第78話 おいやめろ
ブートキャンプ2日目、ライト達は昨日とは違ってアンデッドと戦うことになった。
昨日の午後は、ひたすら自分達の課題をこなすために時間を使ったことで、体に溜まった疲労は普段の授業のものとは比べ物にならない程だった。
それでも、ライトが【
アンジェラからしてみれば、ライト達の課題はまだ全然消化できていない。
だが、折角ブートキャンプに来たのにアンデッドと戦わないのも勿体ないから、課題は空いた時間で継続的に行うようにと指示を出した。
それで、ライト達は今、アンデッドを探して歩いているという訳だ。
「来た。敵、5体。ロッテンボア」
ザックがアンデッドを捕捉し、手短にパーティーメンバーに知らせた。
「作戦B!」
「「「「了解(~)!」」」」
ライトの指示を受け、4人は頷いて行動に移った。
「【
ロゼッタが技名を唱えると、ライト達に向かって突っ込んできたロッテンボア達の足元から次々に蔓が生え、そのままそれらの脚を拘束した。
「【
「「【
アルバスとザックが斬撃を乱れ撃ちにすると、拘束された5体のロッテンボアは体の大きいただの的と化していたので、切り傷まみれになった。
しかも、ライトが【
体がボロボロになったロッテンボア達に対し、今度はアリサが攻撃を仕掛ける。
「【
「【
ライトが【
すると、大気が弾かれて衝撃波を生み、アルバスとザックによって崩壊寸前だったロッテンボア達の体は豪快な音と共に崩れ落ちた。
作戦Bとは、対集団の作戦で、ロゼッタが敵集団の移動を阻害した後、アルバスとザックが斬撃をひたすら飛ばし、とどめの役割をアリサが担うというものだ。
ライトの【
「【
ロッテンボア達がドロップした魔石に対し、ライトはすぐに素手で触れられるようにまとめて浄化した。
魔石の回収が終わると、アンジェラが口を開いた。
「やはり、若様が肝になっているようですが、皆様の連携は流れるようでした。後は、昨日も申し上げた通り、個の力を高めてその質を上げて下さい。そうすれば、戦場に身を置いても長生きできるはずです」
「「「「「は(~)い!」」」」」
アンジェラのコメントに対し、ライト達は揃って元気の良い返事をした。
再び、アンデッドを探して探索を開始する中で、アルバスが暇を持て余して口を開いた。
「それにしても、ライトの<法術>ってつくづく便利だよな」
「いきなりどうしたの?」
「だってよ、さっきのロッテンボア達との戦闘だって、俺達だけの力じゃもっと時間がかかった。【
「同意」
「それに、【
「それだけじゃないよ~。汗とか~、体の汚れも落とせるなんて~、女の子がほっとかないよ~」
「だよね」
「それはまあ、ヒルダも言ってたかも。遠征中、女子の身だしなみは苦労するから、ライトが羨ましいって」
「「うんうん」」
ライトの発言がまさにその通りだったので、ロゼッタとアリサが激しく同意した。
「まあ、あれだな。俺達は他と比べて恵まれてるんだろうな」
「その通りです」
アルバスが総括すると、アンジェラが口を挟んだ。
「アンジェラさんもライトといると、そんな風に思うんですか?」
「おいやめろ」
なんて馬鹿なことをするんだと、ライトがアルバスを止めたがそれは手遅れだった。
「若様こそ至高です。若様と一緒に行動できるだけで、私は生きてて良かったと1分に1回は思います。おっと、若様のことを考えるだけで、下着がちょっと大変なことになってしまいました」
「そ、そうですか」
アンジェラの変態発言を聞き、アルバスはドン引きしていた。
そんなアルバスを見て、ライトは額に手をやった。
ダーイン公爵家の汚点を見られてしまい、頭痛が痛いと思わず言ってしまうレベルのイライラがライトを襲ったのだ。
「アルバス、もう余計なことは訊くな。良いね?」
「お、おう、なんかすまんかった」
