第28話 獣王国へ

任命式から10日ほど過ぎた日である。

今日は、獣王国へ出発する日だ。


ロキとパメラの特訓の成果についてだ。

ロキは耐久力向上Lv2になったのだ。

パメラは力向上Lv2、素早さ向上Lv2、気配察知Lv1を体得したのだ。

ロキは耐久力を中心にバランスよくパッシブスキルが上がり、パメラは力と素早さ特化型になったのだ。


そして1か月半前から始まった必殺技の特訓である。

ロキが槍技Lv1のスキルを得られたのだ。

パメラは拳技Lv1のスキルを得られたのだ。


ロキとパメラは中々覚えることができなかった。

今まで感じたことのない感覚をつかめという鎧の騎士カフヴァンである。

実演はあるものの説明も抽象的であるのだ。

ロキに対しては、ロヒティンス近衛騎士団長との闘いを思い出せともいうのだ。

それでも体得できなかったのだが、任命式の翌日に必殺技を体得したのだ。


任命式に思うところがあったロキである。

それからほどなくしてパメラも体得したのだ。

誰のための武術大会への参加か、なぜロキの方が早く体得したのか、パメラの中にも思うものがあったのである。


槍技と拳技を体得したロキとパメラのステータスに変化が出たのだ。

気力の体得であるのだ。

MPの下にSPの表示が現れたのだ。


NAME:ロキ=フォン=グライゼル

Lv:38

AGE:31

HP:847/847

MP:0/0

SP:211/211

STR:552

VIT:345

DEX:361

INT:0

LUC:230

アクティブ:剣術【2】、槍術【4】、槍技【1】

パッシブ:体力【1】、力【1】、耐久力【2】、素早さ【1】、気配察知【1】

EXP:722671947


NAME:パルメリアート=ヴァン=ガルシオ

Lv:38

AGE:20

HP:474/474

MP:0/0

SP:228/228

STR:855

VIT:154

DEX:792

INT:0

LUC:191

アクティブ:格闘【4】、拳技【1】

パッシブ:礼儀【3】、算術【1】、交渉【1】、力【2】、素早さ【2】、気配察知【1】

EXP:720273888


槍技Lv1と拳技Lv1での必殺技1回で気力(SP)を10消費したのだ。

槍技と拳技Lv1はASポイント100で取得できる。

AS100ポイントで覚えることができる攻撃魔法と回復魔法のLv3の魔力消費量は10である。

この辺には統一感があると感じるおっさんである。


ロキとパメラで気力(SP)の値が違うことに気付くおっさんである。

仲間支援魔法により気力の値が変わることにも気づくのだ。

仲間支援魔法が切れると気力の値も4分の1になったのだ。

仲間支援魔法の何に依存しているのか調べるおっさんである。

1個ずつ支援魔法をかけながら気力の値の変化を確認する。

どうやら体力、攻撃力、耐久力、素早さに依存することが分かったのだ。

4つのステータスを足して0.1で掛けた値のようであるのだ。

仲間支援魔法の増加分から簡単に出すことができたのだ。


【ブログネタメモ帳】

・気力と必殺技とステータスの関係


そして、おっさんの魔法も検証したのだ。


魔力発動加速である。

まず、魔法の発動時間はこのようになっているのだ。

火土風水Lv1 瞬時(速くて測定不能)

火土風水Lv2 瞬時(速くて測定不能)

火土風水Lv3 1秒

火土風水Lv4 2秒

火土風水Lv5 20秒


風魔法Lv5のテンペストの発動がもっと短い気がしたが、正確に測るときっちり20秒であったのだ。


次に神聖魔法の発動時間は次のようなったのだ。

神聖魔法Lv1 1秒

神聖魔法Lv2 2秒

神聖魔法Lv3 20秒

神聖魔法Lv4 不明

神聖魔法Lv5 不明


ここまでくるとASポイントと魔力消費と発動時間の全てに関連があることが推察できるのだ。

瞬時で測定不能な発動時間も魔力消費に比例していると分析できるのである。


【ブログネタメモ帳】

・ASポイントと魔力消費と発動時間の関係


ASポイント1 魔力消費2 発動時間0.2秒(推測)

ASポイント10 魔力消費5 発動時間0.5秒(推測)

