第2話 白い雪と黒い羽2

 今日はウツギやアサヒも連れて、人の世への手がかりを探しに鳥居階段に来たのだ。もう何度も調べて徒労に終わっている場所だったが、ここが一番人の世に近く、道がつながる希望がある。


「じゃあ、それぞれ散らばって探しに行こう。何かあっても一人で突っ走らないこと。とくにトウカ、お前はいつも厄介ごとに巻き込まれるんだから気を付けろよ」

「ウツギって、時々お母さんみたいだよな」


 アサヒが笑うとウツギは不服そうな顔をした。アサヒの頭を叩いて、トウカにポチを預けると一人で歩いて行ってしまう。アサヒもトウカに手を振って、反対方向に進んでいった。


「仲いいね、あの二人。私たちも行こうか、ポチ」


 トウカはポチを肩に乗せて、二人とは別の方角へ足を進める。途中、トウカがくしゃみをすると、ポチが体をこすりつけるようにしてトウカの首元に寄り添った。


「あったかい。ありがとう」


 トウカが笑うとポチは満足そうに鼻を鳴らす。


 ――こんなに寒くて、おばあちゃんは風邪をひいてないかな。


 トウカがあやかしの世に来たのは夏と秋の狭間のころだった。それがすっかり冬だ。ずいぶんと長い間こちらに留まっていることになる。祖母の顔を思い出すと、胸が締め付けられた。会いたいな、と思う。そんなトウカに気づいてかどうなのか、ポチは一層トウカに寄り添った。


 そうして木々の合間を歩いていたときだ。トウカは雪の降り注ぐ白い世界で一つだけ、別の色を見つけた。

 黒。

 白い世界に、墨を落としたような黒い点がひとつ舞い込んだのだ。その色を見つた瞬間、ざわりとトウカの心が揺れた。


「これって――」


 トウカの進む先から風に乗って運ばれてきたもの。それは――、黒い羽だった。ああ、そうだと思いだす。夢の中で白い花にまぎれて降ってきたのも、黒い羽だった。

 今朝見た夢と同じ。白い世界に、黒い羽。

 トウカは風に乗って頼りなく運ばれる羽に手を伸ばそうとして――、やめた。


「呪いの気配だ」


 黒くて、暗くて、重い気配。

 トウカの進む先から、その気配が地を這うように漂ってきた。足元を伝って絡みついてくる気配に、ぞわりと背筋が粟立つ。ポチが体を震わせた。

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