第2話 白い雪と黒い羽1
「寒い――、俺寒いの苦手なんだよなあ。布団から出られなくなる。冬の間はずっと布団にくるまって過ごしたい」
「軟弱だな。だがアサヒはともかく、人の子は弱いからトウカはすぐに風邪をひきそうだ」
「そこまで弱くないよ。自慢じゃないけど、ほとんど風邪なんてひいたことないもの」
トウカはそっぽを向くと、かじかむ両手に息を吹きかけた。
赤い鳥居に囲われた石階段をウツギと、鍵師の少年アサヒとともに下りていく。ウツギの肩には黒犬のポチがぶら下がっていた。それぞれの口からもれる吐息が白く立ち昇る。アサヒは鼻の頭を赤くして、身を震わせた。
「――あ、待った」
ふいにそんな声を上げて、アサヒが足を止める。
「雪だ!」
嬉しそうな声で言うと、丸い瞳で空を見上げた。
――雪だ。
アサヒにつられて空を見上げたトウカの頬にも、粉のような雪が舞い落ちた。赤い鳥居の連なり、その合間から白い雪が降り注ぐ。
ウツギの白い吐息がまた立ち昇る。
「――初雪か。今朝は冷えていたからな。にしてもアサヒ、寒いのが苦手なくせに、雪は喜ぶのか」
「うるさいなあ。雪はほら、なんか楽しいじゃん」
「子どもか」
「ウツギに比べたら、俺は子どもだよ」
そんなやり取りを聞きながら、トウカは空に向けて手を伸ばした。雪が舞い落ちて、指先に触れると刹那の内に溶けていく。
白い雪。
――夢と、似てる。そういえば今日の夢、花にまぎれてなにか降っていた。なんだったっけ。
ぼんやりと夢の世界を思い出す。花にまぎれて降ってきたのは――。
「トウカ、どうした? 行くぞ」
「あ、うん」
いつの間にか、ウツギたちと距離ができていた。トウカは慌てて二人のあとを追いかけた。
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