第5章 4 涙の再会
「シャーリーッ!」
慌てていたヒルダはノックする事も忘れ、客室のドアをガチャリと開けた。
すると、ソファに座っていた少女が驚いたように立ち上がった。
「ヒ、ヒルダ…ッ!」
そこにいたのは銀色のストレートヘアーの少女…シャーリーだった。
「シャーリー…」
ヒルダの目にみるみる涙がたまる。シャーリーも目に涙を浮かべている。
「ヒルダ…ッ!!」
シャーリーはヒルダの元へ駆け寄ると大切な親友を力強く抱きしめた。
「ヒルダ…ヒルダ…ッ!」
シャーリーはまるで子供のようにヒルダに抱きつき、泣きじゃくる。
「シャーリー…シャーリー…」
ヒルダもまたシャーリーをきつく抱きしめ涙を流す。こうして2年ぶりに再会した2人は…メイドがお茶を運んでくるまで泣き続けるのだった―。
****
ヒルダとシャーリーは今向い合せでソファに座り、2人で『カウベリーティー』を飲んでいた。
「ヒルダ…本当に綺麗になったわね…」
ティーカップをソーサーの上にカチャリと置くとシャーリーが言った。
「そんな事無いわ…シャーリーこそ…」
「凛々しくなったでしょう?」
シャーリーは冗談めかして言う。
「シャーリーはやっぱり騎士を養成する学校へ行ったの?」
「ええ、そうよ。『ランスロット』にあるアカデミーの2年生よ。アカデミーは全寮制なの。最もあの町は汽車で半日はかかる場所にあるから通学なんて到底無理だけどね」
「ええ、そうよね…それで…スコットさんとは…どうなったの?」
ヒルダは遠慮がちに尋ねた。
「彼から何も聞いていないの?」
シャーリーは不思議そうに首を傾げた。
「ええ…とても彼にそんな事聞ける余裕が…私には無かったから‥」
するとシャーリーは言った。
「両親はね、私が無事にアカデミーを卒業して…『ナイト』の称号を得る事が出来たらスコットとの事認めてくれると約束してくれているわ」
「そうなのね?でもシャーリーならきっと大丈夫よ」
ヒルダは弱々しく微笑んだ。
「ヒルダ…そんな話よりも…私はずっとずっと貴女が心配で…もう二度と貴女に会えないんじゃないかと思った程なのよ?」
再びシャーリーの目に涙が浮かぶ。
「シャーリー…」
「2年前のあの日…『カウベリー』の教会が焼け落ちて…犯人は貴女だと噂が流れたのよ。慌てて貴女に面会に行っても会わせて貰えなくて…何日も何日もこの屋敷に通ったのよ?そして知ったの。領民たちが皆貴女の事を悪く言って…とても激怒しているって事をスコットから聞かされたのよ?」
シャーリーは鼻を鳴らすとさらに続ける。
「それで…ある日、貴女が勘当されてメイドの女性とここを出たって…なのに誰も行き先を知らないって言うし…」
「そして今になって突然スコットからヒルダが『カウベリー』に戻って来たって話を聞かされたのに…ま、まさかこんな形で…」
シャーリーの目から涙が零れ落ちた。
「シャーリー…わ、私…愛する人を永遠に失ってしまったの…私は…」
ヒルダも大粒の涙を流していた。
「言わなくていいわ!」
シャーリーは再び立ち上がり、ヒルダを抱きしめると言った。
「分ってる…ヒルダ!そこから先は言わなくても‥!」
「シャーリー…シャーリー…わ、私‥高校を卒業したら結婚するつもりだったの…こ、今度こそ幸せになれると思っていたのに‥なのに…!」
ヒルダは親友に抱きつき、激しくすすり泣くのだった―。
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