第7話 贈りもの1

「トウカ、もう朝だぞ」


 ウツギの声で目が覚めた。黒犬のポチが駆け寄ってきて頬をなめてくるが、トウカは気だるそうに欠伸をする。


「最近寝覚めが悪いな」

「うん――、なんだか起きられなくて。すごく眠いの。ちゃんと寝ているはずなんだけどなあ」


 もう寒いのに縁側で寝てしまうこともよくあって、その度にウツギが心配そうに起こしてくる。まるで意識を失うように眠ってしまうのだ。


「なんでだろう」


 朝餉あさげを食べると、トウカはいつものように朱色の羽織を着こみ、人の匂いを消す薬を首筋につけて街に出た。待ち合わせ場所ですでに待っていた少年アサヒがトウカを見つけて手を振る。


「わざわざごめんな」

「いいよ、行こう。アオヒメへの贈りもの、いいのを探さないとね」


 二人は並んで歩き始めた。今日はアオヒメへの贈りものを探しにきたのだ。


「贈りものはなにがいいか考えた? 私も手伝うけど、やっぱり決めるのはアサヒだし」

「うーん、色々と考えてはみたんだけど――、考えれば考えるほど分からなくなるっていうか」


 アサヒは眉をひそめる。

 その言葉通り、小物屋や甘味屋など女子が好みそうな店を中心に店をまわってみたが、なかなかアサヒの目にかなうものはなかった。トウカもできる限り「これはどう?」とすすめてみるが、アサヒは曖昧な返事をするだけでこれというものは見つからなかった。

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