帰省
第36話 父さんと話し合い
俺はメッセージを見て、思い出した。
そうだった、そろそろ帰省の時期だったな。
通知を開いて、全文を見る。
『勇太、元気か? そろそろ、新年前の帰省について話したいんだが』
仰向けの姿勢のまま、返信を入力する。
『悪い、明日の朝にしてくれ。ちょっと疲れた』
そのままスマホを置こうとして――またメッセージが来た。
『分かった。もう遅いしな、今日は休め』
まったく、わかってくれて何よりだぜ父さん。
俺は既読だけ付けて、今日は眠ったのであった。
~~~
翌朝。
リリアンネは隣にいない。気を遣って、そっとしておいてくれたんだろう。
いつもならさっさと朝食を作るところだが、正直、まだ食欲がない。昨日礼香をフったのが、相当にこたえたんだと思ってる。
ともあれ、作らないなら作らないで、父さんにメッセージ送っとくか。
『おはよう、父さん。帰省の話だったな』
スマホを置こうとして――あっという間に既読がついた。
「
思わず叫んでしまった。
父さん、もう起きてたのかよ……。
ともあれ、起きてるってことはすぐに返信がくるかもしれない。実際、父さんは返信送るのが速いんだ。既読が付いた次の瞬間にはもうきてる、なんてのもザラだ。
待つこと10秒ほど、メッセージがきた。
『おはよう、勇太。そうだぞ、いつにする?』
俺は少し悩む。リリアンネを、どうしたものか。
だが、一人にする気にはならない。それに置いていったとしても、おそらく勝手についてくるだろう。
『日程か……ちょっと待ってくれ。一緒に連れてきたい人がいる』
悩んだ末に、こう送った。
間髪を入れず、父さんから返ってくる。
『おっ、誰だ? 礼香ちゃんか?』
だろうな。俺と礼香の仲は知ってる。
だけど、礼香は昨日フったんだ。それに、連れていくつもりもない。
『いや、別の人だ。イギリス人の女性でさ』
もちろん嘘だ。以前礼香に向けて使った、リリアンネのでっちあげ設定をそのまま使う。
『ほほう、そうかそうか。お前、意外とやるな勇太』
案の定、彼女だと思われてるな。ま、ほぼ正解だ。
正式な付き合いじゃないが、同棲はしてるからな。
と、父さんからさらにメッセージが送られてくる。
『ふむふむ、話が見えてきたぞ。つまりその彼女さんと相談してから、日程を決めたいってワケだな?』
『わかってんじゃねぇか父さん』
男同士だ。父さんはある程度察しがいいのもあって、ホント助かる。
『そんじゃ、今日中に話決めてこい。決まったらいつでもいいから、書いとけ』
『あいよ』
ひと区切りついたところで、俺は朝食を作り出した。
~~~
「起きろ……って、今日は隣の部屋で寝てるのか」
リリアンネを探してみたが、俺の家にはいない。
こりゃ、もしかしたら一人飯かな――
「おはよー、ゆーた!」
「うわっ!」
いつの間にか俺の目の前に来てたよ、リリアンネ。
「お、おう、おはよう」
「うふふ。それじゃ、今日もいただいてもいいかな?」
「いいぜ……ただ、このあとちょっと話がある。付き合ってくれ」
「うん。いーよ」
何とか一人飯は回避できたみたいだ。
俺は安心しながら、リリアンネの分の配膳をしたのであった。
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