ライトに説得されるまでもなく、アルバスはもうライトの話をアンジェラには振るまいと心に誓ったところだった。
その後、アンジェラのせいで微妙になった空気を切り替え、ライト達はアンデッドの捜索に集中した。
すると、今度はアリサが前方の空にアンデッドを発見した。
「みんな、空に1体! スモッグ!」
アリサが指差した方向を見ると、ライト達は上空にスモッグがいるのを視界に捉えた。
「あれは僕がやるよ。【
パァァァッ。
ライトがあっさりと倒した。
残念ながら、今のライトのパーティーでは、距離がある状態で通常の物理攻撃が通じない相手に確実に攻撃できる手段を持つ者がライトしかいない。
それがわかっているから、ライトがスモッグを仕留めた。
ロゼッタが成長すれば、<森呪術>に魔法攻撃に分類される技があるかもしれない。
しかし、今はまだ会得できていないので、ライトに頼らざるを得ないだろう。
ライトが魔石を浄化して回収すると、アルバスがライトに訊ねた。
「ライト、今みたいに普通の物理攻撃が利かない敵に対して、俺達でも攻撃を当てられるようになったりしない?」
「う~ん、方法がなくはないんだけど」
「懸念事項があるのか?」
「ちょっとね。利権に関わるから、誰にでも使えるってものでもないんだ」
ライトが思いついた方法とは、聖水を飲み続けることで、神聖な力をその身に宿らせるというものだ。
今のところ、イルミとヒルダで成功し、ジェシカとメイリンはまだ成果が出ていない。
「と言うと?」
「まず、普段飲む水を聖水に変更する」
「・・・潤沢な資金がなきゃできねえじゃん」
「高い」
「聖水って高価だもんね」
「お店で~、コップ1杯分だけ植物にあげたよ~。すっごく高かった~」
アルバス達は、聖水の価値を理解している。
それゆえ、それが簡単にできる方法でないことに納得した。
しかし、アンジェラは知っていた。
ライトの【
「若様ならば、ただの水でも聖水に換えられますよね?」
「「「「え?」」」」
まさか、ライトがそんなことまでできるとは思っておらず、アルバス達は驚きを隠せなかった。
「アンジェラは知ってるもんね。実は、【
「衝撃」
「すごい」
「ライ君大金持ちになれるね~」
「・・・なるほど。だから利権に関わるのか」
「そういうこと」
実家が公爵家のアルバスは、貴族や力のある者の利権に対する執着心を理解している。
だから、ライトが水さえあれば聖水を作れるという事実が、大きな問題になるだろうことを容易に想像できた。
「でもさ、ライトなら身内の強化とかしてるんじゃないの?」
「一応、イルミ姉ちゃんとヒルダは成功したよ。ジェシカさんとメイリンさんは、今試してる最中かな」
「待て、ちょっと待て。なんで姉上も?」
「異議あり」
アルバスとザックは、自分達の姉がちゃっかりライトの恩恵にあやかっていることに物申したいらしい。
「生徒会室で聖水を使った実験をしてたら、ジェシカさんとメイリンさんに見つかってね。イルミ姉ちゃんとヒルダが成功したから、自分達も是非って押し切られて・・・」
そこまで言うと、ライトの両隣にアルバスとザックが素早く動いて肩を組んだ。
「なあ、ライト。姉上が良いなら、俺だって良いよな?」
「同じく」
「そんなこと言っても、ここじゃ水が限られてるよ?」
「大丈夫~。【
ロゼッタが技名を唱えると、噴水の形をした花をポンと手の中に創り出した。
その花の中心部からは、水が湧き出ていた。
どうやら、ロゼッタも興味津々らしい。
ここまでくれば、アリサとアンジェラも仲間外れにする訳にはいかないので、ライトはこの場にいる全員に試す前提で説明を続けることにした。
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