第381話 あっそ。だったらこの仮面はいらねえわ
ドアに罠がないことを確認すると、ライトは<
ドアは荘厳な見た目でも木製だったので、ライトの全力の投石には耐えきれず壊れた。
視界が開けてライトとヒルダが目にしたのは、玉座の間とでも呼ぶべき部屋だった。
この部屋だけは壁が大理石のように気品の感じられる。
そんな部屋の玉座には、呪信旅団のローブに身を包んだノーフェイスが膝を組んで待ち構えていた。
「遂にここまで来たか、
「やっと追い詰めたぞファフナー=ユミル」
「・・・貴様、なぜその名前を!? <鑑定>は効かないはずだ!」
「一体いつから僕が<鑑定>持ちだと錯覚してた?」
生まれてから実の親に一度しか呼ばれたことのない名前を耳にしたことで、ノーフェイス、いやファフナーは驚きのあまり立ち上がった。
<鑑定>であれば、ファフナーはステータスを閲覧できないように対策していたが、今のライトは<神眼>持ちである。
<鑑定>の上位スキルを<鑑定>対策で誤魔化せるはずがない。
ちなみに、部屋に入った時にライトが<神眼>で閲覧したファフナーのステータスは以下の通りだ。
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名前:ファフナー=ユミル 種族:人間
年齢:15 性別:男 Lv:80
-----------------------------------------
HP:8,000/8,000
MP:100,000/100,000
STR:5,000
VIT:5,000
DEX:5,000
AGI:5,000
INT:5,000
LUK:4,500
-----------------------------------------
称号:悪のカリスマ
ネームドスレイヤー
二つ名:ノーフェイス
職業:
スキル:<呪術><
<格闘術><状態異常無効>
装備:
呪信旅団のローブ
ハンプティ・ダンプティ
キラーホーネット=レプリカ×10
備考:興奮
-----------------------------------------
「あっそ。だったらこの仮面はいらねえわ」
早々に冷静になったノーフェイスは、自らのトレードマークだった
仮面を外して見えたのは、真っ白な髪に金色の目をした若い男の顔だった。
「「えっ・・・」」
ライトとヒルダの驚きの声が重なった。
何故なら、ファフナーの顔がライトそっくりだったからだ。
「驚くことか? 世界には自分に似た顔の奴が3人はいるって言うじゃんか」
「それもそうか。どんなに似てても所詮は他人。関係ないね」
「そういうことだ。とりあえず、
「させない! 【
脈絡なくヒルダに対して闇の波動を放ったファフナーに対し、ライトはヒルダの前に光の壁を創り出した。
闇の波動は光の壁に弾かれるが、ファフナーはそうなると見越してライトと距離を詰め、ハンプティ・ダンプティを振り下ろしていた。
「ヒャッハァァァ!」
「【拾式:
ライトはミストルティンの先端を地面に向けた状態から蹴り上げ、ファフナーが振り下ろしたハンプティ・ダンプティを弾き返した。
本来の【拾式:
ライトに自分の攻撃を弾かれたため、ファフナーは無理に攻撃を加えずに距離を取った。
「ふ~ん、それが噂の<神道夢想流>なんだ」
「だったらどうした?」
「貴様、転生した日本人だな」
「お前もそうだろ。そうじゃなきゃ、<神道夢想流>=日本人なんて発想に至らない」
「気づいてたのか」
「当たり前だ」
「ライト、どういうこと?」
ライトとファフナーの会話を聞き、意味がわからなくなったヒルダはライトに訊ねる。
その様子を見てファフナーは小さく息を吐いた。
「なんだ
「異世界の存在を証明できないのに、下手なことを言ってヒルダを困らせる訳にはいかない」
