第4話 やっぱり凛ちゃんは頼りになるなぁ…

 それから2人はどちらがこれを持つかと話し合ったが、凛華は


「守護者を倒したのは瑞希なんだから瑞希が持っていなよ」


 と、主張をする一方で、瑞希は、


「助けてくれたのは凛ちゃんだし、そのお礼にどっちか持っていてよ」


 と、高価すぎる2つの品を1人で持っているのは恐ろしくてなんとかして押し付けようと必死だった。



 しかし、結局折れたのは瑞希の方で2つの品を瑞希が預かることとなったのだ。


「いつでも必要な時は貸すからね」


 瑞希はそう告げて、必要になったときは貸してそのまま押し付けてしまおうと考えていた。





「さて、それじゃあ、ここまでは探索できているんだろうけど、この先はどうしよっか?」


 2人は脱出のためにダンジョンを探索しなくてはならないのだが、どこから進むかと話し合っていたのだ。ここまでも複数の道から選んで進んでいたのだが、選び方も適当で地図は一応瑞希が思い起こしながら書いているのでなくはないのだが、その全長は全く推測できるものではなかった。


「とりあえず、行ってない道を選ぶしかないかなぁ…」


 瑞希はそう答えるしかできなかったのだが、凛華は何かを考えるようにしており、そして、思い出したようで手をポンっとたたいた。


「そうだよ、そういえばさ」


 凛華はそう言うと瑞希の方をじっと見て、



「モンスターを倒したってことはステータス手に入れたんだよね?」


 そう確認をしてきた。瑞希はその問いかけにうん、と答えると、


「それなら鑑定の眼鏡で自分のステータスを確認してみようよ」


 そう提案をしてきた。残りの使用可能回数は2回残っているのでまぁ問題ないだろうと思った瑞希は自身のステータスを鑑定してみた。


――――――――――

名前:黛 瑞希

性別:女

年齢:15歳

状態:良好


Lv.1


Runk.1


体力  38/38

魔力  29/33

気力  17/17

物理攻撃力  11

魔法攻撃力  20

物理防御力  11

魔法防御力  14

器用さ 9

素早さ   6

幸運  78


ギフト:『思い出』 


スキル

〈武術〉Lv.1 〈逃げ足〉Lv.1 〈根性〉Lv.1 〈剣術〉Lv.3 〈予測〉Lv.2


称号


――――――――――



(これは強いのかな? それとも弱いのかな? 凛ちゃんに聞いてみないとわからないや。それにギフトの説明は何でこんな書き方なんだろう…)



 瑞希は自身のスキルについて詳細を確認しつつ、そのことを凛華に告げていくのだった。


 ちなみに鑑定で見た情報について詳しくその事項について見ることには鑑定スキルの使用可能回数は減らなかった。



〈武術〉…相手に与える拳、蹴りのダメージに補正がかかる。身体の動きに少し補正がかかる


〈逃げ足〉…逃走中の間のみ素早さに補正がかかる


〈根性〉…瀕死のダメージを負った際に1日に1度だけは確実に体力を1残す。使用後は確率で体力を1残すことができる


〈剣術〉…剣で与えるダメージに補正をかける。また、剣を持った際の体の動きに補正がかかる


〈予測〉…相手の動きを予測することができるようになる



 スキルについては以上の通りだった。彼女は落とし穴に落ちたときに生きていたのは〈根性〉のおかげだったことに気が付いた。そのことに気が付くと驚きつつも、運良く先にゴブリンを倒すことができていたことに胸をなでおろすのだった。


「というか、瑞希は5個もスキルあるんだね? それに、〈剣術〉と〈予測〉だけレベルも上がってるし、どういうこと?」


 凛華にそう聞かれて、瑞希もそれがどういうことなのかわからなかったのでギフトの『記憶』の詳細について調べた。



『思い出』…貴女の大切な思い出はなぁに? 私に見せてちょうだい


〈大切な思い出〉…対象の記憶を読み取り、スキルやギフトを承継することができる。また、自身の記憶を対象に読み込ませることで、スキルやギフトを譲渡することもできる(※1日に3回まで)

〈思い出の品物〉…自身の記憶にある物を作り出すことができる。ただし、非生物に限る

〈思い出補正〉…強い気持ちに応じて対象のステータスを一定時間上昇させる

〈思い出の箱庭〉…貴女の大切な思い出はここに閉じ込めてしまいましょう? (※現在使用不可)



