第40話 戦いは数だよライト!
5月最終週の金曜日になった。
今日は
2~5年生もこの日は新人戦の見学のため、今日と明日は授業がないので観戦するも自分のために時間を使うも自由だ。
だが、新人戦とは実は
だから、新人戦の2日間は
ちなみに、4つのコースを統括する生徒会も忙しかったりする。
新人戦の運営は教師陣も適宜口は挟むものの、その主体は生徒会だからだ。
新人戦が開催されるのはグラウンドだが、運営本部のテントでライト以外のメンバーがテキパキと動いている。
流石にライトは今日と明日は参加者なので、生徒会の業務は手伝えない。
運営本部はライトを除く4人でどうにか頑張るしかないのだ。
とはいえ、運営本部での仕事にも役得はある。
それは、1年生の試合を最前列で見られることだ。
ヒルダにとって
それはさておき、新人戦の開会式が始まった。
110名の1年生の前で生徒会長が開会宣言を行った。
「これより第366回新人戦を開会します! 皆さん、今日までの努力を全力でぶつけて最高のパフォーマンスを見せて下さい!」
開会宣言の後は、シスター・マリアから新人戦の諸注意がアナウンスされた。
また、
これらは参加する生徒の出自や懐事情で結果に影響が出ないようにと用意された条件だ。
つまり、ライトはダーインスレイヴもペインロザリオも使えず、普通の剣しか使えない。
この日のために、ライトはザックがドボルザークを購入した日に新人戦で使う剣をシュミット工房で購入しておいた。
また、個人の部とパーティーの部では対戦相手を故意に殺すことは禁止されている。
審判は教師陣が担当し、試合続行不可と判断するか勝敗が決したと判断する場合は審判が試合終了を宣言できる。
勿論、参加者が降参した場合はそこで試合終了となる。
さて、個人の部だが参加者が110名いると、最初からトーナメント方式で行うと日が暮れてしまう。
それゆえ、A~Dブロックの4回バトルロイヤル形式で予選を行い、それぞれのブロックの勝者が決勝トーナメントに出場できる。
G1-1~G1-5までなるべく人数が均等になるように分けられた。
G1-1の各ブロックの出場者は以下の通りとなった。
Aブロックはアルバスとカタリナ、アズライト。
Bブロックはエルザとロゼッタ、アリサ。
Cブロックはザックとミーア。
Dブロックはライトとオットー。
奇しくもライトは最初の実技の授業で模擬戦を断ったオットーと同じブロックになってしまった。
その組み合わせを知るや否や、ミーアが1人で興奮していたがライトはその腐ったコメントに対して聞かないように耳を塞いだのは言うまでもない。
Aブロックが始まった。
G1-1の生徒に対し、それ以外のクラスの生徒が囲って勝負を仕掛けた。
厄介なG1-1の生徒を相手に対し、質で劣るなら数で勝負という訳だろう。
ところが、アルバスはそんなの関係ないと言わんばかりに敵対した生徒全てを大鎌の餌食にした。
勿論、殺さないように峰打ちやら柄で攻撃するやらで対処していた。
カタリナとアズライトは一時的に手を組んで戦っていたが、囲んでいた最後の1人を倒した後に無傷のアルバスと戦える余力がなく棄権した。
BブロックもAブロックと同じ試合展開となった。
どうやらG1-1の生徒を先に倒す戦術がG1-1以外では鉄板らしい。
エルザは独力で自分を倒そうとする敵を倒し切った。
ロゼッタとアリサは手を組むことにしたらしく、自分達を囲んでいた敵全てを無力化した。
そのままエルザVSロゼッタ&アリサの勝負になった。
エルザは先に厄介なロゼッタを無力化し、アリサとの一騎打ちで辛勝した。
Cブロックでは、ザックが囲まれる前にドボルザークで陣形を切り崩した。
ミーアもまた囲まれまいと移動しながら矢を放ち、包囲網が完成する前に敵を倒し切った。
しかし、その戦いのせいで矢がほとんどなくなり、ミーアは矢が切れてからずっと魔法系スキルでザックと応戦する羽目になった。
