3章 3 カフェテリアで
昼休み―
ステラはお弁当を持て来ているヒルダを伴って校舎の南棟にあるカフェテリアへと向かっていた。フランシス達はテーブルを確保するために、既に先に向っている。そしてステラは足の不自由なヒルダと共にゆっくり歩いていた。
「ウフフ、嬉しいわ。またこうしてヒルダさんと学校で会えるようになって。」
大勢の生徒たちが歩いている廊下をヒルダと並んで歩きながらステラは心底嬉しそうに言う。そんなステラをヒルダは不思議そうに見つめた。
(どうしてステラさんはこんなに不愛想な私に付きまとうのかしら・・?)
ヒルダは自分が愛想のない人間であることは十分承知している。以前のように周囲の人達と打ち解けたいとはもう思えなかったのだ。
ステラはそんなヒルダの思いを知らず、次から次へと楽し気に話をしていく。自分の趣味の話や、好きな小説の話、そしてファッションの話・・。それ等の話をヒルダは全て適当に相槌を打って聞き流していた。
やがて廊下の突き当りにガラス張りのカフェテリアの出入り口が見えた。
「着いたわっ!ヒルダさん。行きましょう。」
ステラはヒルダの左手を握りしめた。
「あ・・・。」
ヒルダがつぶやくと、ステラは真っ赤になってパッと手を離した。
「ご、ごめんなさい。ヒルダさん。店内が人で一杯で歩きにくいと思って、つい手を・・・。」
赤くなってモジモジしながら言うステラをヒルダはつい、じっと見つめてしまった。
「な、何?ヒルダさん。」
「手・・・。」
「え?手?」
ステラは聞き直した。
「ええ・・・手を引いてもらえると・・・助かるわ・・。」
ヒルダは小声で言うと、自ら左手を差し出した。とたんにステラの顔がパアッと明るくなる。
「うん!喜んで、ヒルダさんっ!」
ステラはヒルダの差し出された左手をしっかり握りしめた。
「2人とも、こっち、こっち!」
窓際のテーブル席を取ったマイクが立ち上って声を上げてヒルダとステラを呼ぶ。
「ヒルダさん、あそこのテーブルみたいよ、行きましょう。」
笑顔で言うステラ。
「え、ええ。」
ヒルダはステラに手を引かれ、フランシス達のテーブルへ向かった。
「へえ~・・・あの2人・・・手まで繋いで・・ずいぶん仲良くなったんだな?」
ガタンと椅子に座り、テーブルの上で頬杖をつきながらマイクが言う。
「くそ・・・ステラめ・・・。俺がヒルダを連れてきたかった・・。」
ボソリというフランシスにマイク・カイン・ルイスが目を丸くする。
「フランシス・・・お前・・、ついにヒルダを好きな気持ち・・あからさまにするようになったよな・・?」
ルイスが言う。
「ああ、驚きだ・・・だが相手はこの学園のマドンナ的存在で『氷の女王』とまでうたわれているヒルダだからな・・・まあせいぜい頑張れよ。」
カインはニヤニヤしながら言う。
「う・・・うるさいっ!お前たち・・ヒルダに余計な事言うなよ?」
フランシスは友人達をけん制した。するとマイクが言った。
「しっ!ほら、2人が来るぞ。」
フランシス達は慌てて口を閉じると、テーブル席へやってきたステラが声を掛けた。
「何何?4人で何話していたの?」
ステラが興味深げに尋ねてきた。
「うん、今日は何食べようかって皆で話していたんだよ。」
マイクはサラリと言う。
「そうねえ・・何食べようかしら。あ、ヒルダさんはお弁当持ってきているのよね?」
ステラは背後に立っていたヒルダに尋ねる。
「ええ、持ってきているわ。」
するとカインがヒルダに言った。
「よし、それじゃヒルダ。俺達はメニューを注文してくるから、ここで座って待っていてくれるか?」
「ええ、分かったわ。」
「よし、それじゃ皆行こうぜ。」
ルイスに促され、ヒルダを残して全員がぞろぞろとカウンターへと向かった。
1人残されたヒルダは空いていた席にすわり、お弁当を机の上に乗せたところで、突然声を掛けられた。
「ヒルダさん。ちょっといいかしら?」
「え・・?」
ヒルダが見上げると、そこには険しい顔をしたアデルが他に2名の女子生徒を連れて立っていた―。
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