第41話 夕食デート
今日の仕事も終わり、私たちは一緒に食事に向かう。
今日は庁舎近くの料理屋さん。ヴォルフスブルク料理のお店らしいわね。
グレア料理は、美食の国。いろんな食材を使って複雑な味の料理を出すのが特徴なのよね。他国では食べることがないエスカルゴや新鮮な野菜を使った料理も多い。
でもね、ヴォルフスブルクはグレアよりも寒冷で、保存食の技術が発展してきたのよね。たとえば、ソーセージやキャベツの漬け物、ピクルスなどなど。比較的に保存しやすいものを使った料理が多いのよね。気候や作り方が違うので、グレアワインよりもヴォルフスブルクワインの方が果実感が多く残り、甘みが強いの。
庶民が好きなお酒も二つの国ではかなり違うのよ。グレアは、ワインを好む人が多いけど、ヴォルフスブルクはワインとエールが同じくらい人気があるのよ。
だから、フランツ様はエールを飲むことにしたみたい。グレアでは、エールは庶民の飲み物とされているけど、フランツ様は本当に
エールは苦いので、私はワインを頼むわ。
コース料理ではなくて、小皿でたくさんの料理が運ばれてきたわ。
キャベツ、白いソーセージ、辛いソーセージ、スモークサーモンと野菜のマリネ、コンソメスープ……
あとなにかしら?
このお肉の塊は?
「ああ、ニーナはアイスバインははじめてかな?」
「アイスバイン?」
「豚の塩漬け肉を香味野菜やハーブで煮込む料理だよ」
「やっぱり保存食文化の国なんですね、ヴォルフスブルクは……」
「そうだね、やっぱり食文化をひとつとっても国民性みたいなものがあるように感じるよ。向こうは、本当に合理主義で、用意
飲み物が届いた。
「それじゃあ、乾杯しようか?」
「はい、お仕事の成功を祝して、ですね?」
「うん、でもそれだけじゃないよ……」
「えっ?」
だって、さっきは今回の仕事のお礼って言ってたのに……
「一応、恋人同士になったからね。ちゃんとしたデートをしたくて、ね」
「うっ……」
ちゃんとした言葉にされると、恥ずかしすぎる。
「それに、あの湖からなんだか、避けられている気がしたし」
「だって……」
「だって?」
「ずっと幼馴染の優しいお兄さんが、いきなり恋人になっちゃって、気持ちの整理が追い付かなくて……」
「ふふ、おもしろいなニーナは」
吹き出すフランツ様。その様子を見ていると、ずっと悩んでいた自分がバカみたいじゃない。
「笑わなくてもいいじゃないですか?」
「ごめん。でも、ニーナはそういうところも真面目なんだなと思ってね」
「
「そういうところも好きなんだけどね、僕は」
うう、いつも不意打ちにほめるのは、ずるいですよ。そんなことされたら、余計に距離感わからなくなっちゃいますよ?
「でも、いいじゃないか。最初から恋人の距離感じゃなくても……ゆっくり、お互いの価値観をすり合わせていって、少しずつ理想に近づいていけば、それでいいじゃないか?」
そういうところなのよね。この人の素敵なところは……
「はい」
私が
「じゃあ、乾杯。交渉の成功と僕たちのこれからに」
「乾杯」
私たちのグラスがゆっくりとぶつかり合った。
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