20「面倒になりました」②




「あーあ」


 きっと獣人たちは純粋なのだろう。

 明らかにギュンターに言わされたロボの発言を信じて、その場にひっくり返ってしまったのだ。

 これにはサムたちも苦笑するしかない。


「――ロボに俺との子供ができている、だと!?」


 ボーウッドに声をかけようとすると、彼も彼でロボの言葉を信じてしまったようで、彼女のお腹を見て震えていた。


「ボーウッドも引っかかるんかーい!」


 どうやらボーウッドも他の獣人に負けず純情のようだ。


「いやいや、することしてないんだから子供はできないでしょうに!」

「あ、そうでした! さすが兄貴! 尊敬します!」

「そんな尊敬はいらないよ!」


 ボーウッドがロボに気があるのは確かだが、ロボ的にはどうなのだろうかと気になる。

 アリシアと一緒にいることの多いロボだが、たまにボーウッドといることを見ている。大体の場合が、使いっぱなしにされていることが多いのだが、ロボの性格上どうでもいい相手に声をかけることはしないのでチャンスはあるのだと思う。

 なによりもロボはボーウッドを一定の評価をしている。

 サム個人としては、強い弱いで結婚しなくてもいいと思うし、女性が強くて男性が弱くたって問題ないように思える。

 男性側からすれば愛する伴侶を守りたいと思うかもしれないが、まずロボをどうこうできる存在は限られているのだ。


「おい、サム。そろそろ私は飽きてきたぞ。獣人どもをとっとと追い返して、帰るぞ。いい加減、寒い」


 ゾーイは少し鼻を赤くして言った。

 彼女をよく見れば、鼻を啜っていて寒そうだ。

 寒さ対策はしているようだが、寒いには寒いのはサムも同じだ。


「そうだね。おーい、友也。こいつらちゃちゃっと転移してくれ――おっと」


 獣人たちをすべて獣の国に送り返すよう友也に言おうとしたサムは言葉を止めて、国境に視線を向けた。

 サムだけではない、友也、ゾーイ、ロボ、ボーウッド、ギュンターも同じくなにかに気づいたようだ。


「友也の言っていたことは本当だったみたいだね」

「あー、よかったー! 情報が売りの僕が間違えた情報を渡していたとか、焦った! 本当に焦った!」

「ふん。どうやらこの獣人どもはロボを慕って勝手に動いただけで、また別の動きをしていた獣人がいたということか。まさかとは思うが、こいつらもロボに懸想などしていたら、温厚な私も全員殺すかもしれんぞ」

「さすがにないでしょう!」


 国境から獣人たちが、百人ほど現れる。

 これで総勢二百人を超えている。

 よくも寒い中頑張ってきたものだと思う。


「――ロボ・ノースランド……生きていたのか。まあいい。我々は、敗北した貴様にはもう従わん。だが、人間上がりの魔王にも従う気はない」

「へぇ」


 獣人たちは、狼族、獅子族、虎族、ケンタウロス、そして先頭に立つのは翼人だった。







 〜〜あとがき〜〜

 そろそろ片付けます!

 コミック1巻発売しております!

 何卒よろしくお願い致します!

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