13「ダグラスと喧嘩です」②




 襲いくる風圧を物ともせず、サムは笑って左拳を突き出す。

 全力で力を入れているにもかかわらず、右腕が痺れている。

 砕けなかったのが奇跡ではないかと思うほど、ダグラスの拳は硬かった。

 しかし、速さならサムの方が上だ。


「俺の拳を受けて壊れなかったのはお前が初めてだ! レプシーでさえ、拳がひしゃげたぞ!」

「硬く、パワーが凄まじいな。だけど、問題ない!」


 左拳が鋭い速さで三度ダグラスの顔を捉えた。

 サムの左拳がやはり痛くなったが、些細な問題だと打撃を続ける。

 拳だけではなく、蹴りを混ぜ合わせ、ダグラスの膝裏、腿、脇腹、鳩尾、背中、首を的確に狙っていく。


「はははははははは! 速いな、目で追うのがやっとだ!」


 しかし、まるで効いていないように声を大にして笑うと、ダグラスは渾身の力を込めて腕を横薙ぎにした。

 轟っ、と拳圧を唸らせ拳が迫る。

 サムは、背筋に冷たいものを覚えて、受けるのではなく、大きく後退することでかわした。


「いい判断だ! 俺の拳は痛いぞ!」


 大振りとなったダグラスに、サムが蹴りを入れる。

 彼の骨を砕く勢いで、全力で放った一撃。

 速さも乗って、その威力は凄まじいものとなった。

 だが、


「――ふんっ!」


 ダグラスは力を込めると、サムの渾身の蹴りは無防備なはずの脇腹で難なく一撃を受け止めてしまった。

 これにはサムも驚きを禁じ得ない。

 しかし、これだけでは終わるはずがない。

 左足に力を込め、同じ体制で右足をもう一度繰り出した。


「――おおっ!?」


 二度、同じところに蹴りを入れられたダグラスは、さすがに身体を揺らしたが、それだけだ。

 ダメージなどほとんど受けていないだろう。


「硬っ! こっちが折れるんですけど!」

「はっはっは! 実際、折れていないんだ、まだまだいけるだろう?」

「あったり前だ!」


 単純な硬さなら、次期竜王候補の玉兎以上だ。

 これは中々面白いことになってきた、とサムは唇を釣り上げ、魔力が渦巻くほど高めた。


「――いくよ、魔王ダグラス・エイド。その頑丈な肉体を破壊してやる」

「来い! 魔王サミュエル・シャイト! お前の力を俺に魅せてみろ!」


 サムが駆けた、あと先を考えずにダグラスに向かい真っ直ぐに向かう。

 右腕に力を注ぎ込み、残りの魔力は一撃を支えるために肉体に循環させる。

 サムよりも早くダグラスの巨体から拳が繰り出された。


「うらぁああああああああああああああああああああ!」


 だが、サムは怯むことも、避けることもせず、その拳に向かって全力で一打を放った。


 ――ぐしゃ。


 耳障りな、音が耳に届くと同時に、拳に激痛が走った。

 サムの拳が砕け、ひしゃげたのだ。


「ひひひっ、痛くねーし!」


 引きつった笑みを浮かべ、サムはそのまま砕けた拳で力任せに振り抜く。

 血を撒き散らしながら、ダグラスの拳も砕き、そのまま彼の顔面に拳をたたき込み、その巨体を吹っ飛ばした。






〜〜超お知らせです!〜〜

 8/5(金)電撃コミックレグルスにて、コミカライズ版「いずれ最強に至る転生魔法使い」の連載が開始となります!

 お話はコミックウォーカー様でご覧できますのでお楽しみに!

 コミカライズを担当してくださるのは『戯屋べんべ』先生です!

 コミカライズ、そして発売中の書籍1巻を何卒よろしくお願い致します!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る