「いいや違うね。貴様は怯えたんだ。真実を口にして
図星を突かれて黙ったライトだったが、そこにヒルダが割って入った。
「ライト、私は貴方の全てを肯定するわ。前世の記憶があると言うならば信じるし、住んでた世界が違うというならばそれも信じる。でも、大事なのは前世じゃなくて今よ。私はライトを愛してる」
「ヒルダ・・・。ありがとう。僕も愛してる」
ヒルダがライトを全肯定して愛を告げると、ライトは自身の迷いを断ち切れた。
そんな2人を見たノーフェイスは心底不愉快なものを見たと顔を歪めた。
「愛ぃ? 反吐が出るね。あぁ、憎悪で気が狂いそうだ」
「お前は人を愛することを知らないようだな」
「愛があったところで何になる? 愛があっても人はアンデッドに勝てる訳じゃない」
「愛があるから、愛する人を守りたいから人は強くなれる。マチルダや
「ハッ、あいつらは跡継ぎを産む道具に過ぎない。愛なんてないね」
馬鹿馬鹿しいと言わんばかりの口ぶりに、ヒルダは静かに怒りを口にした。
「ファフナー、この世の全ての女性の敵とは貴方のことよ」
「黙ってろ淫売。
「【参式:
「熱っ!?」
ヒルダを侮辱したファフナーにライトの音速の刺突が掠り、その摩擦でファフナーのローブが燃えた。
ライトの攻撃に反応できたものの、刺突が掠っただけでローブが燃えたため、ファフナーは燃えるローブを床に脱ぎ捨てた。
ファフナーのローブの下は黒い道着であり、全身のあちこちにキラーホーネット=レプリカのホルダーが縫い付けられていた。
「人の話を遮んじゃねえよクソが」
「おい」
「あ?」
「僕を恨もうが悪く言おうが好きにしろ。だけど」
「だけど?」
「僕のヒルダを侮辱するなら地獄を見せてやる」
その瞬間、ライトは護国会議でブライアンに放ったものとは比べ物にならない殺気をファフナーにぶつけた。
あまりに迫力が強いせいで、辺り一帯の空気がビリビリと痺れる程である。
「僕のヒルダ・・・。ライト素敵♡」
自分のためにここまで怒ってくれたライトを見て、ヒルダはイヤンイヤンと両手を頬に当てて嬉しそうに揺れる。
その一方、ファフナーはライトの殺気を一身に受けて邪悪な笑みを浮かべた。
「なんだよ
ファフナーはそう言うと同時に、<
「【玖式:
ヒルダを庇うようにライトが移動し、クイーンズハンドを絡めとるようにミストルティンを回した。
それにより、ミストルティンがクイーンズハンドに3回触れて壊した。
「何っ!?」
「お前の相手は僕だ」
一瞬でクイーンズハンドを壊されてしまい、ファフナーは驚いた。
だが、その反面ファフナーはだんだん楽しくなっていた。
「良い! 実に良い!」
普段ならば、自分の
目の前にいる宿敵ならば、自分の最高傑作であるハンプティ・ダンプティを使って存分に戦えると思ったからだ。
ファフナーは孤独だった。
勿論、それが自業自得なのは彼の人を人とも思わない生き方に問題があるからである。
しかし、ファフナーが強過ぎることも孤独さを感じさせる要因だった。
幼少の頃はオルバの方が強かったから、
それでも、ファフナーが大きくなっていくにつれてオルバの実力を追い越してしまい、今ではファフナーに勝てる者がいなくなってしまった。
そんなところに
ハンプティ・ダンプティを使って全力で戦えると思うと、ファフナーは嬉しさのあまり笑いながらライトに向かって切りかかった。
「フハハハハハ!」
「気でも狂ったのか?」
「もっと私を楽しませてくれ!」
「【壱式:
緩急のついた足捌きでファフナーの猛攻を避け、ライトはチャンスを見極めて突きを放つ。
ところが、ファフナーはその突きを受け止めて弾き返した。
ライトとファフナーの戦いは始まったばかりであり、そう簡単には決着がつきそうになかった。
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