第11話 父上と
山本勘助が笑いながら目通りにきた。
「温泉の素ですが、面白いと思いましたが全く売れませんでした。申し訳ござらぬ」
真面目に売ったのかこの野郎、と思いつつ反撃に出る。
「勘助、そなたは武田の家臣なのか、それとも今川の家臣なのか?」
「四郎様、どこでそのような戯言を」
「まあよい、ところで上杉に鉄砲をどの位売ったのだ」
「どこでそのお話を。まだお館様にも報告しておりませんのに」
あ、順番間違えた。あれ、今って何年?
「諏訪にも色々と情報は入るのだよ、お互いにお館様には内緒にな」
「恐れ入りました。それがしが6歳の頃とはあまりにも違います。流石諏訪大明神のご加護をお持ちになる四郎様です」
へへ、何とか誤魔化したぜ。ついでだから色々聞いてみた。諸国の鉄砲事情、金策、etc.
「ところで勘助、火薬の作り方を知っているか?」
「塩硝 木炭 硫黄を所定の割合で混ぜ合わせます。木炭、硫黄は甲斐でも手に入りますが、塩硝は日の本では作れませんので、南蛮から商人を通じて購入しております」
やっぱり。中学の時化学部で良かった。材料は諏訪にもあったし、あとは人手と
場所だな、なんせ臭いからなあ、アンモニア
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父上こと信玄は、結構な頻度で諏訪を訪れる。夫婦専用の温泉館をわざわざ建造して何やら楽しい事をしているようだ。
まあ三条さんは怖いし若くて綺麗な母上の方がそりゃいいよね。
唯一複雑なのは、母上の顔がどうみても昔の彼女なんだがどうしてこうなった!
畜生、もう少し大人になったら前世でできなかったあんな事もこんな事もしてやるぜ!
わっはっは………虚しい。
長年の敵、村上義清を追い払ったばかりだからね。砥石城攻略は近くで見たかったけど、6歳で戦場には行くわけにはいかんので我慢。あ、来年川中島だ。
6歳にもなれば賢さを出してもいいよね。本当に賢いわけではなく最初から知ってるだけだけど。
一応文字は練習した、だって同じ日本語とは思えない位違うのよ、これが。
紙に、武田晴信とか湖衣姫とか四郎と書くと両親が喜んでくれる。
父上にお目通りを申し出た。
「父上、信濃の平定、おめでとうございます。真田殿のご活躍が素晴らしかったとか」
「もうそのような事を言うようになったのか、四郎は賢いのう。相変わらず真田びいきか」
「はい、真田殿は知略に長けたお方。それがしも将来兄上をお助けしながら武田を導かねばなりません。教わる事が多くございます」
「その兄だがの、今川の娘を娶る事になったわ」
とつまらなそうに信玄が言った。目出度いけど目出度くない、戦国の結婚です。
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