第5話 決意2
「これ、ウツギの主人のものだよ。この中に、清めのまじない札が包まれていたの。これだったらあの子の呪いを解くこともできる。あの子に使えってことだと思うんだ」
大切そうに風呂敷に包まれていた札は、今このときのためにあるのだと、トウカにはそう思えてならなかった。
「私は知りたいの。どうしてあの子を思い出すと苦しくなるのか。あの子が私にとって、なんなのか。だから、お願いウツギ。私があの子を助けるから、殺さないで」
真っ直ぐにウツギを見据える。ウツギは唇を噛んだ。なにかに耐えるような目でトウカを見る。瞳が揺れている。
そうして、どうしようもない感情があふれ出たように、ウツギは声をもらした。
「なんで――、なんで、お前はいつもいつも。そう言って、結局駄目だったんじゃないか」
「――え?」
ウツギはいよいよ泣きそうな顔をした。トウカは呆けたようにその顔を見つめる。
「駄目だったって、どういう――」
ウツギの言葉を頭の中で繰り返して、思考をかき混ぜた。
夢のこと、今までのウツギの言葉、彼らの主人の道具箱がトウカの手に渡ったこと、式神の一人がトウカの中にいること、鳥のあやかし――。ぐるぐるとかき混ぜた。
すべてが繋がっているのなら、トウカがここにいることにも意味があるのだろうか。
「ウツギ、私はあなたたちにとって――」
なんなの、と問おうとした。しかし、トウカの声は途中で遮られた。
「おはよう、トウカちゃん。やっと起きたみたいだね。ご機嫌いかがかな」
張りつめた空気の部屋にそぐわない、間延びした声がする。笑みを貼り付けたシラバミが障子を開けて顔をのぞかせていた。
「シラバミさん」
「アサヒくんもいるよ」
シラバミの後ろから、気まずそうな顔をしたアサヒも現れる。ちらちらとこちらを見ながら、
「トウカ、大丈夫か? 腕」
「うん」
そっか、とアサヒは頷いた。
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