第16話 キャンパスの案内

「ごちそうさまー! んー、美味しかった」

「そうか……何よりだ」


 レストランから出た後。

 俺と礼香は特大パフェを食べきったリリアンネを見て、いまだショックを隠し切れなかった。

 正直、ここまで食べるとは思わなかったのである。リリアンネが財布を別に持ってきていたのだけが救いだった。でなければ、今頃俺たちの懐事情はすっかり冷え切ったものになっていただろう。


「よしっ、それじゃどこから行こっかな」


 そういえば、礼香がリリアンネにキャンパスを案内するって言ってたな。ここは本校舎に連れていきたいところだが、あいにくここからは少し距離がある。


 結局、最初は礼香に譲ることにした。


「礼香、お前の文学科があるキャンパスってここの近くだよな?」

「うん」

「ならちょうどいいんじゃないか?」


 俺や礼香にとっては庭みたいな大学も、リリアンネからすれば未知の世界だ。

 礼香はハッとしつつ、俺の提案を肯定してくれた。


「そっか。それじゃリリアンネさん、私がいつもいるとこからでいい?」

「うん」


 リリアンネの同意を得て、俺たちはキャンパスの案内を始めた。

 各種教室や教員室、PCルームなど、基本的な部屋から回っていく。


「うわぁ、広ーい!」


 という今の言葉はリリアンネの感想だ。校舎を歩いていたとき、ふと呟いたものである。

 もっとも、俺たちのいる“龍善りゅうぜん大学”は、東京ドームにして4.5個分という、まあまあ広大な敷地面積を持っている。学部も、礼香の文学部や俺の異星人学部をはじめ、5つ以上は存在する。

 すべてを案内して回るには、今日だけでは時間が足らなすぎた。


 さて、そうこうしているうちに、礼香の校舎案内が終わった。

 次は俺の番だ。


「リリアンネ、もう来ただろうが、ここが俺がいつもいる校舎だ」

「うん。にしても、やっぱり大きいねー」

「ああ、そうだ。探せばもっと大きい校舎は日本にあるだろうが、この辺りでは一番だな」

「わぁー」


 相も変わらず、驚いていた。

 ここ最近はずっとリリアンネに驚かされっぱなしだったため、驚かせ返した――ありていに言えば仕返しした――気分だ。

 もっとも、その姿もかわいらしいので、俺としてはまだ眺めていたいのだが。


 そうして歩いているうちに、食堂まで来た。


「ここが食堂だ。普段ならここで食べてるんだけどな」


 今日は敢えて行かなかったわけだ。

 もっとも、今なら人もまばらになっている。入る以外の用はないが、行ってもよさそうだろう。


「ねぇ、ゆーた」

「なんだ?」


 と、入った瞬間。リリアンネが目を輝かせながら話しかけた。


「ゆーた、ここでも食べてみたい」

「嘘だろ!?」


 少し驚かせ返したと思ったらすぐこれだ。


「な、なぁ、リリアンネ……。ここの食べ物って、そんな美味しいか?」


 ここと言いつつ、すぐあとに“地球の食べ物だぞ”と内心で補足する。


「うん! すっごい美味しかったよ!」

「わーお……」


 まだ食べるつもりだ。

 チラッと見ると、礼香も同様にして驚いていた。まあ当然の反応だ。こんな細い――突き出たおっぱいとハリのあるお尻を別にすれば――体でここまで食べられるとは思わないだろう。

 実際、俺も思ってないし。


「無理はするな、今晩作ってやるから」

「しょーがないなー。ほんとは今食べたいけど、ゆーたが言うなら」


 どうやら、思いとどまってくれたようだ。

 今晩キッチリと、美味しい料理作らないとな。




 そう思いつつ、俺はリリアンネに引き続きまだ行っていない場所の案内をしたのであった。

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