「ウルリーケ外伝11 見合い」③
「愚息が大変申し訳なかった!」
はぁはぁしていたデーロ伯爵だったが、しばらくしてから息子の言動をウルたちに謝罪した。
しかも土下座だ。
となりには夫人も同様にしている。
ちなみに、息子は部屋の隅に放置されていた。
「顔を上げください。こちらこそ娘がすみませんでした。手が早いことは知っていましたが、まさかここまで過激な子とは……知っていましたけど、知らなかったということにしておいてください」
「いやいや! ウルリーケ殿がやらなければ私の拳が火を吹いていただろう! ちゃんと育ててきたつもりだったが、まさか女性に、しかも聖女殿のご息女にあのような暴言を吐くとは……この責任はちゃんと取らせよう。勘当することも視野に入れている」
「……なにもそこまで」
「いいや! 聖女殿のご家族にあのようなことを言ったのだ。本音を言えば、縊り殺してやりたいのだが!」
(過激なおっさんだな。というか、お父様に嫌われたくないのが丸わかり。あと、息子の扱いが悪すぎ!)
ジェフリーをボコボコにしたのは他ならぬウルだが、彼の親の対応に少しだけ同情した。
だが、暴言を吐かれてニコニコできるようなおしとやかな人間ではない。
前世でも似たようなことがあれば、問答無用でぶっ飛ばしてきた。
変態的なギュンターでさえ、相手を傷つけるようなことは言わないというのに、と呆れてしまう。
「今回の件はなかったことにしましょう」
「いいのだろうか?」
「いいよね、ウル?」
「はい。私はもうやることはやりましたから」
ウルは、未だ気絶しているジェフリーに視線を向けて、ふんっ、と鼻を鳴らした。
そんなウルに、デーロ伯爵が謝罪する。
「ウルリーケ殿、改めてすまなかった。聖女殿とつながりがほしいなど俗なことを考えたせいで、迷惑をかけたね。お詫びと言ってはなんだが、我が家の長男はいかがだろうか? 優秀で、今は領地を任せているのだよ。妻と子がいるが、なに、金を渡せば離婚できる。いかがかな?」
「いかがかな、じゃねえだろ! なんも懲りてないな、このおっさん!」
「はぁはぁ、聖女殿のご息女におっさん扱い……たまらん」
「もうやだこの国! スカイ王国といい勝負すぎる!」
ウルは嘆きたくなった。
父親は聖女だし、聖女の父に変態どもが群がっているし、この国というか世界が相当やばいことを確信する。
(いっそレプシーと一緒に世界に革命を起こした方がいいのかもしれない。あー、でも、世界全てが変態と決まったわけじゃないか。あくまでもこの国……というか残念ながらお父様の周辺が変態が多いだけだからなぁ)
はぁぁぁぁ、とウルは大きなため息を吐き出した。
(ギュンター。お前は昔からうざくてキモくてなんか嫌だったけど、上には上がいるよ)
きっとこの場にサムがいて、ウルの心の声を聞いていたら、
「いやいや、ギュンターのほうがやべーって! 魔王よりもやべーって!」
と言っていただろう。
ただ残念ながら、ツッコミをしてくれるであろうサムはこの世界にいない。
ウルは変態たちの相手は疲れると肩を落とした。
こうして聖女に憧れるおっさんのお見合い計画は、息子がしでかしたことで失敗に終わったのだった。
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