閑話 お汁粉とバター餅

カランコロンと店のベルが鳴る。

万年筆の令嬢がやって来た。


「こんにちは、 女将さん、 今日は私の持ち込みで料理を作って欲しいんですの」

「持ち込みですか? 一体何を持って来たんです?」

「餅よ」


どさっ、 と大量の餅を置く令嬢。


「私の家は旧暦で新年を祝って御餅を食べます

しかし今年は大量に余ってしまって・・・」

「お気持ちは分かります、 餅だけに」

「聞かなかった事にしましょう、 何か良い食べ方は無いですか?」

「そうですね・・・」


少し考えた後に案を出すラビー。


「磯部巻き」

「食べ飽きた」

「きな粉餅」

「きな粉の粉が鬱陶しい」

「餡子餅」

「それも飽きましたわ、 お汁粉も同じ理由で飽きました」


カランコロンと店のベルが鳴った。


「いらっしゃ・・・」

「SLKF・・・」


店のドアの所に立っていたのはでぶ妖精、 それもただのでぶ妖精では無い。

面長な体に三又に別れた手、 足は無くうにょうにょと動く体。

SLKFと言う言葉、 ユニークでぶ妖精の一種でかなり有名な種類。

SLKF(シルコフ)である、 SLKFに撫でられるとお汁粉をSLKFにあげたくなると言う

精神的な攻撃?を仕掛ける為、 でぶ妖精の中では危険視されているでぶ妖精である。


「お汁粉と言う言葉に釣られて迷って出たか!!」

「SLKF・・・」

「はいはい、 お汁粉を作ってあげるから待っていてね」

「SLKF~」


わぁいと手を上げるSLKF。

SLKFはお汁粉だけを求めるがでぶ妖精の中では小食で一杯食べたら満足してしまうのだ。


「まぁお汁粉は置いておいて、 女将、 何か良い案は無い?」

「じゃあバター焼きは?」

「・・・・・御餅よ?」

「あれ? 餅のバター焼き食べた事無いんですか?」

「無いわね・・・美味しいの?」

「網焼きとはまた違った味わいが有りますよ、 古いバターしか無いですがいいですか?」

「古いバターって・・・腐ってるわけじゃないでしょ?

別に構わないわ」

「では焼いて行きます」


餅のバター焼きはシンプルな料理である。

餅をバターでフライパンで焼くだけ、 それに醤油をかけて食べる。


「はい、 どうぞ、 SLKFにもお汁粉をあげるわ」

「SLKF~」


SLKFがお汁粉を令嬢がバター焼きを受取った。


「サクサク感が良い味出してる!!」

「SLKF~・・・」


満足が行く出来の二人であった。

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