エピローグ
お嬢様が処刑される筈であったあの日から2か月たった。
突然だが俺とお嬢様は今、隣国にいる。
あの後仕立て屋の女主人が何処かと連絡を取ったらしく、隣国からの宣戦布告やら国王夫妻の帰国やら何やらかんやらあって、デスパイネの一族はこの国を見限って自分たちのルーツの1つである隣国に貴族として迎え入れられたわけである。源流が彼方の国の王族の血を引いていることや、デスパイネの当主やその後継ぎ、つまりお嬢様の兄やらが優秀であったこともあり、是非取り入れてしまいたいという思惑もあったのだろうと俺は推察している。
が、だ。何故俺は今。その隣国に構えられたデスパイネの屋敷にて、お嬢様に馬乗りされているのだろうか。
俺の腹の上でふくれっ面で睨むお嬢様の髪は少しだけ伸びているものの、まだまだ元の長さには戻るのに時間がかかりそうだ。それでも、悲惨な北の塔の生活とは段違いの待遇により、生来の美しさを取り戻している。でもお嬢様。俺の腹を両腿で挟んでいるその姿。スカートがたくし上げられていて大変みっともないですよ。はしたないですよお嬢様。
「どういうことですの?」
「え。ですから。釣書が来てるんでしょう。見合いの。この国の貴族の。」
「そうですわ。でもなぜ!!それを!!貴方が勧めるんですの!!」
お嬢様はぷんぷんしている。何故ってそりゃあ誰でも考えれば理解できるだろう。この国で彼女が幸せに生きるとするならば、この国の貴族に嫁げば良い。少し遠いが王族の血をひく娘であるし何より美人だ。俺が自分の全てを放り出しても助けたいと、生きていて欲しいと願った女だ。現在の俺は無職。というかまず身分が平民であり、お嬢様を助けた。ということしかないためデスパイネの家の客人扱いではあるのだがそろそろ市井に放逐されそうな気がしている。
つまりはとてもお嬢様のご身分に。釣り合わない。どれだけ好いているとしてもだ。ということを懇々と説明した。
お嬢様はふんふんと話を聞いていたが。
「わかりましたわ。」
「わかってくれたか。じゃあ。」
「既成事実を作りますわよ!!」
「何でだよ!!!!」
お嬢様の言い分としては。結局身分が邪魔をするのなら自分が平民になるか俺に手籠めにされて子供を作ってしまえばいい!未婚の妊婦は貴族社会でもどうやら恥ずべき事らしく、自分は放逐されるはずだ計画通り!とのたまっている。どういうことだ。お嬢様の頭はねじが数本抜けてしまったのではなかろうか。俺は訝しんだ。
が、それよりもまず俺の貞操の危機だ。俺は言葉を尽くしてそういったのは好き合う男女が婚姻してすることでということをお嬢様に説いた。お嬢様曰く、両想いなのだから大丈夫ださぁ結婚しようとにっこり笑った。だから身分がですねお嬢様と説明すればまた既成事実を迫ってくる。何でだよ。
「アルフレドは私が嫌いですの?」
「好きですよ!……あっ。」
「なら問題ないでしょう?ねっ?ねっ?」
「問題ありまくりなのですが!!!」
というよりそもそも俺は職を探さねばならないし等、ぐだぐだと言い争っているこの光景。デスパイネ家の面々に微笑ましく見られているとは知らない。
俺と彼女の攻防戦は、どうやら30日を越えても続くようである。
「私、絶対諦めませんのよ?」
彼女が俺の一番好きな輝く笑顔で堂々、告げる。
「知ってるよ。」
結局最後は絆されることになるのだろうか。いやいや、今度は彼女の幸せの為には心を鬼にして……などと考えながら、俺は
――――元兵士の俺は今日も、溜息をつく。
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