(現在使用不可ってどういうこと? それにこのスキルだけなんか他と違う気がする…)


 瑞希は自身のギフトに違和感を覚えつつも、ギフトがもたらしている恩恵スキルについて凛華に説明をした。この説明を凛華にしたとき、彼女はスキルを伝えたとき以上に驚いていた。


スキルはそもそも初めてのレベルアップか経験を積むか、宝箱から手に入るスクロールからしか獲得できなかったのである。それが彼女の手にかかればスキルを好きに手に入れたり、与えたりできるのだ。



スキルはプラスのものが多いが、中にはマイナススキルも存在していた。さらには効果が強力だが、その反面でメリットも大きいスキルというのも存在している。そう言ったスキルを悪い人に利用されて気に入らない人などに渡す羽目になっては大変なことになるからだ。


瑞希は高価な魔道具もそうだが、それらは最悪売り払ってしまえばいいが、スキルの譲渡や承継ができることは絶対に私以外に話してはダメだと強く言い聞かせた。ばれてしまえばどこからその身を狙われるかわからないからだ。


瑞希は先程よりも真剣な眼差しで凛華に見つめられ、少し怖くも感じたが、それは自分を心配してのことだと理解していたので、しっかりと「うん」と返事をした。



「とりあえず、探索に役立つスキルはなさそうだね」


 凛華はこの話は終わりだというように探索についての話に戻した。瑞希も凛華の発言には同意できたので、運と頷くと2人で適当にダンジョンの中を歩き回った。



 道中は周囲の警戒をしながらではあるが、高校での授業のことや最近のテレビや雑誌、ゲームのことなど気を紛らわせることを話していた。



「止まって…」



 凛華は隣に歩く瑞希に制止の声をかけた。瑞希は静かに立ち止まると凛華の視線の先を確認した。そこには先程と同じようにゴブリンが存在していた。幸いなのは、ゴブリンは緑色で瑞希の知る普通のゴブリンなのでそこまで苦戦はしないだろうとわかったことだ。



「瑞希はここで待ってて。私が1人で倒してステータス獲得してくるから」


 凛華は瑞希がうなずくのを確認すると刀を抜いて余計な荷物を凛華に預けるとゆっくりとゴブリンに向かって歩き出した。





(さてさて、瑞希にはああ言ったけど、緊張するなぁ)



 凛華は刀を抜いてゴブリンに向かって歩きながらそう思っていた。ゴブリンは凛華が近づいてきていることに気が付くと、ケケッ、ケケッとニタニタと笑みを浮かべて棍棒を振り回して、凛華に向かってきた。



(あぁ、なるようになるかなぁ…)



 凛華はゴブリンが向かってきているにもかかわらず落ち着いて足を止め、冷静に刀を構えた。


そして、



「はああああぁぁぁっ!」



 向かってきたゴブリンに向かって一閃。ゴブリンは何が起こったのかわからないだろう。気が付くと自身の背後に獲物と見定めた相手がいて、刀を収めているのだから。



 ゴブリンは隙を晒したと思い、思いっきり殴りかかろうとすると自分の首が地面に落ちていくのを認識した。



「ごめんね。もう斬っているんだよ」



 凛華はそう言うと、凛華の方に向かってゆっくりと歩いて戻った。


 ゴブリンは凛華が何を言っているのかわからないまま意識が遠のき、光を発しながら消滅した。



「お、おかえり、凛ちゃん。大丈夫だった?」


「もっちろーん! あんなゴブリン相手にやられる私じゃないよ!」



 凛華は明るくそう答えた。凛華はゴブリンが走りながら向かってくるのであればその通り道に刀を用意してあげればいい、そう考え、ゴブリンの首に当たる位置に刀を振り抜き、一瞬で斬り去ったのだ。



 もちろんそれを為すには、相応の筋力と瞬発力、刀を扱う技術が必要なのだが、彼女は中学時代に新人戦を含めて10回以上も優勝しているほどの猛者だ。加えて彼女より実力者である祖父や父に稽古をつけてもらっているので、剣や刀であればもはや自分の体の一部か、それ以上にうまく扱えるのだ。



 ちなみに彼女の母として、そんな血なまぐさい技術よりも女の子らしいようなことができるようになってほしいところであるが、料理や裁縫をやらせると彼女の手が傷だらけであったり、完成品が見るも無残な姿になったりするので嘆いている。そのため、そう言ったことは彼女の妹にできるように教え込んでいるのだ。




