第4章 4 ヒルダへの報告

 コンコン


ヒルダが部屋で勉強をしているとノックの音が聞こえた。


(誰かしら・・お父様やお母さまなら声を掛けながらノックをするし・・・。)


「はい、どうぞ?」


ヒルダは声を掛けた。


「失礼します。こんばんは、ヒルダ様。」


ドアを開けて中へ入って来たのはルドルフだった。


「まあ・・・ルドルフ。どうしたの?まさか貴方が来るなんて思わなかったからちょっとびっくりしてしまったわ。」


ヒルダはドキドキする胸を押さえながら言う。


「はい、じつは父と2人、旦那様に呼ばれたのでこちらへ伺ったのです。そこで大事な話がありました。」


「大事な話・・・?」


ヒルダは首を傾げた。


「はい、そうです。実は旦那様が来週からヒルダ様が通う学校へ転校するように話があったのです。」


「え?!」


その話を聞いたヒルダの顔が青ざめた。


(そ、そんな・・・ルドルフは今の学校にお友達だっているのに・・まさか私の為に無理やり転校する事になったの・・・?)


ヒルダはルドルフが今学校で置かれている状況を何も知らない。それ故・ルドルフは父の命令で平民だけが通う学校から貴族だけが通う事の出来る学校へルドルフの意思を無視して転校させるのではと考えてしまったのだ。


一方のルドルフはてっきりヒルダと同じ学校へ通う事が出来て喜んでくれるかと思っていたのに、期待とは裏腹に青ざめたのを見てショックを受けてしまった。


(ヒルダ様・・・ひょっとして・・本当は僕と同じ学校に通いたくは無かったのですか・・・?)


するとヒルダの方から声を掛けてきた。


「ね・・ねえ。ルドルフ・・。その転校の話って・・やっぱり・・無理やりお父様に命令されたのかしら・・?」


「え?」


「だ、だってルドルフには今の学校にお友達だって大勢いるはずでしょう?それなのに知り合いも誰もいない学校に転校させられるなんて・・・しかも私なんかの為に・・・。それが何だか申し訳なくて・・・。」


俯きながら話すヒルダを見てルドルフは思った。


(やっぱりヒルダ様は心優しいお方だ・・・。僕の学校が変わる事の環境の変化を気にしてくれるなんて・・。僕が転校する本当の理由を知らないのに・・。)


だけど、ルドルフは自分が転校する本当の理由を告げる事は出来ない。もしその事をしればヒルダは自分を責めるに決まっている。


(そうだ・・ヒルダ様を心配させるわけにはいかないんだ・・・。)


「違いますよ、ヒルダ様。僕は自分の意思でヒルダ様と同じ学校へ通うんです。聞いて下さい、実は旦那様が高等学校へ通わせてくれる事になったのです。僕が通っている学校では、高等学校を受験するには今通っている学校では学力不足なんですよ。それで一計を案じた旦那様が僕を貴族だけが通える事の出来る中等学校へ転校させてくれる事になったんです。」


ルドルフはヒルダの両手を取り、じっと目を見つめながら言う。


「ほ、本当・・?その話・・?」


ヒルダは大きな目を見開きながらルドルフを見た。


「はい、本当です。それにヒルダ様も来週から学校へ通う事になるそうですよ?旦那様が仰っていました。なので来週からは2人で馬車に乗って登下校する事が決まりました。」


ルドルフはにっこり微笑みながら言った。


「そうだったの?良かった・・・。でも、来週からルドルフと一緒に登校する事が出来るのね・・・。すごく・・・嬉しいわ・・・。」


頬を染めるヒルダを見てルドルフは思った。


(ヒルダ様・・・僕はヒルダ様の事が好きです。己惚れるつもりは無いけれど・・・ヒルダ様も・・その反応を見る限り・・貴方も僕の事を好いてくれていると思っていいんですよね・・?)


そしてルドルフはヒルダの手の甲にキスをした―。





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