18「クビになったそうです」②
突然、みんなの前で聖騎士を解雇されたマクナマラにサムたちも驚きを隠せない。
「お父様! 冗談はやめてください! 仮にも私は聖騎士の中で一番の実力者ですよ! 私がいなくなれば、国の戦力が落ちます!」
「問題ありません。私がいますので」
「いえいえいえいえ、やめてください! 恋人もいない私から仕事まで奪ったら何が残るというのですか!」
「……悲しいことを言わないでください。泣きそうです」
切実なマクナマラの叫びに、カリアンだけではなく、サムでさえ涙が出そうになった。
前世のブラック企業で勤めていた時、先輩が今期を逃したと嘆いていたことを覚えている。男性も女性も変わらない。仕事に追われ、プレイベートを疎かにしていたら、あっという間に歳を重ねていたのだ。
サムは、十四歳にして良き出会いがあり、子供も生まれてくるが、もしリーゼたちと出会っていなければどうなっていただろうか、と思うことがある。
前世のサムを思わせるマクナマラはあまり他人事に思えない。
「あの、おじいちゃん……さすがにいきなり職を奪うっていうのもどうかと」
「サミュエル君……マクナマラのためを思って言っているのですよ」
「そうなの?」
「はい。もともとマクナマラは神聖ディザイア国の聖騎士らしくない子でした。魔族を倒す義務は果たしていましたが、あくまでも敵対する魔族、強い魔族だけを倒します」
「それのどこが悪いの?」
サムとしては、マクナマラに好感を抱いた。
敵対する相手はもちろん、強い相手を倒すことは戦士として当たり前だ。むしろ、弱い相手しか倒さないような奴はクズだ。
そういう意味では、マクナマラは戦士として好ましく思う。
「以前から、マクナマラの言動を問題視する声がありました。一般的に問題なくとも、神聖ディザイア国では問題があります。とくに、今回の、いくら辱められた責任を取らせようと思ったとしても、魔王と結婚しようという思考では……今後、神聖ディザイア国では生活し辛いでしょう」
「……つまり友也のせい?」
思わずサムが口に出してしまうと、マクナマラが友子を睨んだ。
「おのれ、魔王遠藤友也め! 私を辱め、女体化してチップを巻き上げ、挙句の果てには職まで奪うのか!」
「チップはあなたが勝手に渡してきたんでしょう!」
カリアンは、クライドに向き直り、深々と頭を下げた。
「ということになりましたので、娘をよろしくお願いします」
「うむ。マクナマラ殿をお預かりする。なに、私のツテで良き縁談をまとめてみようではないか!」
「そうしてくださると助かります。マクナマラ、あなたはこの国で、メラニーとサミュエル君と一緒に暮らしなさい」
「お父様!」
「親心だと思ってください」
不満を隠せないマクナマラから視線を外し、カリアンは友子の前にたち今までにない笑顔を浮かべた。
「さて、遠藤友也殿」
「……はい」
「娘のことをお願いします。あなたが責任を取るでも、責任をとって素敵なん男性を紹介するでも、責任をとって私にぶっ殺されるでも構いませんので、くれぐれも頼みますね」
「は、はい」
「よろしい。では、サミュエル君」
「俺?」
「ええ、君です。よろしければ、少しふたりだけで話をしませんか?」
サムは、母を見た。
メラニーは、お願い、というように頷く。
カリアンは戦う気がないようだし、せっかく祖父だとわかったのだ、いずれ戦うことになっても話くらいはしてもいいだろうと思った。
「はい、お話しましょう」
「ありがとうございます」
サムとカリアンは、場所を変えて話をすることにした。
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