閑話「第二王子の恋心です」③





「すまなかった、サム。まさか君が伏せっていたとは知らず、事前に連絡をするべきだった」

「申し訳ありませんでした」


 応接室に通されたセドリックとエミルは、トマトリゾットを食べるサムに謝罪した。


「いえ、謝罪なんて。というか、俺こそ、すみません。おふたりの前で食事をしちゃって」

「構わないさ。食事前に突然訪れたのはこちらのほうだ」


 気にしていないというセドリックだが、だからと言って目の前で食事できるサムもなかなか神経が図太い。

 しかし、とにかく空腹だったのでお言葉に甘えさせてもらった。

 普段、食事量が決して多いわけではないサムだが、三日ぶりということを差し引きしても、不思議なくらいお腹が空いていたのだ。


「こちらこそ、すまなかった。我々が来なければ、姉上たちと夫婦の時間だったのだろうが」

「セドリック様たちも大事な家族ですから」

「感謝する」

「ありがとうございます」


 セドリックの言葉通り、ダフネと一緒にみんなのもとに顔を出したサムは、まず驚かれ、回復を喜ばれた。

 本当なら、家族たちとゆっくり時間を過ごすはずだったのだが、他ならぬセドリックが相談事があるとやってきたのだ。無下にできない。

 サムは、リーゼたちに心配かけたことを謝罪すると、セドリックの要望にあったように三人で話をすることになったのだ。


「それで、あの、ご相談とは?」

「うむ。その前に、ちゃんと紹介しておこう。弟のエミルだ」

「サミュエル・シャイト殿、こうしてしっかりお言葉を交わすのは初めてになります。僕は、エミル・アイル・スカイです。第二王子ですが、母はコーデリアで、レイチェル姉上の弟です」

「ご丁寧に、ありがとうございます。サミュエル・シャイトです。よろしくお願いします」


 自分よりも幼いのにちゃんと挨拶をしてくれたエミルに、サムも笑顔で対応する。

 コーデリア第二王妃の息子ということで、確かにセドリックやステラよりも、レイチェルの面影がある。

 性格的には大人しめの雰囲気だが。


「あの、それで、ですね、サミュエル殿におり言ってご相談があるのです!」

「あ、はい」

「スカイ王国のすべての変態とお友達であるサミュエル殿なら」

「待って、お願い、待って、ちょっとおかしい! いや、すごくおかしい!」


 知らない間に、スカイ王国の前変態と友達になっていたことに戦慄と驚愕を隠しきれない。


「エミル、違うと言っただろう。サムは、スカイ王国全変態と友達ではなく、前変態を網羅しているだけだ」

「あ、そうでしたね、すみません」

「謝罪の場所が違う! 変態関係者にしないで! そこを謝って!」


 噂の一人歩きは怖い。

 一年後に、この国で自分は一体どのような存在になっているのだろうか。


「それよりも!」

「俺的にはそれよりも、じゃすまないんですが、もういいです。はい、では、続きをどうぞ」

「僕の想い人に心当たりはあたりはないでしょうか!?」

「想い人?」


 ――また、恋愛相談か。


 セドリックといい、レイチェルといい、王族は自由恋愛らしい。

 内心、よくあのコーデリアが息子の婚約者を決めていないものだと、驚きもした。


「はい! おそらく、サミュエル殿ならご存知のはずです――全裸の君を!」

「ぶっはっ、げほ、ごほっ」


 とんでもない特徴を持つエミルの想い人に、サムはリゾットを気管につまらせて咽せた。





 〜〜あとがき〜〜

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