ASポイント100 魔力消費10 発動時間1秒

ASポイント1000 魔力消費20 発動時間2秒

ASポイント10000 魔力消費200 発動時間20秒


魔力発動加速Lv1の効果は発動時間が2割カットであったのだ。

風魔法Lv5の発動時間が16秒になったのだ。

恐らくLv2で4割になるだろうとこれも予想できる。

今のところ、魔力発動加速が必要な状況ではないが、必要な時が来れば取得しようと考えたおっさんであった。

風魔法Lv5を2秒で発動したいのであればASポイントが10万必要であるのだ。


そして、このスキルの発動時間は回復魔法と攻撃魔法のみで、仲間支援魔法や4次元収納などの補助魔法はどうも発動時間がないようだ。


ロキ達の特訓が終え、おっさんの魔法もこの2か月半の間に思いつくものはあらかた分析が終わったのだ。


イリーナ天空都市は、10日間の間に開墾を進めてきた。

まもなく仮設住宅づくりに入るのだ。

今は河原の土壁の集合住宅に皆で住んでいるのだ。


それと並行して、冒険者の要塞までの灯りの魔道具設置作りである。

河原に仮設住宅を作ったが、本格的にピラミッド構造に家を建てるのである。

ピラミッド構造の使い方については、おっさん、チェプト、リトメルで話し合ったのである。

切り株については、川を挟んでフェステル伯爵領よりが8割の除去が終わり、大連山側はほとんど終わっていない。

とりあえず、このあたりから開墾はすすめていくのだ。


高さ1kmの壁で守られた街であるが、Aランクのモンスターがやってくるかもしれない。

確率で言うとかなり低いのであるが、ないわけではないといったところである。

この2月半の間に外壁を超えたモンスターはいないのだ。

そのときは、アヒム、イグニル、チェプト、アリッサが前衛で、メイが回復役で対応するように指示をしている。

当然、何度か組んでの戦いもやってもらって訓練もしているのだ。

街を作るということは街を守るということであるのだ。

おっさんの支援魔法無しでAランクモンスター討伐も確認しているのだ。

チェプトは武器がなかったので、ウガルダンジョンで手に入ったオリハルコンのインゴット(塊)から2個の短剣を作り装備させている。

騎士にはいなかったが、兵の中に短剣使いがいたので、1日1刻(2時間)でいいので短剣術の訓練をするように指示しているのだ。


メイについても、水、回復、治癒魔法がLv2であるが、まず優先してあげるべきは回復である。

回復魔法Lv3は範囲魔法であるのだ。

寝る前に回復魔法は全て使い切って寝るように、日々何回使ったか、これは羊皮紙にまとめるように指示をしているのだ。

回復の次は治癒で、最後に水をLv3にするように指示をしたおっさんである。


家宰チェプトと代官リトメルには330個のAランクの魔石があるので、何かあればそれを売って何かの購入資金に充てても良い。

魔道具はしっかり拡充を図るように言い聞かせたのだ。



今日は出発する日の朝である。

130人以上の人が河原に集まっている。

イリーナ天空都市の全員が集まっているのだ。

これから、獣王国に出発をするのだ。


「飛竜召喚!!」

「セピラス召喚!!」


『グアアアアアアア』

『クアアアアアアア』


飛竜とセピラスが一気に実体化するのだ。

多少怯える街の開拓者である。

しかし、10日間の間に見慣れたのか、泣き叫ぶものはいないのだ。

この10日間、サイクロプスが3体、魔力接続で力が増幅した状態で大きな木の根っこや丸太を運び続けていたのである。


「では皆さん獣王国に行ってきます。チェプト、リトメル代官留守を任せますね」


家宰と代官に留守を任せるおっさんである。


「「はい」」


「アルキード副団長、街護衛をお願いしますね」


「お任せください」


アルキードもしっかり返事をするのだ。


「アヒム、イグニル、アリッサ、この高さの外壁だとモンスターはほぼ入ってこれません。しかし、モンスターが入ってくれば、その時はあなたたちが中心になって倒してください。チェプトとメイもですよ」