ザックとミーアの戦いは、粘り強い防御でミーアをMP切れに追い込んだザックの勝利に終わった。
そして、いよいよライトの出場するDブロックだ。
審判を務めるシスター・マリアが開始の合図を出した。
「Dブロック予選、試合開始!」
「全員でかかれ!」
「みんなでかかれば怖くない!」
「優勝候補から潰せ!」
「戦いは数だよライト!」
「オットー、君もそっち側か」
開始早々、ライト以外の全員がライトに向かって攻撃を始めた。
今までのA~Cブロックと違ってオットーが狙われることなく、むしろ他の参加者を利用してライトを倒しに来た。
そんなオットーに対してライトはやれやれと肩を竦め、相手の動きを見切って確実に倒していった。
左右同時に攻撃を仕掛けられた時はアンジェラに教わった足捌きで回避し、その2人を同士討ちさせた。
遠距離から魔法系スキルを使う者がいても、別の敵と同一射線上に動いてギリギリで躱して同士討ちさせた。
その結果、最後まで残ったのはライトとオットーだけだった。
「おいおい、嘘だろ? 25人も倒したのになんで息が少しも上がってねえんだよ」
「鍛え方が違うんだよ」
信じられない者を目の当たりにしたため、オットーの表情は引きつっている。
「じゃあ、なんでスキルを使わずに済んでるんだ?」
「鍛え方が違うんだよ」
「もう、鍛え方関係なくねえか?」
「鍛え方が違うんだよ」
オットーに対し、ライトは同じ言葉を繰り返すことで、これ以上語ることはないという意思表示をした。
「んじゃ、俺がライトにスキルを使わせてやるさ。【
「遅い」
「がはっ!?」
「峰打ちというか、剣の腹だよ」
使っているのが両刃の剣だから、ライトはオットーの【
もしもこれが刃を立てての攻撃だったら、間違いなくオットーの上半身と下半身は永久に別れを告げていただろう。
地面にオットーの体が着いた時には既にオットーは気を失っていた。
「そこまで! Dブロック勝者、ライト=ダーイン!」
ライト以外誰もグラウンドに立っている者がいなくなると、シスター・マリアがライトの勝利を告げた。
「流石ライト! 格好良い!」
ライトの勝利に反応し、ヒルダが声援を送った。
(ヒルダ、恥ずかしいってば・・・)
大衆に見られている中、ヒルダから声援を受けてライトは恥ずかしくなった。
それでも、ヒルダがしっかりと試合を見ていてくれたことは嬉しかったから、ライトは小さくだがヒルダに手を振ってから移動した。
午前中がバトルロイヤルであり、決勝トーナメントは午後からだ。
ライトは午後の最初の対戦相手がザックとわかっているので、どのように戦うか考えながら昼食を出店で買おうと店を探した。
だが、すぐにその必要はなくなった。
「ライト~、一緒にご飯食べよ! 私、ライトの分作ったの!」
ヒルダがライトのため、弁当を作って来た。
「わざわざ作ってくれたの!? ありがとう! 一緒に食べよう」
「うん♪」
ライトを連れ、ヒルダは食堂の空いているスペースへと向かった。
ヒルダの作った弁当は食堂の料理並みに上手という訳ではなかったが、それでもライトは忙しい中ヒルダが自分のために弁当を作ってくれたことが嬉しくて感謝した。
こういうものは味が良いに越したことはないが、大事なのは気持ちだからだ。
昼休みの時間をヒルダと一緒に過ごした後、ライトはヒルダと別れてグラウンドの出場者の待機場所に移動した。
ライトとザックの試合の前に、まずはアルバスとエルザの試合がある。
ザックとの戦いが終われば、その試合の勝者と戦うことになるので見逃す訳にはいかないのだ。
時間になると、シスター・マリアのアナウンスによって午後の決勝トーナメントが始まった。
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