二十六話――黒き悪魔類人の討滅
「ギィイイイイアアアアアっ!」
武器創造するまでの間に猿はシオンを喰おうと、一齧りしようとしたがシオンがいくらも早い。即創造された武器、《
巨猿の断末魔が響き、消える中、シオンが飛びだす。背後から「どうしてですか!?」とか「まさかのもしかしたらでまた王様の?」とかが聞こえてきたがまとめて無視。
猿に捕まり、頭を噛み砕かれそうになっている中年女の下へ急ぎ、猿の喉を串刺しにして即殺。女に無言でいけ、と合図。
女はそばに落ちている買い物かごの存在など彼方で不格好に走っていく。その後もシオンの槍は猛威を振るい、猿たちを徐々に、確実に仕留めていく。足を切り裂かれて激痛と出血で動けない女性を喰おうとしてのそのそ這ってきた子猿もたどる道は同じ。
シオンの槍鋒が唸りをあげ、子猿たちを残らず始末。異変に気づいた親猿の胸板に槍が抜ける。眩い光が爆発。ジスカの槍鋒から白い小さな太陽が放たれる。光は帯状の刃となり、まわりの猿を一掃。残ったのは大人の猿二頭だが、もうとうに気づいている。
シオンが追われて狩られ、喰われる存在ではなく、自分たちを滅ぼすほどの凶悪な実力の持ち主、だということに。だから逃げようとした。が、許してやるシオンではない。
逃げだそうと背を見せた瞬間、猿の頭部は宙に飛んでいた。シオンは槍を旋回。傍らに構えたまま周囲に気を配り、もうここにあの悪魔のような猿がいなくなったのを確認して武器をおろし、消失させた。静かになった大通りについさっきまでの活気はない。
代わりにあるのはひとの死体と血の大河。ほんの十分かそこらしか経っていない。なのに、いきなり地獄が越してきたような惨状にシオンはため息。いつどこででも血を降らせるのは自分にある宿命か、と思ってしんみりしかかったが、割れんばかりの歓声が早い。
シオンの鼓膜を貫く大歓声。助かった、との声に救急車両の警告音が聞こえてくるのでシオンは近くにいる要救護の女性の血濡れの上着、腕のところを裂き、足を縛った。
止血の応急的な処置だがあるのとないのとではまったく違う。女性は荒く苦しそうな息をしている。あまりの激痛に涙が勝手にぽろぽろ零れていく。シオンは彼女の肩にそっと手を置いて、もう安心せよとばかりやんわりさする。すると今度は安堵からか泣きだす。
シオンの手を握ってぐすぐすと泣く女性にシオンは無表情で救急救命士の到着を待ち、引き渡す。彼らはシオンの方も心配していたが、彼女が傷ひとつ負っていないのを確認し、なぜか恐ろしげに身震いして女性をストレッチャーにあげて救急車両に乗せた。
すぐ扉が閉まり、警告音を響かせて去っていく車を見送り、シオンはふと思いだしてクィースたちをだしにいく。壁を解除してすぐに女の子ふたりが飛びだしてきてシオンに飛びつこうとしたがシオンは拒否。ふたりをくるっとまわしてお互いを抱きしめさせた。
女子の
だが、青年もすぐシオンに目立った外傷どころか服すらも傷ついていないことに恐れおののくようなすごい顔をしてみせた。……無礼というか失礼なやつだ、とシオンがザラを叩こうとしたが女戦士は動きを止める。ザラの方に向かってくる一団を警戒して。
揃いの白い制服。肩には色味が微妙に違う片方だけの青い肩鎧。手に手に槍のような、槍銃のようなものを持っている男たちはある男を筆頭にして行軍するよう、だが、早足でこちらに来る。ザラはシオンが警戒しているのを見て手をあげ、「大丈夫」だと示す。
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