本当は分かってる

カランコロン、 と店にゼロと巾木一行がやって来た。


「お父様、 如何しました?」

「いや、 でぶ妖精とグダグダやるのも何だからと顔を出してみたが・・・

如何だ? 進展は」

「いえ、 特に」

「そうか・・・」

「ゼロ公爵は如何思います?」

「何がですアラモード殿下」

「私と御嬢さんの婚姻ですよ」

「何度も言いましたがそれは絶対に嫌です」


拒絶するゼロ。

画面外でも何度も執拗に言って来ているので霹靂している


「子供が出来ないのがそんなに嫌ですか?」

「ウルに後を継がせる訳には行かないのでラビーに戻って貰いたい

しかし本人と話しても気乗りしていない様ですので

せめて子を作って欲しいと」

「子・・・ですか・・・」


遠い目をするラビー。

前世でも男性との付き合いは無かったのでそう言う話には縁遠く考えた事も無い。


「養子で良いじゃない」

「駄目に決まっているでしょうに・・・」

「あらそう・・・でも血の繋がりってうんざりしますよ、 マジで」


兄弟が多ければその分嫌な奴も多いだろう。


「そう言えばゼロ公爵、 貴方の奥さんって如何なっています?」

「妻とは別居中です」

「お父様、 現実を見ましょう、 既に離縁されているじゃないですか」

「私の全権力を持って拒否する」


断言するゼロ。


「公爵と離縁って・・・何が有ったんですか?」


巾木がラビーにこっそり尋ねる。


「お父様の浮気が原因です」

「浮気じゃない!! 初夜権を行使しただけだ!!」


初夜権とは主に権力者が統治する地域の新婚夫婦の初夜に

新郎よりも先に新婦と性交することができる権利である。

カラメル王国では一応は法律として認められているが民衆から大顰蹙を買うとして

初夜権を行使するケースは稀であり、 離縁の原因でもある。


「うわ、 キモ」

「純粋に罵倒するな!! だって初恋の人にそっくりだったんだよ!!」

「今時初夜権ってリスクしかない制度ですし撤廃した方が良いと思いますね

そもそもお母様だって初恋の人が居ると思いますよ

その人を諦めてお父様と結婚したのですから、 そんな事したらお母様は怒りますよ」

「・・・・・分かってるさ」


肩を落とすゼロ。


「ラビー、 何か強い酒を頼む」

「置いてません」

「・・・・・公爵殿、 自分

ラビー嬢を見つけた時に飲もうとしていて忘れていたウィスキーが有りますが

どうですか?」


雷がスキットルを差し出した。


「頂こう」


こんな日は酔いたくなる。

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