不意打ち

徒歩よりも早く馬車にしては遅い速度で移動する魔動馬車。


「・・・人の気配がしないな」


ゼロがぽつりと呟いた。


「いや、 今は朝8時ですから、 まだ寝てるでしょう」

「怠け過ぎじゃないか? もっと早く起きろよ」

「ここら辺は大体10時頃仕事が始まるので」

「おっっっそ、 亜人の始業時間でこの位なのか?」


雷が尋ねる。


「いや、 騎士は朝6時起きが基本だからな、 この街が特殊なだけだ」

「まぁ麻薬産業で成り立っている街ですからね

普通の暮らしをするだけならば少し働くだけで良い」

「麻薬王のお膝元なだけはあるな・・・」

「だが良かったのか? ここはビア帝国にとって重要な場所では?

我々の様な他国人を入れて良かったのか?」


巾木が尋ねる。


「『冥府の門の底には亜人と言う人間の頭部が物に置き換わった連中が

ビア帝国の為に麻薬を作っている』なんて発表して誰が信じるんですか?

正気を疑われますよ?」

「それもそうか・・・」

「そもそも、 貴方達の証言の信憑性を無くしてからビア帝国に送りますので

機密漏洩の問題は無いですよ、 信憑性が無ければ何を言っても無駄ですし」

「信憑性を無くす? 何らかの魔法か?」

「大麻を吸って貰います」

「「「!?」」」


流石に動揺が隠せない。


「まぁ、 落ち着いて下さい、 大麻の依存率は9%です

これからの生活に支障も問題も無いでしょう」

「その通り、 僕も保障するよ」


ツイストも太鼓判を押す。


「ビア帝国では一兵卒も大麻を吸って覚醒して強くなるって事が有るみたいですね」

「強くなるなら是でしょう、 殺されるよりはマシだと思いますよ」


巾木の言葉に返すツイスト。


「だが健康に悪いのだろう?」

「酒や煙草よりも健康に対する害は低い事が判明している

ビア帝国の科学誌に論文も載っていた筈ですよ」

「科学誌なんて読んでいるんですか?」

「モテそうじゃないか」


ドヤ顔をするツイスト。


「そろそろ大使館に着きます、 準備して下さい」

「はーい」


降りていく外交官達に続くラビー達。

大使館はそこそこ大きく、 ちゃんとした作りになっていた。

そして門が開く、 ガララと音がする。


「うん?」


最初に気が付いたのは人狼の雷。

麻薬の匂いが充満した街だったので気が付くのは遅れたが

確かに匂ったのだ、 火薬の匂いが。


「!!」


雷が振り返るとそこには大砲を構えた亜人達が立っていた。


「逃」

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