また、凛華は瑞希と話しながら自分もモンスターを殺した自分に何か精神的に来るものがあるのではないかと思っていたのだが、特にそういうものはなかった。このことから凛華は、ダンジョンでモンスターを討伐しても何か強い精神的なショックを受けたりとかはし難くなっているのではないかと思えた。



「まぁ、そんなことよりも…」


 凛華はそう言うと、自分にもアナウンスが聞こえてきてステータスが獲得できたことを瑞希に伝えた。


「だから私のステータスを教えて欲しいんだけど、できるかな?」


「う、うん。ちょっと待ってね」



 瑞希はそう言うと鑑定の眼鏡をかけ直して凛華のステータスを確認した。




――――――――――

名前:武藤 凛華

年齢:15歳

性別:女

状態:良好


Lv.1


Runk.1


体力  44/44

魔力  12/12

気力  26/26

物理攻撃力 22

魔法攻撃力 8

物理防御力 14

魔法防御力 10

器用さ 6

素早さ 11

幸運 92


ギフト『侍』


スキル

〈刀〉Lv.1 〈歩法〉Lv.1 〈集中〉Lv.1


称号



――――――――――



ギフト『侍』…刀を扱うときその者に斬れないものはない


〈貫通〉…相手の防御力を無視してダメージを与えることができる


〈不屈〉…気持ちが折れない限り体力が尽きても動くことが可能になる


〈忠義〉…自らの忠誠を守るときにステータスが上昇する。守られなかったとき、ステータスが下落する


〈守護〉…護りたいと願った者を護るとき、ステータスを上昇させる


スキル

〈刀〉…刀で与えるダメージに補正をかける。また、刀を持った際の体の動きに補正がかかる


〈歩法〉…歩くときに補正をかける


〈集中〉…クリティカル発生率を上昇させる。精神異常耐性を上昇させる



 瑞希は鑑定をして読み取れた結果を紙に記しながら凛華に詳細も含めて教えた。



 凛華は自身がまさかギフトまで得られるとは思っていなかったようで、その点については驚いていたがスキルについてはそこまで驚いた様子はなかった。


 もともと凛華はこの世界が変容していった中でスキルやギフトには強く興味を抱いており、どんなギフトがあってどんなスキルがあるかは公表されているものについてはかなり調べてあるのだ。



 瑞希には興味を持っていて面白そうだからと説明をしているが、実際のところはスキル持ちに寄って瑞希が害されそうなときに凛華が守るためにどんなものがあるのか把握しておきたかったというのが彼女の本音だった。



 瑞希はそんな凛華の心情は知らないが凛華の手に入れたスキルについて疑問があった。


「ねぇ、凛ちゃん」


「どうしたの?」


「私のは〈剣術〉スキルだけど、凛ちゃんのは〈刀〉スキルなの?」


「うん、そうみたいだね。ギフトが影響しているのか、それとも私の素質が〈剣術〉Lv.10を超えているからなのかな」



 凛華はスキルの進化について瑞希に説明をした。



 スキルは使い続けていくとそのレベルが上がっていく。レベルが上がるとその派生かその上位スキルに進化させることができるのだ。例を挙げると、〈剣術〉スキルは剣全般を指すスキルだがその効果は大きくない。しかし、〈刀〉、〈片手剣〉、〈両手剣〉、〈双剣〉といったように派生形や進化したスキルを得ると、その範囲が狭くなる代わりに効果が上昇するのだ。


 瑞希は凛華がスキルについてそこまで詳しいことに感謝をした。自分だけならその違いを知ることもなかったので、スキルをしっかりと進化させて使って行くことができたのだろうかと思ってしまったからだ。



(凛ちゃんはやっぱり頼りになるなぁ…)



 瑞希はそんなことを思いながらも、口に出すことはせず、凛華の説明を聞いて今後の動きをどうしていくか話し合った。



 そして、話し合いを終えて探索を進めていくと階段のある広間へと辿り着いた。



「これを降りると下の階層に通じているね」


「出口じゃないの…?」


「うん…。出口が他にあるならよかったけど、このままだとこのダンジョンを攻略しないと脱出できないかもね」


「そ、そんなぁ~…」


「大丈夫だって、私がついてるからさ!」



 不安そうにする瑞希を凛華は励ましながら次の階層へと進出して行くのだっ

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