第155話 呪信旅団、お前等人間じゃない!
目の前にいる怪物に対し、ライトは<鑑定>を発動した。
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名前:ケイジ 種族:フランケン
年齢:なし 性別:雄 Lv:50
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HP:6,000/6,000
MP:3,000/3,000
STR:4,000
VIT:3,500
DEX:1,000
AGI:500
INT:0
LUK:1,000
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称号:なし
二つ名:なし
職業:なし
スキル:<
<剛力><鉄壁><体内保管>
装備:なし
備考:格納(マリア=ヘイズルーン)
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(えっ、シスター・マリアがケイジの腹に格納されてんの!?)
<鑑定>で判明した事実によってライトは衝撃を受けた。
マリア=ヘイズルーンとは、シスター・マリアの本名だからである。
フランケンという種族のアンデッドは、ライトも本の知識でしか知らず初めて遭遇する。
フランケンには体は継ぎ接ぎの筋肉繊維で覆われているが、中身は空っぽで何かを保管できる構造になっているのは有名な話だ。
しかし、実際に遭遇してシスター・マリアが腹の中に閉じ込められているとわかれば、ケイジへの攻撃をどのようにすれば良いか困ってしまった。
下手に派手な技を使ってケイジの中に閉じ込められているシスター・マリアまでダメージを受ければ、ケイジを倒した後にシスター・マリアが手遅れの可能性だってある。
(呪信旅団、お前等人間じゃない!)
シスター・マリアがケイジに閉じ込められていれば、ライト達は攻撃手段を狭められて戦闘に時間がかかる。
その間に確実に逃げられると考えてのやり口なのだから、ライトがノーフェイスを悪魔呼ばわりするのも当然だろう。
「グモォ」
ドシン、ドシンと音を立てながら、ケイジはライト達に向かって歩き始めた。
だが、AGIが500なのでクロエでも十分に目で追えるスピードだった。
「僕が拘束するまで手を出さないで! 事情は後で説明する! 【
クロエでも余裕ならば、ライトにとっては寝惚けていても拘束できる。
光の鎖によってケイジはあっさりと捕まった。
「グモォッ!」
ところが、ケイジはパリンと派手な音を立てて光の鎖を破った。
技を使うこともなく、ただのSTRだけで拘束から脱出したのである。
「【【【・・・【【
一重で駄目ならば物量で勝負すれば良い。
そのように考えたライトは<
「あのケイジの腹の中にシスター・マリアが囚われてる! 攻撃するなら首より上にして!」
「「「「「了解!」」」」」
ライトが待機を指示した理由を知り、生徒会メンバーとシスター・アーマは慎重に戦わねばならないと理解した。
「お姉ちゃんから行くよ! 【
「ゴフッ!?」
イルミがケイジの正面まで走ると、ケイジの顎を狙ってアッパーを放つように【
ストレートで放ってしまったら、ケイジの中に閉じ込められているシスター・マリアにもダメージが入ってしまう。
それを考慮して攻撃したのだから、イルミもやらかすことなくライトの指示通りに戦えていると言えよう。
「ぐぬぬ、硬いね」
「ケイジのVITは3,500もあるから半端な攻撃じゃダメージにならない!」
「それならMPを捧げれば問題ない」
「アルバス?」
ライトのアドバイスを聞き、アルバスはフリングホルニに全MPの半分程注ぎ込んだ。
MPを捧げたことでアルバスのSTRがその分だけ上昇する。
STRが上がった実感を得ると、アルバスはフリングホルニを振りかぶったままその場で回転した。
「喰らえ! 【
敵が拘束されていなければ、アルバスはこんな隙だらけの大技を使えはしなかっただろう。
アルバスが遠心力を乗せた輝く斬撃を放つと、その斬撃は横に回転しながらケイジの首筋に命中した。
「グモ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛!」
真っ二つとまではいかず、首を斬りつけられて激昂したケイジは<
周囲の大気が激しく揺れてケイジを拘束していた光の鎖の大半が壊れた。
「おとなしくしてくれる? 【
「グガァァァ!?」
神聖な光を帯びた十字の斬撃が目に当たり、ケイジの苦しみ方が変わった。
ケイジの苦悶の声により、瘴気がケイジを中心に渦巻き始めたのだ。
これは事前に阻止しないと危険だと思い、ライトはすぐに行動に移った。
「【
周囲の空気を浄化するだけでなく、拘束が解けかかっていたので、ライトは再びケイジを大量の光の鎖で動けなくした。
そこから先はひたすら作業のような戦闘が続いた。
イルミ、アルバス、ヒルダの順番で攻撃すると、ケイジが<
それをライトが修復し、ケイジが他の攻撃に出ようとしたら【
クロエとシスター・アーマはその作業を見ていることしかできなかった。
クロエの場合はSTR不足かつ<槍術>も会得していないため、どんな攻撃をしてもケイジにダメージを与えられない。
それでも何か攻撃しようとケイジの周りをうろついていれば、イルミ達の邪魔になることは容易に想像できる。
それが理由で動けなかった。
シスター・アーマの場合は顔にしか攻撃できない以上攻撃手段が少なく、仮に攻撃が当たったとしても効果が薄い。
だったらライトに攻撃が及ばないように、いざという時は盾になれるように待機していた方が良いという判断でライトの傍にいた。
もっとも、シスター・アーマの心配は杞憂に終わってライトが攻撃を受けることはなかった。
ケイジのVITが高いせいでチクチクと攻撃せざるを得なかったが、ようやく射程圏内に入った。
「【
パァァァッ。
ケイジの体が光に包まれてそれが粒子となって消滅すると、シスター・マリアが解放されて地面に寝かされた状態で現れた。
それと同時にシスター・マリアの隣には魔石と槍と同等の大きさの注射器がドロップした。
《ライトはLv54になりました》
ヘルの声が脳裏に響いてライト達の戦闘、もとい嵌め殺し作業は終わった。
ドロップした
「【
<法術>盛り合わせである。
シスター・マリアとついでに周囲の空気を浄化してから、状態異常やHPを回復させ、仕上げに疲労まで取り除いた。
シスター・マリアに思うところはあっても、弱っている患者を放置するなんてことはライトにできるはずがない。
世界樹治療院では完治していなかった症状についても、ライトにかかれば一瞬で完治した。
すぐにシスター・マリアが目を覚ます訳ではなかったので、とりあえず目を覚ますまでは放置することになった。
「ライト、お疲れ様」
「ありがとう、ヒルダ。ヒルダこそ戦闘お疲れ様。グラムの調子はどうだった?」
「ばっちり。エクスキューショナー以上に手に馴染んだよ」
「良かったね」
「うん」
ヒルダと互いに労い合ってから、ライトは注射器に<鑑定>を使った。
(バーサクシリンジ? 槍なのか、これ?)
<鑑定>の結果、バーサクシリンジという大きな注射器は槍に分類されることがわかった。
だが、そんなことは些事だろう。
肝心なのは効果とデメリットの方である。
バーサクシリンジの効果は、MPを消費することで注射器内に注射されるとINTの能力値がSTRにそっくりそのまま移るというものだ。
その代わりにデメリットとして注射された者は理性を失った状態で暴れ回るようになり、効果が切れた時に1分間動けなくなる。
周囲が敵しかいない状態なら使い道はあるだろうが、それでも常用できるような
ライトがバーサクシリンジの効果を全員に共有していると、眠っていたシスター・マリアが目を覚ました。
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