第6話 椿をまとう1
三人と一匹は連れ立って
ぐつぐつと煮詰まった金色のつゆの中にこんにゃくや卵や大根が入っている。湯気が立ち昇る大根を皿に入れてもらうと、店主が「味噌つけてみな、美味いから」と言った。甘味噌をのせて、はふっと一口。
「美味しい――!」
トウカが声をもらすと、店主は嬉しそうに笑った。
「やっぱり寒くなってくるとおでんだよなあ」
アサヒも嬉しそうに卵を食べる。卵も味が染みていて美味しそうだなあとトウカが見ていると、ウツギが店主に注文してトウカの皿に卵がのせられた。
「ありがとうウツギ」
「ああ」
ウツギは返事をしながら、つみれを箸で小さく切ってポチに食べさせる。他人の世話ばかりしてウツギは食べていないのではないかとトウカは心配になったが、合間合間で自分の好きなものを注文しているあたりは抜け目がなかった。
そうしてトウカたちは屋台を満喫して、市を歩き出す。
「たまゆら堂、行ってみるか?」
ウツギがアサヒに尋ねると、少年は小さくうなずいた。
今日は朔の日ではないから披露目はない。豪奢な造りのたまゆら堂は相変わらず周りよりも明るく照らされているが、三階の障子は閉まっていた。
「会えるのは、また次の朔の日だね」
それまでの時間がアサヒにとって長いのか短いのか、トウカにはよく分からなかった。
「あ、あのあやかし――」
トウカがたまゆら堂を眺めていると、中から金髪のなよなよした男が上機嫌で出てくる。披露目のときにもいた男だ。今日もごちゃごちゃと装飾で身を包んでいて、見ていて目にうるさいくらいだ。
「いやはや、アオヒメも椿をまとうことを許されたか。よきかなよきかな。贈りものはなにがいいか。とびきりのものを用意せねばならんな」
扇で口元を隠しながら笑う男は、お供を連れて楽しそうに去っていく。
トウカは首を傾げた。
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