02 上京の途 (2)

 ナリキンバーク領 → 王都までの行程は、二日北上、後に北西へと三日。西へ二日。そしてガックンと北に折れて、あとはほぼ真北に二週間ほど進めば到着になる。

 難所は、その北上が続くまでの約一週間らしい。


 理由はうちの領に隣接する魔物が沢山な森林地域に沿って進む事。またこの森林は隣の領と隣国に接しているとこから来る、情勢不安地帯だからだ。

 そんな地域なので定住している村や集落すら無い。

 故に、旅人を標的にする襲撃者も多いというわけだ。


 移動の季節が初春ってのもな、越冬した動物と同じ感じで魔物も動くようで、遭遇時には餓えている事が非常に多い。この街道を通り慣れている者の談によると、“もう二ヶ月は待機して出ろ”と忠告するくらいに危険度の大きい時期との事。


「……まぁ、親父様が旅程の計画をして、敢えてその時期を狙った意味も解るんだ」

「……?」

「自分で言うのも何だが、戦力過剰だろ。この一行」

「……!」

「そう。どうせ領の戦力を移動させるんだから、危険物と遭遇しやすい時期に出して掃討しながらいけって事なんだろうな」


 今回は領兵は使うが冒険者は居ない。

 戦果に実入りの配分を気にしないで良いので、出せる戦力は出して蹂躙してけってスタイルなわけだ。

 ここでこの時期、害になる物らを消しておけば、後々この街道を使う誰かの安全性も高まるからな。


「ウザイン様……、齢13にして孫と語らう祖父が如くの貫禄を……」

「っ!」

「こら、変な例えを出すからフラウが慌ててるだろう。と言うか俺のどこがジジイか」


 最近のメイドの評価が辛辣過ぎる。

 まぁ、どうも前世の成分は年齢が高そうという感じもするしな。

 案外的外れな評価じゃない可能性もあるか。


 で、さてと。

 今回の旅では、俺に対する親父の試練も多分にある。と視ている。

 襲撃者とは、何も魔物だけを指す言葉では無いからだ。

 フラウシアたち難民が隠れ暮らしていたのは、場所こそ離れているが、この、同じ森林地域になる。彼女たちの居た地域にはうちの砦が目を光らせていたが、ここいらには置いていない。

 で、誰かの監視の目もなく、生きるのに狩猟しか適さないこの地で生きるには“何が容易いか”。

 つまりは、野盗化した難民の勢力が多い土地でもあるのだ。

 もちろん、それらは立派な討伐対象になる。

 捕まえれば労働用の人材としは使えるかもだが……それで道程を逆戻りとか、無いな。

 つまり、処分一択だ。

 だから、これは親父様からの試練なのだ。

“必要なのだから、人を殺してこい”っていうな。


 うー……ん。

 いやまぁ、実は、俺自身どうでもいいという感想を持っている。

 ウザインの感性として当然だないう意識が。

 そして地球人の面で言っても、似たようなもんだ。

 俺は薄情な人間だったのか。もしくはサイコパスとかなやつだったのか?

 まぁ、解らん。


 ただな、これから対面する連中は、まず前提として人殺しだ。

 俺やその仲間の命を刈り取って、自分が生きようとしている連中だ。

 どうしてそんな奴等の生命を尊重しなきゃならんのだ?

 自身の生存の努力を放棄してまで、そいつらの命を優先しなきゃならん道理が理解不能だ。

 というか、それを正しいと言い張った地球の感性が異常としか思えん。

 とまぁ、既に結論が出てるのだ。


 まぁ何より。

 地下牢の動物で散々実験もやったしな。

 とっても人に似た動物だったが、アレは動物だ。

 死にかけるまでで終われば元通り治したし、手遅れのやつには、よく成果を出してくれたなと感謝もした。

 本当に人に似たような奇声で鳴くから、ああ、本物もこんな感じに悲鳴をあげるのかなーな練習も済んでいるのだ。

 だから平気だと思うぞ。

 敵対した人を殺すって事にも。


 むしろ問題は、同じ難民の出自というフラウシアの方かもしれない。

 下手すりゃ知人が居る可能性もあるのだし。

 そこのあたり、本人にちゃんと確認しとかないとだろうな。



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