19「面倒になりました」①
サムたちと獣人たちがボーウッドを見た。
彼は口をあんぐり開けて驚きながらも、忠実にロボの肩を揉み続けていた。
「お。王よ。獅子族に我ら狼族を率いることは……」
「なぜだ? 獣人は強ければ従うのだろう? 強さに獅子も狼も人間もない」
「し、しかし」
「ボーウッドは強いぞ? 準魔王の一歩手前くらいにはなっている。あの甘い吸血鬼の国で貴族扱いされない程度の弱者が、勝てると思うのなら戦ってみろ」
ロボの言葉通り、ボーウッドは強くなった。
サムと戦ったときよりも、比べられないほどの実力を得た。
ボーウッド自身の努力もそうだが、竜や準魔王に鍛えられたという理由もある。
本人はおろか、サムたちでも知らぬことだが、ボーウッドは死にかけたが魔王ヴィヴィアンの血液によって回復している。彼女の血がボーウッドに影響を与えてもしていた。
「私がボーウッドの強さを保証しよう。今のこいつは、魔族として一段階強くなろうとしている。少なくとも、お前たちよりは強い」
ロボの言葉をゾーイが肯定する
「ゾーイ……ロボだけじゃなくてお前まで、俺のことをそんなに買ってくれていたなんて」
「……事実を述べただけだ。感動した顔をしてこっちを向くな」
ふん、と鼻を鳴らすゾーイ。
サムの目にもボーウッドのほうがここにいる獣人たちよりも強く思う。
「獅子族に従えないと駄駄を捏ねるなら、魔王のサムに従えばいい。俺だけじゃなく、レプシーを殺した男だからな」
「……し、しかし」
「お前たちは本当に、人間だとか獣人だとか些細なことを気にする奴らだ。口では強者や弱者だと言いながら、自分たちが上に立ちたいのだと見え見えで気持ちが悪い」
ロボは獣人たちに嫌悪を顕にした。
サムのことを知り、先ほども威圧感で動けなくなりながら、獣人たちは納得できていないような顔をした。
サムとしても寒いし、面倒臭いし、そろそろ暖かい家に帰りたくなった。
「サム、少しいいかな。ついでにゾーイくんと変態も来たまえ」
ことの成り行きを見守っていたギュンターが、ちょいちょいと手招きをする。
円を描くように集まると、ギュンターが切り出した。
「恋愛マイスターたる僕の意見だが、この話は決して終わらないだろう」
「……なーんで、恋愛マイスターを名乗るのかわからないし、関係ないだろう、って突っ込んでいいの?」
「ふっ。サムはせっかちさんだな。まあ、聞きたまえ」
「変態二号、まさか、お前……なにか気づいたのか?」
自称恋愛マイスターのギュンターに、ゾーイが恐る恐る訪ねると、彼は白い歯を光らせて微笑んだ。
「さすがゾーイくん、話が早い。そう、僕は気づいてしまったのさ」
「一体、なにをですか?」
訪ねる友也に、ギュンターはウインクした。
「獣人たちはロボくんに恋しちゃっているのさ。相手にされないとわかっているからこそ、従うことで満足しているのさ。だからこそ、サムやボーウッドくんが上に立つことを受け入れられない。とくにボーウッドくんには前々から嫉妬もあったのだろう。なおさら面白くないはず――さっ!」
「だから、溜めんなって。にしても、それが本当だったら俺たちはとんでもない茶番に付き合わされていることになるんですけどー」
「変態魔王が誤情報を持ってきたせいだな。斬首で許してやろう」
「いえ、ゾーイ。斬首されるとさすがの僕も死にます」
ちらり、と獣人たちを伺ってみると、先ほどまでは気づかなかった感情に気づけた。
彼らはロボに視線を向けては外しているが、恐れ多いのではなく、憧れの先輩を見ているが直視できずに逸らしてしまうウブな後輩のようだった。
「おいおい、勘弁してくれよ」
「サム。任せたまえ、スカイ王国一の色男と謳われる僕ことギュンター・イグナーツが彼らの本音を明らかにしてみせよう」
自信満々のギュンターに任せることにした。
ギュンターはロボに近寄り耳打ちをする。
ロボは嫌そうに聞いていたが、何か納得したように頷くと、立ち上がった。
ロボの動きに合わせて獣人たちの視線が集中する。
「よく聞け」
獣人たちに向かってロボは言い放った。
「――俺の腹にはボーウッドの子供がいる!」
ロボの言葉に、獣人たちは全員――気絶した。
〜〜あとがき〜〜
好きな子にお仕えしたい男子たちでした!
……実は、強者に従う系獣人たちは他の方々でした!
コミック1巻発売中です!
何卒よろしくお願い致します!
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