見事なまでに明るく美しい初日の出が、顔をのぞかせていた。


「これが初日の出ってやつだ……! イイもんだろ、リリアンネ!」

「綺麗……いつもと違う、夜明けだね!」


 ああ、やっぱりわかってくれるか。

 夜明け……日の出といっても、今日だけは特別なものだ。


「おう、勇太。おはよう」

「おはようございます」

「父さん、母さん。おはよう」

「おはようございます、お父さん、お母さん」


 父さんと母さんも、ベランダに出て初日の出を見る。


「なぁ、勇太、リリアンネさん」

「何?」

「はい」

「今年の抱負ってのは、あるかい?」


 抱負かぁ……。うーん……どうしたものか?


「ゆーたといっぱいイチャイチャします!」


 ぶっ! そうか、それが抱負かリリアンネ……ぷぷっ。


「あっ、ゆーた! 今、笑ったでしょ!」

「まぁな、びっくりしちまった! 可愛いぜ、リリアンネ!」

「もぉ……❤」


 ふむふむ、どうやら“可愛い”って言葉はテキメンに効くようだな、リリアンネ。


「そーいうゆーたはどーなのかなー、ほーふ抱負!」

「おあっ!? お、俺か……」


 言えない。「俺もお前と同じだよ、リリアンネ」だなんて、言えない。


「ふんふん……やっぱり私とイチャイチャしたいんだね、ゆーた! えへへー❤」

「おわっ!」


 抱きつかれた。ちょ、おっぱい当たってる……。


「当ててんのよ! ……なぁんてね、うふふ」


 絶対言ってみたかっただろそれ!


「わーお、新年早々お盛んだなぁ」

「孫の顔、意外と早く見られるかもしれませんね」


 思いっきり茶化されてしまった。

 けど、子供かぁ……考え始めてもいいかもな。


「精の付く料理をたっぷり振る舞いましょうか。うふふふ」

「いいな、母さん。あと、俺ともイチャつくのを頼む」

「あらあら、またどこか二人きりになれる場所に出かけませんとね」


 うわぁ……相変わらず熱いなぁ、俺の両親。仲がいいのはいいことだけどさ……。

 かという俺も、期待しちまってる。


「だがその前に! 初詣行くぞ! イチャつくのはそれからだ!」

「はいよ!」




 俺たちは急がずゆっくりと、朝食をとり始めた。

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