第49話 魔獣対策
「それでは、ニーナ公爵令嬢の方から、ヴォルフスブルク帝国で発生した魔獣の被害状況を説明してもらう」
フランツ様は、会議を招集した。
軍事担当者・財務担当者・外務担当者・農政担当者の4人と私とフランツ様が参加メンバーね。このメンバーが、辺境伯領の首脳ということになるわ。
辺境伯軍は独自の軍隊なので、フランツ様がトップに立ち命令系統を持っているわ。もし、ヴォルフスブルクから辺境伯領に魔獣が越境してきても、辺境伯軍が足止めして、帝国軍本隊の到着を待つことになるわね。
ここが、国境沿いの最前線だから、すぐに軍隊を招集できるのはよかったわ。帝国軍本隊の到着を待っていたら、かなりの被害が出てしまう可能性があるもの。
「はい、ヴォルフスブルク帝国軍の発表によれば、被害が確認されたのは、3日前です。国境から10キロほど先にある村で被害が出たようです。目撃者の証言によれば、確認できた魔獣の数は3体。どこが、魔力の滞留場所になっているかは不明で、ヴォルフスブルク帝国が
私が新聞で読んだ情報をまとめて、皆に説明する。
「すでに、3日前に3体か……となると、今日には10体前後に増えていると見たほうがいいでしょうね」
軍事担当者はすぐに分析をした。彼は、この道40年の大ベテラン。若い時に、「ソフィアの大虐殺」の鎮圧にも参加したらしいわ。こういう時に、魔獣退治の経験者がいるのは、安心できる。
「うん。まだ、国境から少し離れた場所だからね。対策の時間は、少し取れるのは幸運だね」
フランツ様がそう言うと、担当者たちは一斉に
「それで、ニーナ? ヴォルフスブルクの対策は?」
「はい、フランツ様。帝国軍を周辺に配置して、目撃個所を中心に封鎖しつつ、周辺の住民の避難をしているようです」
「なるほど、基本だね。外務担当の方には、なにか帝国から連絡は来ていないのかい?」
「今は何も……魔獣発生の連絡がさきほど届いたくらいです」
「ずいぶんと遅いね。きっと、隠ぺいしようとしたけど、抑えきられなかったということかな?」
「おそらく、そうですね」
「避難民について、協力を求められたら、すぐに了解したと伝えてくれ」
「わかりました」
そこで、人道的な判断を優先できるのは、すごいわ。ヴォルフスブルクは仮想敵国なのに……
「辺境伯軍に、即座に動員をかけてくれ! 国境付近に集結して、もしもの時に備えよう。拠点は、"シェーネンブール
魔獣を前に、人間と人間が争わないように、事前に通達しておくのね。国境紛争なんておきたら、魔獣対策が崩壊してしまうもの……
「帝国軍本隊も来てもらうように要請してくれ。ヴォルフスブルク帝国と協力してでも、速やかに魔獣を退治する!」
早い。帝都で同じ議題が出たら、たぶん1か月以上紛糾して何も決まらないのに……この辺境伯領が最前線で危機に強いのはあると思うけど……
やっぱり、フランツ様の能力によるところも大きいと思ったわ。
周囲の官僚たちも、有能な人ばかり。
軍事部門ではまだ若い自分に足りない経験を補うために、大ベテランを配置。
他の担当者も、自分の担当分野のことばかりじゃなくて、いろんな部署を経験している視野の大きい人が就任している。官僚の大物は、本当に官僚的な人が多くて、
本人の能力も高いのに、補佐をするメンバーも有能ぞろい。
トップは部下の能力に
むしろ、自分を押さえてくれる人や、カバーしてくれる人を周りに置くようにしているのね。
人間としての器の違いか……
イエスマンばかり可愛がっていた私の元・婚約者様と比べてしまって、ため息が出てしまう。
大丈夫よ。彼が中心になれば、こんな問題はすぐに解決できるわ。
不安がよぎる心を私は必死に静める。
「今日から忙しくなるが、協力して難局を乗り切ろう」
フランツ様がそう宣言すると、皆は力強くうなずいた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます