第23話 訓練

そして、ダンジョンから街までの連絡だが、サイゾーくんがしてくれる事になった。


人が歩けば3時間程だが、サイゾーくんの全力なら15分程度だそうだ 早っ!

この世界の人が歩いて3時間って多分15キロ位で、それを15分って

……時速100キロ!!  高速道路を走行ですか?


これには全員驚いたが、サイゾーくんの全力ダッシュを見て納得。


明日の夜明け前に、南門で待ち合わせを取り付け、今日は解散になった。


家に戻って、さすがに、もう、無理!とテーブルに突っ伏していたら

「お疲れさまでしたにゃ、お茶をお持ちしましたにゃ。」

と、紅茶を入れてサイゾーくんが持ってきてくれた。


なんて優秀なんだと、ほっこり、じんわりしていたら、

「お腹空いたよー、なんか食べたい!   お腹空いた~」

と、ナナミが圧力をかけてくる。


「あー、もう少し待って、  お願い、  少し休ませて、」

俺、食欲無いのに…さすがナナミだな、 でも、ごめん、少し休みたい。


「お待たせしましたにゃ、」

サイゾーくんがパンとスープを温めて持ってきてくれた。もう、 泣きそう。


「ダイチ様はお疲れなのにゃ。」

サイゾーくんをなでなで、もふもふ。  ふうっ、癒される。

ミハルや猫又達が安心して暮らせるように、頑張るからな!


翌日からは、4名がダンジョンに泊まり込み、一日毎に2名づつ街のメンバーと交代となった。

俺がダンジョン組に加わった時に、ビールを冷やして渡したら、

「うめえ!」「なにこれ、冷やすとこんなにおいしいんだ。」「飲んだことない、美味い!」


と絶賛だった。ふふっ、そうだろう、そうだろう、驚け、日本のビールは美味いんだよ! 

だが、この世界のエールよりも酒精が強いので、やや注意なんだけどな、


そして、お待ちかね(俺とナナミが)の日本の食卓から取れる食材(おたから)は、三食の神器と言えばこれだろうと、まずは、これ、味噌、醤油、米だ。


米はこの世界にもあるらしいが、食べ方が普及していないので、はっきり言って家畜の餌にしかならない、それを知った時にはものすごーくショックだった。一度取り寄せてみたが、精米方法が良く分からずあれこれと試していた時の周りの皆の眼もあり、一旦、あきらめかけていた、が、ダンジョンの中では精米されたお米が手に入る! 基本的にミハルの知識、経験、想像によってダンジョンは造られていくので、一般的に流通していたものはほぼ手に入るらしい。


ということで、当然お米を炊く。めっちゃ美味い。サマニシキ、コシノヒカリ、異世界でも揺ぎ無く旨い。

味噌汁にご飯、自然に手を合わせて感謝していた自分がいたよ。ナナミも感謝を込めるように一口、一口大事に食べてくれた。もちろんミハル達への差し入れおそなえも忘れない。


そして、米があるなら、携帯食としておにぎり! 塩むすび、焼きおにぎり(醤油、味噌)を沢山作ってタイガーヴァイスのメンバーにも食べてもらった。この世界の人達に受け入れられるかどうかも知りたかったしな。


結果は大成功!!  世界が違っても美味いものは美味い!

俺の【鑑定】の結果、笹に似た葉っぱでくるむと3日位は常温で保存できることが分かった事を伝えると大喜びされた。この世界の保存食ってガチガチに硬かったり、塩辛すぎるのが多いからね。

時間停止のアイテムボックス持ちでもないと、旅はかなりの重労働で食生活は生きるための最低限となる。


皆が美味しく食べる顔を見ていると、俺も幸せな気持ちになれる。次はどんな旨いものを作ろうか?とワクワクしている横で、イルガーさんがナナミと組手をしている。ナナミは合気道を中学から習っていて、柔道、空手は警察官になってから身につけたらしい。


魔法やスキルがあるこの世界で、相手の力を利用して技をかけるナナミは珍しく、イルガーさんは何度も何度も頼み込み、今は嬉々として投げられている。まずは受け身から。


30㎝近い体格差のある相手を投げ飛ばす少女が、日常の風景となってきた頃、他のメンバーもナナミに教わるようになり、朝は「礼」から始まり、夕方「礼」に終わる。例え魔物であり、ダンジョンに生きる仮初の命であったとしても、自分の糧となってくれたことに感謝を忘れないように、と締めくくれば、「有難うございました。」と揃って頭を下げている。


お姉さんキャラ復活か?


俺は、そんなガチな練習しごきに付き合う気は無く、……いや、やる気とかじゃなく無理だから、死んじゃうから、食事係としてこそっと抜けて支度を始める。


そしていつものように食事の準備をしていると、サイゾーくんがやってきた。

「ダイチ様、お疲れ様だにゃ、」

「ああ、サイゾーくん、いつもの差し入れおそなえも、もうすぐ出来るから待っててね。」

と、頭をなでる。


「いつも、有難くいただいてるにゃ、礼を言うのにゃ、それよりもにゃ、ダイチ様のカードには属性魔法の記載が無いのは、本当かにゃ?」


「本当だよ。」

屈みこんでサイゾーくんと視線を合わせる。少しだけ胸が痛いが、それが俺だ。それもあって弟のほうが領主の後継ぎにふさわしいと思ったことも、まあ…事実だな。


「ミハル様がおっしゃっていたにゃ、カードに記載されるのは秀でた属性の魔法の種類か、Lv,3以上のスキル持ちになった場合で、何も記載されないのは、全属性持ち。おそらく時空魔法の素質があるとのことにゃ。」





…………はい?

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