18「獣人たちの事情です」②
「はいはい、こんにちはー! ここから先はスカイ王国です。御用のない方は回れ右でよろしくお願いします!」
とりあえず帰ってくれるのなら、それが一番だと思うサムが獣人たちに手を振る。
が、逆効果だったようで、獣人たちの足が早くなった気がした。
「……なんてこった」
「サムはなぜ余計なことを言ったんでしょうか?」
「そこがサムの可愛らしいところさ」
「意味がわからないです!」
三馬鹿トリオとなりつつある魔王と変態魔王と変態が喚いていると、獣人たちはスカイ王国の中に足を進めた。
とりあえず、これで獣人と一線交えることになってもスカイ王国内なので戦っても問題にならない。
獣人を殺しても、彼らが王と崇めるロボが気にしていないので、感情面はさておき政治面でも問題ないと思いたい。もちろん、獣の国を運営しているのはロボではなく他の獣人なので、最悪衝突する場合もあるが、サム側には勝手に国に侵入してきたという大義名分がある。
獣人たちが近づき、サムたちは身構えた。
だが、彼らはサムたちが見えていないのか、そのまま無視して横を素通りすると、椅子に座ってお茶を飲むロボの前に膝を着き平伏した。
「――あれ?」
身構えていたサムが間の抜けた声を出すと、獣人たちがロボに向かって声を張り上げた。
「王よ! お久しぶりでございます。お出かけになられたままお戻りにならないので、精鋭を集めてお迎えに参りました」
「帰れ」
ロボの対応はそっけないものだった。
獣人たちに視線さえ向けずに、ただ一言だけ。
さすがに可哀想になったのか、ロボの肩を揉んでいたボーウッドが助け舟を出す。
「お、おい、ロボ。さすがにそれはあんまりじゃないのか?」
「き、貴様っ! 王を気安く! しかも、神聖なお身体に触れているだと! 何者だ!」
「……ボーウッド・アットラックだが?」
ボーウッドの名乗りに、先頭にいた獣人が、くわっと目を見開いた。
「き、貴様がボーウッド・アットラックか! 王に無様に敗北しながら、無駄に楯突くだけのくせに名を覚えていただいた、あのボーウッド・アットラックか!」
「よくわからんが、俺がボーウッド・アットラックだ。それ以上でも以下でもない」
先ほど友也がサムに説明したように、やはり獣の国の獣人たちは、ロボに名を覚えてもらっているボーウッドが気に入らないようだ。
(ちっちゃい奴らだなぁ。だから相手にされてないんじゃないかな?)
フードから除くのは傷だらけの狼系獣人だった。
彼の瞳には、ロボへの心酔とボーウッドへの嫉妬が宿っている。
正直、サムとしては好ましくない。
対してボーウッドは堂々としており、ロボが名を覚えるのもわかった。
「お、王よ! あなたはサミュエル・シャイトという新たな魔王を倒しに行ったはずです。なぜ、国に帰ってきてくださらないのでしょうか!?」
「…………面倒臭い奴らだ。言っておくが、俺は負けたぞ」
「――は?」
ロボの一言に、獣人たちはこれでもかと目を見開いた。
〜〜あとがき〜〜
ロボさんが鬱陶しいと感じてしまう獣人さんたちです。
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