第186話 お市奪回作戦
「弦、これは一体?」
「兄者。敵に船が乗っ取られたのではないか?」
一大事である。2人は見つからないように海に入り1号艦へ近づいていった。
そして、伍号機から脱出した星は参号機の操縦席をこじ開けた。
「段さん、しっかりして下さい」
「う、うう、 おう、星か。無事だったのか。みんなは?」
星は首を横に振った。そうか、みんなやられたか。しかしあの爆発は?段は徐々に落ち着き始めた。さて、こいつは動くのか?
「星、離れてろ。動かしてみる」
参号機は動かなかった。だが、このまま置いておくわけにはいかない。段と星は二人掛かりでなんとか伍号機が乗ってきた
段は移動しながら参号機の故障箇所を調べた。
「やばい。1号艦で何かが起きた。おそらくは乗っ取られた」
「お市様が乗っているではないか。無事なのか?」
「わからん、わからんがお助けしなければ」
「海軍は皆、お市様の訓練を受けている。こんな時こそ我らで1号艦を奪回するのだ」
「意気込みはわかるがどうするのだ」
「あれを使って近くまで行く。場合によっては1号艦を沈める」
「命懸けだぞ」
「臆したか?そっちにも積んであるはずだ。こっちのと合わせて4隻、全て投入する。それに合わせて8号艦からあれを海上に出させろ」
「お市様の為だな」
「そうだ。作戦は直ちに行う」
「あいあいさー」
海軍によるお市奪回作戦が始まった。
少し遡ります。
大阪城では、右近が
「やったぞ。でかした右近」
と秀吉が喜んでいた。ところが、また起き上がり動き始めたのでどうするかと考えていたら突然爆発した。
「何があった?吹っ飛んだぞ」
右近が戻ってきた。
「どうやら船からの砲撃のようです。威力から考えますと城を砲撃してきたものと思われます」
「仲間割れではあるまい。情報では船を仕切っているのはお市様だという。あのお方には不思議な魅力がある。あの女を手に入れたかったがどこで間違ったのか。そうだ、勝頼だ、あいつが全て悪い」
「何のお話ですか殿下。仲間割れでないとすると、石田様が仰ってた船乗っ取りが成功したのかもしれません」
「乗っ取りだと?三成がそう言っておったのか?余は聞いとらん」
「石田様は官兵衛様と相談され、忍びの者達を使って船を沈める作戦を立てておられました」
「それは聞いた。スクリューを止めて沈めるのは合理的だ。あの船が無くなれば形勢はこっちに傾く、いるだけで目障りだ」
「殿下。石田様は船を沈めるとともに、一隻でもいいので手に入れる事をお考えでした。現在の状況ですが、遠目に見えますが船は沈んでおりません。沈める事が叶わずに占拠したのではないかと」
そうか。あの船が手に入るのか。もしやお市も。
海からの砲撃も止まり静かになったかと思いきや、船が他の船を攻撃し始めた。どちらが味方だ?
「三成はどうした?」
「軍勢がほぼ壊滅し、城へ戻る途中と思われます」
「海を制圧する絶好機かもしれん。長吉を呼べ!」
浅野長吉(長政)。秀吉の、というより妻ねねの親戚筋に当たる。その為要所要所で優遇され現在10万石の大名である。
「殿下。及びでございますか?」
「長吉。今すぐに一万の兵を連れて海へ行け。後で三成も向かわせる。右近、途中まで同行し詳細を説明しろ」
浅野長吉と右近は連れ立って海へ向かった。しばらくして泥だらけの石田三成が戻ってきた。
「殿下。それがしの配下の島左近という者が武田の船を占拠致しました。まだ連絡はつきませんが、敵の巨大な龍を倒したのがその証拠でございます」
「良くやった。龍相手の戦も見事であった。いま、長吉が海に向かっておる。何隻か手に入れる、あとは沈めるぞ。そなたも少し休んだら海に向かえ。その左近とやらと連絡は取れるのか?」
「左近は風魔と甲賀の忍びを連れております。海まで行けば手段はありましょう」
「三成。頼んだぞ。海側を制すれば勝ったも同然、お主の働きに全てがかかってると思え」
三成は休む間も無く出陣した。
10号艦と9号艦の艦底が開き、お市製作の潜水艦、
大阪城の東側では25万人の大戦争が、西側ではお市奪回作戦、船占拠作戦が進む中、ある男がひっそりと行動を起こしていた。
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