第185話 流石はアンジェラ。完成度たけーなオイ
ライトがメア達のプロデューサーになってから10日が経過した。
残念ながら、月食はまだ終わりを告げていない。
この間に、イルミの指導(?)で
そんな彼女達は今日も屋敷の庭でレッスンを行っている。
「「「「あっ、えっ、いっ、うっ、えっ、おっ、あっ、おっ」」」」
「次のステップお願いします」
「「「「あ~え~い~う~え~お~あ~お~」」」」
「カ行でもっとお腹から声を出しましょう」
「「「「か~け~き~く~け~こ~か~こ~!」」」」
「OKです。では、滑舌はこれぐらいで結構です」
「「「「はい!」」」」
ライトはメア達の調子を見て、十分に求めるレベルに達したと判断してストップをかけた。
イルミが楽しんで歌うことを指導したとするならば、ライトは基礎を叩きこむ。
ドルオタの先輩に仕込まれた
基礎をみっちりやったことで、メア達の滑舌と声量は10日前とは比べ物にならないぐらい良くなった。
「では、1曲目から歌ってみましょう」
「「「「はい!」」」」
ライトに促されたメア達は、調子の良い状態のまま讃美歌を歌い始めた。
「ライト、かなり良くなって来たんじゃない?」
「ヒルダもそう思う?」
「うん。もう少し頑張れば、【
「そうだね」
メア達の<聖歌>を発動したままの歌を聴き、ヒルダは思ったことを正直に述べた。
ライトも同様の感想だったので、ようやくここまで形にできたかという達成感を得た。
このまま磨き上げれば、メア達4人の<聖歌>で自分の【
そうなれば、聖水の作成とバフをライトの手を借りずにできる手段が確立する訳だ。
ライトが嬉しくないはずがない。
讃美歌を歌い終わったメア達に対し、ライトとヒルダは拍手した。
「お疲れ様です。サビの盛り上がりに皆さんのエネルギーを感じました。これなら観客に聴いてもらうのに十分だと思います」
「「「「ありがとうございます、プロデューサー!」」」」
ライトからの感想を聞いてメア達は喜んだ。
そこに、箱を抱えてイルミとアンジェラがやって来た。
「みんな~、衣装できたよ~」
「若様、皆様の衣装をお持ちしました。自信作です」
「イルミ姉ちゃんとアンジェラ、ありがとう。早速見せてもらっても良い?」
「かしこまりました」
アンジェラはライトに言われた通り、衣装を箱から取り出してみせた。
「前に着たものよりもかわいいですね」
「フリフリだ~!」
「すごいです~」
「これがアンジェラさんの手作りなんですか!?」
(流石はアンジェラ。完成度たけーなオイ)
メア達が喜ぶのも当然の出来栄えなのは、これがアンジェラの作った衣装だからだ。
手先が器用なんてレベルではない程に、ライトが記憶している前世のアイドルの衣装にそっくりな仕上がりだった。
その完成度の高さのせいで、ライトの口調が思わず別人になってしまっている。
それはともかく、自分達に用意されたヘルハイル教皇国最新鋭の衣装を見て、メア達は眺めるだけではいられない。
すぐに試着したいという声が上がり、メア達は屋敷で衣装に着替えることになった。
15分後、衣装に着替えてメア達が庭に戻って来たのだが、メアの表情だけ能面のようになっていた。
その瞬間、ライトはそうなった理由を察した。
今回は衣装に余りがなかったため、イルミが衣装を着ることはなかった。
しかし、敵は身内にいたのである。
「セシリーはともかく、ネムは着やせしてましたし、ニコに負けるなんて不平等です。世の中間違ってます」
その発言を聞き、ライトはそっと目を逸らした。
メアの言葉に流されたまま、何とは言わないが大きさを見比べればそれはセクハラである。
メアが荒ぶることのないように、トラブルになる前にライトは目を逸らしたのだ。
ところが、目を逸らした先が拙かった。
ライトの視線の先にはヒルダがいたのだ。
この場で最も立派なものをもっているヒルダを見てしまったが故に、メアからゴゴゴと効果音が聞こえてきそうなぐらいプレッシャーが放たれた。
「やはり胸ですか。胸がないと駄目なんですか?」
「メア、違うよ。ライトは私が好きなだけよ。ね?」
そう言いながら、ヒルダはライトを抱き締めた。
