9「魔王たちが遊びにきました」①
「突然の来訪申し訳ない。俺は、魔王ダグラス・エイドだ。大陸西側にある鬼王国の王でもあるが、サムの友人だと思って気軽に接してほしい」
巨体を窮屈そうに椅子に腰を下ろし、挨拶をしたのは魔王ダグラス・エイドだった。
急な魔王の来訪に、リーゼはもちろん、ジョナサンたちも総出で対応した。
人数が多くなってしまったので、応接室ではなく広い食堂に通したのだが、嫌な顔ひとつすることなくダグラスは応じてくれた。
スラックスとシャツというシンプルな出で立ちだが、ダグラスのたくましい褐色の肉体と長身、そしてわかりやすい特徴である額に生える二本の角から魔族だとわかる。
魔王であると同時に、一国の王でもあると明かしたダグラスではあるが、他の魔王同様に気安い性格のようでにこやかな笑みを浮かべていた。
そんな彼の隣では、眠たそうに目を擦るおかっぱ頭の少女がいる。
少し潮の香りがする少女も魔王なのだろうが、とてもだるそうだ。
はきはきしているダグラスに対し、少女はぐでーとしていた。
「あー、すまん。こいつは同じ魔王のフランベルジュだ。ちなみに偽名なので適当に呼んでくれ」
偽名なのか、とリーゼたちは動揺する。
そして、最後に執事を思わせる黒いスーツと白い手袋を身につけた線の細い青年が、丁寧の腰を折った。
さらりとした茶色い髪を真ん中で分けた、美しい容姿だった。
まるで人形のような端正な顔は、スカイ王国一の変態であると同時に美青年でもあるギュンターを上回っているが、整いすぎていて作り物のようにさえ思えてしまう。
「わたくしは、魔王ダグラス様の従者であり、執事をしていますジェーンと申します」
彼の言葉に、まさか、と一同が目を見開く。
すると、わかりやすい反応にダグラスが苦笑した。
「こいつは、俺の娘だ。一応、この国で世話になっているゾーイたちと同じ準魔王だ」
「し、失礼致しました」
慌ててジョナサンが頭を下げるも、ジェーン本人もダグラスも気にしていないと首を横に振る。
「こいつは、男装が好きなだけだ。むしろ、紛らわしくてすまん」
「……わたくしは、自分に最も適した姿形をしているだけです」
「ということらしい」
肩を竦めるダグラスに、涼しい顔のジェーン。
とてもじゃないが、親子には見えなかった。
「さて、挨拶もしたところで――遊びにきたぜ!」
「はい?」
ジョナサンだけではなく、リーゼたちも、ジュラ公爵でさえダグラスの言葉に目を点にした。
「俺とフランベルジュだけ仲間外れで、楽しそうだったからついな。まさかサムがロボと戦って勝つとは……新しい魔王が増えても、俺が一番弱いのは継続だが、まだ強くなりがいがあるってものだ」
がははははは、と豪快に笑うダグラスに、ジョナサンたちはどう声をかければいいのかわからない。
こんな時に限って、魔王、竜王、準魔王とお出かけ中なのだ。
「サムの嫁さんたちにも会っておきたかったんだが……話に聞いていたよりも多いようだが、サムはいい男だからな。んで、そのサムはどこにいるんだ?」
「あの、サムなら王宮にいます」
代表してリーゼが伝えると、ダグラスは、そうか、と頷く。
そして、
「ならこの屋敷でサムの帰宅を待たしてもらってもいいだろうか?」
「もちろんです。ねえ、お父様」
「ははははは、歓迎します!」
ジョナサンも胃を押さえながら歓迎の意思を伝えた。
「悪いな。おっと、忘れるところだった。おい、ジェーン」
「はい。ウォーカー伯爵様、失礼致します」
「え?」
「これから武器を含めたいくつかの物をテーブルに置かせていただきますが、こちらに敵意があるわけではないのでご容赦ください」
「構いません、どうぞ」
ダグラスに名を呼ばれたジェーンが、ジョナサンに断りを入れると、ジャケットの中から剣や、宝石類を次々に出していく。
想定外のことに唖然とする一同にダグラスは男前に笑った。
「土産だ!」
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8/5(金)電撃コミックレグルスにて、コミカライズ版「いずれ最強に至る転生魔法使い」の連載が開始となります!
お話はコミックウォーカー様でごらんになれるのでお楽しみに!
コミカライズを担当してくださるのは『戯屋べんべ』先生です!
コミカライズ、そして発売中の書籍1巻を何卒よろしくお願い致します!
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