第2章 18 コリンとの再会
「だ、誰だよ・・・俺に面会なんて・・。」
ビクビクする声がルドルフ達の方へ近づいて来る。
(あ・・・あの声は間違いないっ!コリンの声だ・・・!)
ルドルフの身体に緊張が走り・・思わず繋いでいたヒルダの手に力を込めてしまった。
(ルドルフ・・・。)
ヒルダはルドルフを勇気づける為、そっとその手を握り返した。
「まあ、いいから。来いよ。それにしても・・・お前って貴族と知り合いだったんだな?」
赤毛の男の声が聞こえる。
「え・・・?お、俺に・・貴族の知り合いなんて・・・。」
言いながら姿を現したのは・・やはり紛れもなく、コリンの姿だった。
「コリン・・・ッ!」
ルドルフはコリンを見ると、力を込めてその名を呼ぶ。
「え・・・?ま、まさか・・・ル、ルドルフ・・そ、それに・・隣にいるのは・・?」
コリンは怯えながらヒルダを見た。
「お久しぶりです。コリンさん。」
ヒルダはコリンの顔を覚えていはいなかったが、頭を下げて挨拶をした。
「あ・・・ヒ、ヒルダ・・・・様・・・。」
コリンがルドルフとヒルダの名を呼ぶのを見て赤毛男が言う。
「ほら、見ろ。やっぱり、お前・・貴族と知り合いだったんじゃないか?それじゃあな。後で・・ゆっくり話を聞かせてくれよな?」
赤毛の男はにやにやしながらその場を後にした。そして、その場に残されたのは扉の外に立つルドルフとヒルダ。そして古びた寮の中に立っているコリンの3人だけである。
「な、何だよ・・・ルドルフ・・い、一体俺に何の用事が・・・。」
コリンはガタガタ震えながらルドルフを見る。ルドルフは言った。
「僕の大切なヒルダ様をずっと立たせておくわけにはいかないんだ。この工場の向かい側に喫茶店があったから・・・そこへ入らないか?」
工場の前には喫茶店が何軒か軒を連ねている。この喫茶店は工場長等、お金にゆとりのある彼らが休憩の場として利用する為にあるようなものであった。
「無、無理だよっ!お、俺にはそんな金の余裕は・・・。」
コリンは首を振った。
「お金なら僕が払う。・・・来てくれるね?」
「わ・・分かったよ・・・。」
コリンは首を縦に振った―。
コリンを引き連れて歩くルドルフとヒルダ。そしてヒルダがルドルフに声を掛けた。
「コリンさん・・・大丈夫かしら?あんなに顔が真っ青なんて・・・。」
するとルドルフがつないだ手に力を籠めると言った。
「ヒルダ様は・・優しい方ですね・・。彼らにあの教会に呼び出されたと言うのに・・。」
「そんな事は無いけど・・・ただ、コリンさんの置かれた境遇が・・あまりにも不憫で・・・。」
「ヒルダ様・・・。」
ルドルフはヒルダの身体を引き寄せると、さらに手を握りしめた―。
一方、そんな恋人たちの様子を見ながらコリンは思った。
(ヒルダ・・・足を引きずっている・・・きっと痛いんだろうな・・。それに・・・やっぱりルドルフとヒルダは恋人同士なんだろうな・・。結局・・あんなことがあったって・・。2人を引き離す事なんて出来なかったんだよ・・。それにしてもどうして今頃ルドルフは俺の所へ来たんだよ・・。)
実はコリンはカウベリーで起こった事件の事を知らなかったのだ。忙しさと貧しさで・・・世間で騒がせているニュースに触れる機会も無かったコリンが片田舎の町、 カウベリーで起こった事件の事等知るはずも無かったし、知っていたら・・コリンは恐らく逃げ出していただろう・・・。
そして、コリンは喫茶店でルドルフから恐ろしい事実を聞かされることになる―。
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