第64話 選抜鬼ごっこ
今日は朝からナナミが張り切っている、自警団の選抜があるからだ。
アダムさんがきちんと、声かけしてくれたらしく、100人近くいるみたい。
「ふうーん、ずいぶんな人数が集まってるみたいだけど、いったい何人残れるかしらね? 」
最終的な決定と面談は俺もやるけど、まずは、最低限の体力とやる気が無ければ話にならないということで、一番最初は体力測定から。
ナナミの助手として、タイガーヴァイスがつき、集まった人々に声をかける。
「皆さん、本日はお集りいただきましてありがとうございます、自警団となるにあたって、早速ですがまずは、皆様の体力から見させていただきます 」
おう、体力なら任せとけ、自信あるぞ、俺も負けねーよ、ぬかせ、てめーなんか酒の飲み過ぎでふらついてんじゃねーのか、
「ここにいる5人のメンバーには、バンダナをつけてもらってますので、このバンダナを奪うことが出来れば、最終面談へ進んでもらいます 」
おおーと、盛り上がる声が聞こえる。
「どんな手段を使ってもかまいませんが、人や建物に傷をつけてはいけません、ちょっとぐらい、でもダメです、マイナスポイントです。でも、もしも傷つけてしまった場合は、素直に申し出て下さい。黙っていてあとから見つかった場合は失格とさせていただきます、この五人はこの広場と街の入り口のゲート、左右はこの大通りとその両側を含む三本の通り、ここから出ることはありません。なにか質問のある方はいらっしゃいますか?」
「すいません、合格者は五人ってことですか? 」
「いいえ、15~20人程お願いしようと思ってます 」
「あのー、魔法も使っていいんですか? 」
「かまいません、但し傷つけないように注意してくださいね 」
よっしゃあ、やるぜ、
「あと、複数でチーム組んでもいいんですか? その場合って最終的にバンダナに手をかけた人だけが合格になるんでしょうか? 」
12、3才位の冒険者に成りたてのような少年が質問をしてきた。
なかなかいい質問してきたじゃないの、この子、チームを組んでいいかどうかはわざと言わなかったんだよね、気づく人がいるかなーって、そこもポイントなんだからさ。
「いい質問ですね、チームは組んでも大丈夫ですよ、複数で挑んだ場合は、即合格ではありませんが、ポイントが加算されますので、頑張って下さい 」
どうせ、そんな簡単には、取ることが出来ないでしょうけど。
「では、他に質問が無ければ開始しますよ、メンバーが散ってから5分後に開始します 」
五人が動き出して、ざわざわとざわめきが高まる中、
「開始! 」
ナナミの声が響いて、一斉に動き出した。
「始まったようじゃな、ナナミも面白いというか、人が悪いというか、よう、思いついたのう 」
「んー、なんか、ナナミが言うには、人は見られてないと思ってる時とか、思いがけない事態になった時に本性が出やすいんだって、あからさまなマジックミラーとかだと、最初から意識して行動しちゃうけど、誰もいないと思うと、本音をポロリと漏らしたりするらしいよ 」
「まあ、そういうものかもしれぬな、それも前世の経験からかのう、おっ、それより、動きかありそうじゃぞ 」
見ると、目の前の水晶にドローウィッシュさんと、バルサさんが、噴水の脇に座りこんでいる周りを、10人ぐらいに囲まれていた。
街中に設置されてる水晶の柱は、映像の送受信もできるんだってさ、今回のために小型のもいくつか用意して、街中に設置済み。
屋敷の中には何本もの柱があっても邪魔だからって言ったら、四角く平らにしてくれたので、液晶ディスプレイがいくつも並んでるトレーディングルームみたいになって、ちょっとカッコいい、なんてワクワクしちゃったんだけど、
「これってさ、よく考えたら覗きになるのかな? 」
「かまわん、こちらには個人情報保護法も、ストーカー規制法もないからのう 」
それは、そうだけどね……
「あっさりと返り討ちにあいましたにゃ 」
7個並んだディスプレイを、どうやって操ってるのか良くわからないけど、サイゾーくんが空中で手を振ったり怪しげな動きをすると、注目したいディスプレイが目の前にくるんだよ。
なんか、サイゾーくん、スゴイです。
「サイゾーは、戦闘能力がにゃいので、情報収集、情報処理でお役に立つのにゃ 」
収集だけじゃなくて、処理まで出来るとは知らなかったよ、ひょっとしたら演算能力もあるのか?
有能すぎるだろう、戦闘能力いらねーよ。
サイゾーくんが、得意げにシャドーボクシングのような、パントマイムのような動きをしている横で、ゆったりとテレビ観戦している、ミハルと姫子。
そして、そこの場面を写せとか、偉そうに指示出ししているシンさんとサファイルさん。
まあ、サファイルさんは、今回もチビ水晶作るのも手伝ってくれたらしいからいいけど、偉そうにしてるあなたは何やってんの? ねえ、シンさん。
何となく、シンさんにもやっとした気持ちのまま、一緒に画面を見ていたら、見たことのある顔が映ってるよ、あれ、イブルさん? だよね。
「ねえ、あの画面に映ってるの、イブルさんだよね? 」
「おお、そうじゃ、イブルじゃ、我が主様のお役に立つようにと申しておったのじゃ 」
本人の希望じゃなくて、無理強いなのか、それは、ちょっと、可哀そうじゃないかな、それにあの五人でもさすがにイブルさんが相手じゃ、負けてもしょうがないし。
そう思っていたら、イブルさんの動きがなんか怪しい、あれ、何してんの、イブルさんが見てるのって、アナさんで、なんか、うっとりした顔してないか?
「ね、ねえ、シンさん、イブルさんてもしかして……」
「うむ、魅了を使っておるようじゃの、」
やっぱり!!
「それは、ずるくない? 」
「ナナミが魔法を使ってよいと言っておったから、良いのではないか。」
アナさんについてる、ハットリくんが必死に止めようとしてるけど、目がハートのアナさんは止まらない。
自分から、ゆっくりと近づいて抱きついちゃダメだろう。
あーあ、頭なでなでされて、スッゲー気持ち良さそう、バンダナ取られちゃったよ。
「気持ち良さそうじゃのう、あれは、もう仕方あるまい、相手が悪かったようじゃ 」
……同感です。
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