否定の盾(スカイside)

アラモードの姿は酷い物である。

髪の毛が乱れ、 目が血走り、 口の端から涎を垂らし

服が所々破けて半裸になっている。

しかし体には茨が巻き付いており、 辛うじて裸にはなっていないが

街中で歩いていたら間違いなく職務質問を受ける。


「・・・名乗り返す位したら如何? 魔法使いとしての礼節位習わなかったの?」


スカイが問う。


「古臭い作法なんて知らない」

「・・・・・」


スカイが言った作法とは確かに古い物であり、 スカイ自身も気にしない類の物だ。

だがしかし返答が返って来たのは非常にまずい。

先程の尋常じゃない威力の魔法とアラモードの今の有様から察するに

薬物によるドーピングがかかっているのだろう。

弱小魔法使いでも薬物によるドーピングで自分に比肩する魔法を放つ事も容易だろう

但し、 正気が無くなる事が殆ど、 それならば幾らでも足が掬える。

しかし返事をすると言う事は正気を保っていると言う事だ。


「ガイスト」


魔属性の基本的な攻撃魔法である。

悪霊の如き魔法弾は若干の指向性と追尾性を持つ。


「ビーンショット」


豆が魔法弾を貫通しスカイに迫る。


「否定の盾」


スカイの目の前に六角形のバリアが展開される。

固有魔法【否定の盾】。

その名の通りシールドを展開する魔法だが盾の騎士のシールド能力とは全く違うのだ。

この盾は聖と魔両方の魔力属性を持ち、 自分以外が触れると気絶する

何で聖と魔の魔力属性を持つと触れると気絶するのか?

全く持って分からない。

この【否定の盾】はメェーリツァ家が代々継承して来た固有魔法であるからだ

メェーリツァ家はビア帝国でも十二魔家と呼ばれる魔導の名家だったが

スカイが生まれる遥か以前に没落した際に細かい理屈や道理は全て失われている。

スカイは過去の古文書から独自に考えて【否定の盾】を復活させたのだ。

その圧倒的な防御力は皇帝フライにも終ぞ破られなかった。


「骨董品が」


否定の盾に向かって手を伸ばすアラモード。

そして巨木が生える、 【フルーツ・パーラー】だ。

超質量が襲い来る。

信じられない轟音を鳴り響かせる、 しかしながら否定の盾はびくともしない。


「ならこう」


包み込む様に木でスカイを覆おうとするアラモード。


「甘いわ未熟者!!」


否定の盾を自分を覆い込む様に複数展開するスカイ。


「馬鹿が、 これで何処にも行けないな!!」


スカイが自らを覆った否定の盾の数々を覆うように木を成長させる。


「お粗末!!」

「え、 ぅ・・・」


否定の盾はスカイの周囲にだけ出せる訳では無い

否定の盾をアラモードの背後に展開。

そして否定の盾を動かしてアラモードに当てる。

アラモードは昏倒してしまった。

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