今の発言にはライトのフォローをする意図しかなかったが、身長差のせいでライトの顔がヒルダの胸に当たってしまうと、それが事態を悪化させた。
「私のフレイルはどこですか!?」
「落ち着いてよメア! 大きくても肩が凝るだけだよ!」
「そんな肩凝りを経験したことはありません!」
「弟は貧乳はステータスだって言ってたよ~」
「貧乳って言わないで下さい!」
「リーダー落ち着きましょう!」
「私より大きい人は敵です!」
メンバー3人から宥められるが、更にメアの怒りのボルテージは上がっていく。
「【
激昂するメアをおとなしくしたのは、ヒルダから離れたライトの【
効果がすぐに出たことで、メアは落ち着きを取り戻した。
「アリトンさん、落ち着きましたか?」
「プロデューサー、失礼しました。少し取り乱しました」
(少しと呼ぶには無理があるんじゃ・・・。いや、なんでもない)
余計なことを考えれば、メアに感づかれる恐れがある。
それゆえ、ライトはこれ以上先のことは考えずに話題を変えることにした。
「皆さんが着替えてる間に、ユニット名についていくつか候補を用意しました。好きなものを選んでくれませんか?」
「ユニット名とはパーティー名のようなものでしょうか?」
メアも話題を変えたかったらしく、ライトの出した餌に食いついた。
実際のところ、メア達が着替えている間に考えたのではないが、そんなことは言わなければ誰にもわからないのでライトは黙っておくことにした。
「その通りです。4人組アイドルとして正式に売り出すなら、ユニット名は不可欠でしょう」
「なるほど。流石はプロデューサーです。どんな候補を用意して下さったんですか?」
「僕からは3つ出します。どれも気に入らないようでしたら、皆さんにも考えていただきます。1つ目はセイクリッド4です。<聖歌>を会得した4人組ですから、それをシンプルに表してみました」
「確かにシンプルですね」
「でも、シンプルイズベストって言うよ?」
「凝り過ぎても名前負けしそうですし、これが良いと思います」
「私もそう思います」
まずはシンプルなものから紹介したが、ライトの予想に反して好評だった。
「これで良さそうな反応ですが、一応残りも紹介しますね。2つ目はクローバーです。ニブルヘイムの大陸の形と同じ名前で、花言葉も幸運を意味します。国中に幸せを運べるようにという願いを込めてます」
「ロマンチックなネーミングですね」
「プロデューサーってば女子の心を掴むのも上手いんだ」
「この名前も捨てがたいですね」
「かわいい名前です」
女性4人組ということで、ちょっと洒落たユニット名も混ぜておこうというライトの考えは当たった。
セイクリッド4に劣らず、クローバーというユニット名も好評である。
「それでは最後ですが、パストゥーグローリーです。これはちょっと仰々しい気もしますが、栄光への道と言う意味ですね」
「力強い名前ですね」
「なんかカッコイイね!」
「ちょっと荷が重いです」
「同じくです」
「まあ、これは僕自身もやり過ぎだと思います。セイクリッド4かクローバーのどちらかで好きな方を言って下さい。勿論、他にアイディアがあればそれでも構いません」
ライトとしても、パストゥーグローリーは無理があると思っていた。
だから、1つ目と2つ目の案から選ぶか、追加の案を募った。
「私はクローバーが気に入りました」
「私も~」
「クローバーに1票です」
「クローバーかわいいです」
「全員クローバーに投じましたか。であれば、今日この時から皆さんのユニット名はクローバーです。良いですね?」
「「「「はい!」」」」
多数決の結果、メア達のアイドルユニット名はクローバーに決まった。
「皆さんの歌も衣装もユニット名も仕上がりましたし、アリトンノブルスに向かいましょう。出発は明日です」
当初の目標通り、ライト達は月食による不安を払拭するためにメアの地元に向かうことになった。
当然、アポイントなしに訪問するとアリトン辺境伯を委縮させてしまうため、事前に使いは送っている。
つまり、後はライト達がアリトンノブルスに移動し、クローバーのライブを開くだけである。
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