12「オルドと戦います」②
「十数年しか生きていない小僧が! 俺を舐めるな! 貴様を殺し、この場にいる人間を全て殺し終えたら、魔王様を復活させる! そして、俺は不死の一族となり、永遠の命と、人間を超えた魔法を手に入れるのだ! その暁には、貴様の婚約者たちの生き血を啜り、肉を食らってやろう!」
「――で?」
「……なに?」
「いや、さ。もうナジャリアの民の口上は聞き飽きたんだよ。口を開けば人を食うとか、くだらない。そんなことをしないと強くなれないんなら、そもそもお前に魔法の才能もなにもないんだよ! 人間以外の種族になったって、その中で燻って終わりだ!」
「このガキっ!」
完全にオルドから余裕が消えた。
サムを呪い殺さんとばかりに睨みつける。
しかし、サムはオルドからの殺意を受けても涼しい顔をしている。
「ギュンター、全力でここに結界を張ってくれ。本気を出す」
「わかったよ、ハニー」
「――ぶはっ、ハニーって、おまっ」
こんな時でも平常運転のギュンターの発言に、ウルが吹き出した。
サムは、なんだかんだ似ているふたりを、ジト目で睨む。
「あのさ、今くらいまじめにやろうぜ」
「すまんすまん」
「失礼な、僕はいつでも真面目だよ」
「だからギュンターは質が悪いんだけどね! ――ったく、悪かったな。せっかく真面目に戦おうとしているのに、俺の師匠とこの国自慢の変態はどうにも緊張感がないらしい」
「……まさかとは思うが、お前ひとりが俺を相手にするとでもいうのか?」
どうやらオルドは、この場にいる全員とひとりで戦うつもりだったようだ。
「計画が全て潰れて自棄になって突貫してきた奴を袋叩きにする趣味はないよ。それに、あんたは勘違いしている」
「勘違いだと?」
「――俺ひとりで十分だ」
サムは不敵に笑った。
オルドの顔が、今までにないほどひきつり、歪む。
「舐めやがって、クソガキが! せめてウルリーケなら俺に勝ち目があったと言うのに、馬鹿なガキだ! お前では俺に勝てん!」
「俺も俺だが、あんたも大概自信満々だな! いいぜ、それでこそナジャリアの長だ!」
「俺にはわかるぞ! 貴様は俺を斬り裂けない! なぜなら、俺には相手のスキルを封じるスキルを持っているのだからな! お前が今まで必殺にしてきた斬撃は、俺に届かないんだよ!」
「あ、そ」
「嘘だと思うなら、使ってみろ! 気づいたときには、お前の敗北だ! 食い殺してやる!」
犬歯を剥き出しにして唸りを上げる、オルドは人間のそれではなかった。
(こいつ、普通の人間じゃないな。ウルになにかをしたように、おそらく自分にも何かしている)
油断はしない。
相手を舐めることもしない。
甘さは捨てている。
サムのすべきことは、目の前の男を斬り裂くことだけだ。
「いくよ、ナジャリアの民の長オルド。最後の戦いだ」
「サミュエル・シャイト! 貴様を殺し、私は父なる魔王を復活させるのだ!」
サムが魔力を爆発的に燃やした。
自らの魔力とウルから継承した魔力が、うまく体に馴染み綺麗に体内を循環しているのがわかった。
膨大な魔力が、すべて力に変換されていく。
サムは、一撃に全力を込めた。
合図は必要なかった。
サムとオルドは、まるで引き合わせたように同時に前に出た。
「――封じよ!」
「――スベテヲキリサクモノ」
かつてない渾身の斬撃が、サムの右腕から放たれたのだった。
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