18「笑いに包まれました」
「ぎゃはははははははははははははははははははははははははっ!」
「ぶひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃっ!」
ズボンを引きずり下ろされ、尻どころか股間まで丸出しにしてしまったユングを指差してエヴァンジェリンとカルが大爆笑した。
「うわぁ、え、嘘、うわぁ」
「……なんてこった」
「………………お酒が美味い」
青樹は思い切り見てしまったようで目を丸くし、サムは天を仰ぎ、炎樹は見なかったことにしてワインに集中した。
ブラウスも破れているので、見たくないユングの身体の前面が友也には丸見えなのだろう。
ユングの股の間から、真っ青な顔をした友也の顔が見える。
ラッキースケベの恐ろしさは、以前、ギュンターが身を持って教えてくれたが、今回は今回でどぎついものがある。
男だからいいわけではないが、相手が女性でなくてよかったと思う。
あと、早く正気に戻ってズボンを戻せ、とも。
「ふっ。日頃の行いがものを言うね。彼が向こうを向いていてくれて助かった」
「いやいや、ギュンターさん! 汚ねえケツが丸見えじゃないっすか! 粗末なもんを見せつけられるよりマシっすけど、これはこれでキツイっすよ!」
「違いない。まったく、手入れの怠った尻を見せられて、不愉快極まりないね! 尻を磨いて出直してくるといい!」
「ばっ、おまっ、尻を磨くとかっ、ぶははははははははははは!」
「ぶっ、ぶはははははははははははははははははっ!」
ギュンターの言葉がツボに入ったのか、エヴァンジェリンとカルが綺麗な顔から涙と鼻水を垂らしてさらに大笑いをした。
声にこそ出していないが青樹も口を抑えてプルプルと震えている。
カルなど、手に皿を持っていなければ、腹を抱えて床に転がっていただろう。
そんな笑い声が響くと、誰かが「ぷっ」と吹き出した。
笑いは伝播していき、小さな笑いが波のように広がると、最後には大きな笑いとなった。
一部の令嬢と、男性が熱い視線をユングに向けているが、それ以外がみんな大爆笑になってしまった。
「……あちゃぁ……もうこれは、なんというか、恨みを買っちゃったなぁ。絶対許してくれないよねぇ」
笑い声の的となったユングが、ようやく自分がどのような惨状なのか理解して、
「ぎゃぁあああああああああああああああああああああああああああああああっ!」
喉が張り裂けんばかりに叫んだ。
きっと本人はブラウスが破れたくらいにしか思ってもいなかったのだろう。しかし、現実は非情だ。
ユングが叫び、ズボンと下着を慌てて上げる姿にさらなる笑いが誘い、パーティー会場はこれでもかというほど笑いに包まれた。
気まずい顔をしているのは、ユングのズボンを引きずりおろし、股間を真正面で見てしまった友也だ。
彼の背後には、またやってしまった、と諦めた顔をするケイリィとウェンディがいた。
友也が「助けてください」と口パクしているが、どうやってこの場を収めろと言うのだ。
サムは悩み、悩んだ挙句、「ごめん、無理」と口パクしてか手を合わせた。
そんな時だった。
「――これは、なんの騒ぎ?」
決して大きな声ではないが、よく通る女性の声が会場に響いた。
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