「「「はい!」」」


20歳かそこそこの若者にAランクのモンスターを倒せというおっさんである。

しかし、誰もその言葉に疑問を持たないようだ。

ウガルダンジョン攻略10人の3人であるのだ。

そしてアリッサが30m近い丸太を、力1200を込めて悠々と持ち上げて開墾するのだ。

この深い森が短期間の間に開墾が進んだ理由が、召喚獣とおっさんらの力によるものと理解した街の開拓者であるのだ。


「では、召喚獣に乗っていきましょう」


「「「はい」」」


飛竜とセピラスに分かれて乗り込むおっさんらである。

今回獣王国に行くのは7人である。

おっさん、イリーナ、ロキ、コルネ、セリム、パメラ、ソドンである。


「ああ、そういえば、アヒム」


「へ?なんでしょう」


ロキが思い出したかのように、アヒムに声をかけるのだ。

おっさんもロキが配下に指示を出すのだなと思うのだ。


「ちょっとすまないが、フェステル伯爵にこの街の詳細について、まだ説明していないのだ。獣王国に行っている間に説明をしておいてくれ」


「な!そ、そんな…。3日前にフェステル伯爵に出発する旨話に行ったのでは?」


今回は朝から獣王国に出発するのだが、フェステルの街や王都に寄る時間などないのだ。

3日前に獣王国に出る旨、フェステル伯爵に伝えにいったのだ。

その時なぜ言わなかったとアヒムである。


「すまないな。出発の挨拶で頭がいっぱいで説明するのを忘れていたのだ。いやあ、できた配下を持つと俺も助かるなぁ。そうだ彼女も街にいるのだ。ちょうどいいな!」


良かった良かったというロキである。

フェステル伯爵はこの街のことをまだ知らないのだ。

開墾がある程度進み、外壁を測量士の力も借りて作ったくらいの認識であるのだ。

1kmの外壁も2kmの高さの建物も知らないのである。

イリーナやセリムも3日前に一緒に挨拶に行ったのだが、黙っていたのだ。

獣王国にあと3日で逃げ切れると思っているのだ。

救いを求めるアヒム。

アヒムと目を合わせようとしない、イリーナ達である。


おっさんだけが、この状況で、任命式の時はロキとアヒム達がごたごたしたが、良き主従の関係に戻ったなと思うのである。


「まあ、アヒムは街の警護があるので適任者はチェプトが決めてください」


「………」


おっさんにそう言われて真っ白になるチェプトである。

適任者でいうと代官のリトメルか、家宰のチェプトであるのだ。


絶望するチェプトやアヒムを後目に、2体の召喚獣が飛び立つのである。

手を振り、別れを惜しむ街の開拓者たちである。

上昇した召喚獣は、獣王国を目指して飛び立つのだ。

魔力接続により、時速240kmで飛ぶ飛竜とセピラスである。

おっさんらも振り落とされないように仲間支援魔法をフルにかけているのだ。


獣王国に入ったことないため、前もってソドンから道を聞いているのだ。

まずはウガルダンジョン都市に行くのだ。

そこから南行したほうが、大通りがあり分かりやすいとのことである。

両手がふさがっているので、タブレットを意識だけで操作し、場所を確認するおっさんである。


片道10日かかるウガルダンジョン都市も1時間10数分で着くのだ。

一旦町の近くで降りて、ソドンとともに作ったお手製の地図で確認するおっさんである。


おっさんも現実世界ではマップのナビだけで、どこかに出かけるなどしょっちゅうなのだ。

行ったことないから行けないなど、現代では通用しないのである。

雑なお手製の地図でも、タブレットの『地図』機能と併用すれば、正確な位置と目的地が分かるのだ。


結局ロキの槍が四次元収納に入れられなかったので、手に持っているのだ。

四次元収納には、おっさんの短剣、イリーナの剣、コルネの魔導弓と予備の魔石入りバック、セリムのレイピア、パメラのナックル、ソドンの盾、食料2日分が入っている。

そして金貨と白金貨である。

手荷物として、ロキの槍と、軽い毛布は縛って空気抵抗を減らし皆で分けて持ってきたのだ。


召喚し直して、再度飛び立つおっさんらである。

南行して、大通りの道から少し離れた距離感で進む2体の召喚獣である。

道なりに進むのだ。


(なんか、上空で風も強いんで分かんないけど、少し風が温かくなった気がするな。ウガルダンジョン都市もフェステルの街より少し暖かったけど、それ以上に暖かいかもしれないな)


荷物を持っているということもあり、1時間半に1回のペースで乗り降りを繰り返すおっさんである。


獣王国に入って1回降りて、そろそろ2回目の降下を指示しようとしたところである。


飛竜の背中の前の方で地面を見ていたコルネが発見するのだ。


「ありました!天井に鉄板のある馬車があります。前方やや右3里(9km)の方向です」


とうとう見つけるのだ。おっさんらより先行して出発してもらった馬車にである。

獣王国の王都へまもなく乗り込むのであった。

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