第168話 武田総進撃
利家は喚いた。
「五万だと、何故今まで気づかなかったのだ!」
「ここのところ間者の連絡が途絶えており、各地の動きの情報が途絶えておりました。旗印から敵は上杉、蘆名、佐々の模様」
利家は迎え撃つ準備にかかった。富山城に集結した上杉軍は蘆名幸村率いる一万五千、上杉景勝率いる二万五千、そして佐々成政率いる二万だった。
景勝が言った。
「佐々殿。お見事な陣ぶれでござる。よくぞここまで兵を集められた」
「全軍でござる。生きて戻る気はない故、全てを投じています」
「何と申された」
「上杉殿。それがしは信長公に仕え功績を挙げ国大名になりました。ところがどこでどう間違ったのか、信長公は殺され、猿めに裏切られ、さらに利家にも裏切られいつか信長様の仇をと思い生き恥を晒してきたのです。この戦が終わったら勝頼殿にお願いし領地をお返しする所存。この戦は信長様への、そして勝頼殿への恩返しでござる。それがしに失うものはありませぬ。猿に一泡吹かせてやりますぞ」
「立派なご覚悟。この景勝、佐々殿を死なせはせん。のう兼続」
「はっ!」
直江兼続は、古き良き武将を見た気がした。織田信長に会ったことはないが噂では暴虐無人のお方だったと聞く。だがここまで部下に慕われているのを見て噂は当てにならないと改めて感じた。
幸村は先行し能登の七尾城を攻めに向かった。上杉、佐々軍は加賀へ侵入し金沢城を目指して進んだ。前田利家は金沢城にいると忍びの報告があったのである。利家は四万以上の兵が向かってきている事を知り、能登への援軍が出せなかった。若狭、近江、山城の味方に援軍を要請したが間に合うかどうか。
そして飛騨から加賀に新たな軍が侵入してきた。信平率いる二万五千である。そして真田信綱、昌幸兄弟の兵二万五千が長浜から京へ向かって進み始めた。その後を追うように伊達率いる東北勢二万五千が続いている。
さらに関東勢と合流した織田、武田軍五万の兵が伊勢に向かっていた。前田利家はそれを知らない。援軍には期待してはいなかったが物理的に来れないとは思っていなかった。
加賀の城を落としつつ金沢城に迫る上杉軍と信平軍。そして蘆名幸村は七尾城を開城させ、そのままの勢いで金沢城へ向かった。敵は前田利家である。
上杉景勝は金沢城から二里のところに待機していた。信平を待つ目的もあったが、前回の戦で前田軍がハンググライダーを使った事を聞き、念のため距離を置いたのである。
直江兼続は景勝に進言した。
「
「秀吉は国友村を大阪城内に移し、大御所のトンデモ兵器の対策をしているという噂もある。何が出てくるかわからんぞ」
「ですが殿、大阪城ならいざ知らずこの金沢城にそんな大仕掛けがあるでしょうか?今回は大御所の作戦があたり不意を衝きました。同時に各地で進軍しておりますゆえ、敵の補給や援軍もないでしょう。攻めるなら今では?」
「わかった。まずは上杉軍二万で仕掛ける。佐々殿は信平殿と合流した後参られよ。そのうちに蘆名殿も追いつくであろう」
「上杉殿、それがしも参ろうぞ!」
「いや、前田如きは上杉で十分でござる。佐々殿は大阪城で暴れてくだされ」
佐々成政は納得したが上杉が危うくなったら直ぐに駆けつけれるところに陣取りした。この大戦は佐々にとって生涯に悔いを残さない戦であらねばならなかった。
大阪城にいる秀吉の元に各地からの報告が届いた。
「申し上げます。武田軍が進軍してきました。加賀へ八万、近江へ五万、伊勢に五万の大軍です。全てこの大阪城を目指していると思われます」
「わかった。下がれ」
秀吉、官兵衛、本多正信は報告を聞き、ついに来たかとお互いの顔を見た。大阪城には小早川、宇喜多、毛利をはじめ、西軍の兵が集まりつつある。島津は大友の抑えで九州に残ったが、加藤清正、福島正則等の子飼いの将も大阪城へ向かっていた。武田が兵を上げる事を当然の様に考えていた。
「この大阪城を攻めようとは笑止千万。この城の恐ろしさを天下に知らしめるいい機会だ」
「殿下。敵は18万の大軍。それに武田軍は不思議な武器を使います。勝頼がまた何か作っているという噂もあります」
「官兵衛、国友村の右近がな、武田の技術に対抗心を燃やしてな。大阪城の砲台もだが色々と仕掛けている。まあ見ておれ。痛い目にあわせてくれる」
本多正信が口を挟んだ。
「前田利家様はどうされます。持ち堪えられますまい」
「ああ見えて利家は軍師ぞ。ただでは殺されんよ」
「援軍は出されないので?」
「少しでも敵兵を減らしてくれれば良い。決戦は大阪城だ」
秀吉は利家を見捨てる気だ。もう一人の秀吉の話によると前の歴史では前田家は秀吉死後、徳川についたらしい。でなければ豊臣は滅ぶ筈がないと。ならば捨て駒としてせいぜい頑張ってもらおう。
金沢城に近づいていく上杉軍。
「殿。前田利家殿とは前回長浜で対しましたが戦闘にならず、今回決着をつけとうございます。それがしに指揮をお任せ頂きたく」
気合の入る直江兼続であった。
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