第24話 川中島

信玄は安倍金山を獲るために、今川を見限った。これは兄嫁と揉める事になる。

つまり兄上は、父上と対立する、歴史通りじゃん。


長尾景虎は、京都に登り関東管領に任命され、関東を荒らす北条討伐に繰り出した。


武田家は北条と条約がある為、信濃へ出陣したが信玄は上杉と北条の潰し合いを期待してちょっかいを出すくらいで本気で侵攻はしなかった。


謙信は間者から武田の動きから信玄の心を読み、北条討伐の為小田原城へ一気に攻め込もうとしたが、重臣らが武田を怖がり中途半端な攻めになり、結果として引き下がった。

関東の諸侯も信濃豪族と同じで上杉でも北条でもどっちでも良く、勢いがある方についているだけで保身の塊。上杉が春日山城へ引き上げると北条についた武将も多かった。


1561年夏、信玄は川中島に向かって古府中を発った。この様子は上杉の間者から謙信に伝えられた。謙信が春日山城を出た二日後に武田が動いた事になる。


謙信は先に川中島に侵攻し信玄が作った海津城を見上げた。


「目障りな城だ、落としてしまいたいがそうすればこちらが囲まれる。流石は信玄。面倒な敵よ」


結局上杉勢は武田が到着するまで様子見となった。




武田軍は古府中を発った翌日に諏訪についた。


「諏訪四郎、只今参上」


「何、四郎がきたのか!」


勝頼は、諏訪隊として500人の軍勢を用意した。諏訪、高遠から300名、勝頼が鍛えた若手200名である。その中の50名には戦国では初お披露めの科学武器を持たせた。


「お屋形様、この戦、四郎にも参戦をお許しください。この日の為、鍛えて参りました」


信玄は湖衣姫を愛していた。その子である勝頼を溺愛していた。この戦は武田が残るか上杉が残るかの天下分け目の決戦になる可能性が高い。そんなところに勝頼を連れて行きたくなかった。


「四郎。お前はまだ若い。そんなに初陣を焦る必要はないぞ」


「騎馬は里美様に、刀、槍は諏訪の者に鍛えていただきました。それに某の家来500名、必ずお役に立ちます。従軍の御許可をお願い申し上げます」


これを見ていた太郎義信が、


「四郎。お前はまだ子供だ。今回の戦は子供の遊びではないぞ」


「兄上、四郎は14歳になりました。子供扱いはやめていただきたい」


信玄は従軍のみならと迷ったが、他の諸将の建前親の甘さを見せるわけにも行かず従軍を認めなかった。




勝頼は考えた。歴史での初陣はもう少し後、ここで歴史を変えて早めに実力を見せようと思ったがダメか。となると、今川を切る方向しかないな。

兄上には申し訳ないが、歴史通りに。もし、兄上が味方になって従軍させてくれていたら、兄上を立てようかと思っていたが残念だ。


川中島を早く終わらせようと考えていた作戦を闇に葬った。


兄上が、以前話した俺の戯言を覚えていれば、あるいは。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る