19.精霊王と世界樹の関係


「こうなった原因に心当たりはないのですか?」

 闇の精霊王に顔を向けると、彼は緩く首を振る。

「マナは世界樹から出てこの世界をめぐり、最後はまた世界樹に戻って来る。それが狂っている…それ以外のことはわからないのだ。そもそも、我らは世界に干渉出来ない」

「干渉出来ない?」

「そうだ。我らの命もこれと同化している。故に離れることはできない」

 何のこともないように闇の精霊王はそう言ったが、意味が分かった途端私の肌が泡立った。

(精霊王も、死にかけてるって事じゃ…!)

「……質問があります」

 私の言葉に、その場にいた精霊王たちが私を見た。

「この状況を、私がどうにかしても良いのですよね?」

 風の精霊王がパァッと破顔して笑顔で飛びついてきたのを受け止めながら、口付けられる前に水の精霊王がそれを剥がしてくれた。

「…出来るのですか?」

 水の精霊王はそう言いながら私の両手を取って胸のあたりまで持ち上げて握りしめた。

「お約束は出来ませんが、力は尽くします」

 ふわりと水の精霊王は微笑み、手に力が入った。そして、軽くでも恭しく私の指に口付けた。

「もちろん、お願いしますわ」

「はい」

 絶世の美女と言っても差し支えないレベルの美貌の人に指先とはいえ口付けられて戸惑っていると、水の精霊王はコロコロと笑った。

「これは、私たちのご挨拶のようなものですわ。軽い祝福というか…おまじない程度ですけれどね」

「別に口付けなければならないわけでもないがな」

 闇の精霊王は軽くため息をついている。

「私からもお願いしよう。私たちとて、この滅亡を甘んじて受け入れたくはないのだよ」

 その言葉に、私はようやくホッとした。それならば、遠慮なく色々とやってみようと心の中で気合を入れた。

「やってみます」

 カルラが私の首筋に抱きついて、ぐりぐりと頭をこすりつけた。カルラだけでなく、他の子達も色々なところにくっついて来た。

「まずは、調べてみます。皆様は…」

 アイテムボックスから、大きいピクニックシートを出して広げ、その上にクッションや座布団を沢山出した。精霊草を籠に出して真ん中に置き、お茶やら水やらお菓子やらを置いておく。外の風景を気にしなければ、完全にピクニックだ。

「お疲れでしょうし、ここで休んでいてください。多分いくつか質問をさせてもらうかと思いますので、その時はお願いします」

 精霊達にも、貴方達も交代で休んでねと声をかけると、はーい!と良いお返事が返って来た。唖然としたり笑顔でお菓子を見たりしている精霊王達の事は、休憩組の精霊達に任せて見なかったふりをした。


◇◇◇


 それでは、と精霊王達に背を向けて、まずは世界樹に向き直る。

「ねえ、触っても大丈夫よね?」

 肩のところにいたファーナに問いかける。

「はい。世界樹は基本的には大きな樹そのものですから」

 ゆっくりを手を触れると、樹皮がパラっと崩れた。

(まずは、鑑定…)

 ゆっくりと世界樹の紋様を出して鑑定する。詳細鑑定に入ると、紋様が変化した。畳んだ布を開くように大きく広がったのだ。

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