第44話 2020年……。新年の朝……。(2)

 と、同時におさん狐さまの美しい御顔が緩み──。


 そして安堵の表情へと移り変わる。


「そ、そうか~? そうか~? それは、よかった~」


 と、言葉が漏れてくるのだよ。


 だから我らは、魅入っていた彼女から、汁茶碗を自身の口許から下ろす山田瞬へと視線を変えて。彼が何を飲み干したのか、確認をすることにした。


 でッ、彼のおろした汁椀の中身を見れば──。


『……ん? 白い物?』と、思う物が瞳に映る。


 だから今度は『何?』と、思うのだが。今日は2020年の初めて朝を迎えたばかりの、ハッピーニューイヤーなのだから。


 我らもそんなに長くは思案を続けないのだよ。


 だって山田瞬が、汁を啜っていた物は、どう見ても?


 日本の正月を祝う為に必ずといって良いほど家庭で用意をする『雑煮』……。

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