第27話 任命式
ここは1k8畳のおっさんの賃貸マンションだ。
「ふう、おれもブログを始めて8か月か。続くものだな」
おっさんは、昔からブログを起こしてきたわけではない。
今年の1月からである。
3月に異世界に行くようになったが、異世界もののブログを起こして8か月になるのだ。
異世界の街の話
異世界の冒険者の話
異世界のオーガの大群の話
異世界の王宮の話
異世界のダンジョンの話
異世界の結婚の話
異世界の街づくりの話
細部に至るまでより詳しく、そして臨場感あふれるようにブログに起こそうとしてきたおっさんである。
100を超えるブログを起こした結果、最近ではずいぶん表現がうまくなってきたように感じているようだ。
「俺もやればできるんだな」
緩やかに右肩上がりに上がっていくアクセス数を見ながら一言つぶやくのだ。
35歳になり、思うことがあって始めたブログでも、目に見える形でアクセス数が増えると嬉しいものだなと感じるようだ。
「さて10本の記事を2週間かけて起こしたぞ。見よ我が成果を!」
街づくり編
第132記事目ハンバーグ作ってみた ~サイトもコピペしてみた~
第133記事目施設用魔道具を買いに来た ~ミニチュアはおまけでつきますか?~
第134記事目魔道具の秘密 ~ドワーフは何処~
第135記事目フェステル伯爵領との間に道を作ってみた
第136記事目ウェミナ大連山に行ってみた
第137記事目イリーナの街(仮称)受け入れ計画
第138記事目必殺技と気力の関係 ~〇〇スラッシュを使ってみたい~
第139記事目パッシブスキルの取得条件考察 その1
第140記事目天空都市を作ってみた
第141記事目街に住人がやってきた ~バーベキューで歓迎会~
PV:992841
AS:121972
「ぐふふ、ASポイントも貯まったしスキル取っちゃうんだから。さてと、まずはステータスの底上げをするか」
独り言でぐふふというおっさんである。
・力向上Lv5 10000ポイント
・耐久力向上Lv5 10000ポイント
・素早さ向上Lv5 10000ポイント
・幸運力向上Lv5 10000ポイント
・魔力支援魔法(仲間)Lv3 10000P
・素早さ支援魔法(仲間)Lv3 10000P
・知力支援魔法(仲間)Lv3 10000P
・幸運力支援魔法(仲間)Lv3 10000P
「ふむ、パッシブスキルはこれで全部かな。10000ポイントで取得できる仲間支援魔法も全てとり終わったぞっと、仲間支援魔法で4倍の体力と魔力と知力は6000超えか」
ASポイントを8万消費し、自分と仲間の強化を優先するおっさんである。
ロキ達の訓練中に街作りを進めていたおかげでスキルの拡充が図られたのだ。
「何かあったときのために回復魔法も取っておくか、上位魔法として、神聖魔法も上げておくかな」
・回復魔法Lv5 10000ポイント
・神聖魔法Lv2 1000ポイント
・神聖魔法Lv3 10000ポイント
「最後に魔力発動加速だな。これも、どうなるか獣王国に行く前に検証を済ませておかないとな」
・魔力発動加速Lv1 100ポイント
とりあえず、Lv1のみ取得して効果を検証するようだ。
なお、既にどの魔法がどの程度時間がかかるか計測済みである。
NAME:ケイタ=フォン=ヤマダ
Lv:39
AGE:35
RANK:A(・)
HP:1600/1600
MP:1640/1640
STR:324
VIT:476
DEX:476
INT:1540
LUC:496
アクティブ:神聖【3】、火【4】、水【4】、氷【1】、風【5】、土【4】、回復【5】、治癒【4】、魔抵解除【5】、物抵解除【5】、収納【1】
パッシブ:全ステータス向上【5】、魔法耐性【4】、消費低減【3】、回復加速【2】、発動加速【1】
仲間:経験値上昇【2】、全ステータス支援【3】
EXP:1090248074
PV:992841
AS:20872
「なんか、ステータス一覧がスッキリしているな。さすが検索神様だな。サイトは必要な情報をわかりやすくが基本ですよね。さて、異世界に戻るか。今日は大事な任命式だからな」
異世界でも今日は今日で予定があるようだ。
「さて、異世界に戻るか」
『ブログ記事の投稿が確認できました。異世界にいきますか はい いいえ』
おっさんは『はい』をクリックすると、目の前の風景が河原の側に作った土壁の簡易小屋に変わる。
横には愛妻イリーナが眠りについている。
「おはよう」
「ん?ああ、おはよう」
どうやら起きていたようだ。
今日はアルキードやリトメル達がやってきて3日目である。
3日間の間、ずっと話し合いをしていたのだ。
どういう街にしていくのかについてである。
その計画について話し合って、開墾するなり、家を建てるなり、施設型魔道具を取り付けるなりするのである。
話し合いにゆっくり2日ほど設けたおっさんであったのだ。
その間ロキとパメラは全力で訓練中である。
鎧の騎士カフヴァンとの訓練で集中できるように、川挟んで大連山側の土地で行ったのだ。
2日目以降も河原でバーベキューであったが、パンや野菜もバランス良くを基本に食事をしてもらったおっさんである。
娯楽の少ない世界で、食への関心は高くなるのだ。
十分な量の食事だけでこの街に来て良かったと思う人たちも多いのである。
今日は代官と騎士団の任命式である。
従者長や兵士長などの役職もこの時決めるのだ。
騎士団や兵士たちもこれだけ広い領だと、団を部隊や使用する武器などで分けたりするのであるが、まだ人も少ないので責任者だけ決めるのだ。
3か月後、半年後の受入れが進んでから、その辺りはおいおい話し合っていくのである。
元々任命式は武術大会が終わってからでも、とも思ったおっさんである。
しかし、人が100人もいれば責任者はどうしても必要である。
おっさんらがいない時も組織は機能しないといけないのだ。
そのための任命式であるのだ。
任命式は天空都市の建物最上階で行うのだ。
お昼過ぎである。
階段を登っていくおっさんらである。
2kmの階段だ、体力がない者、何か任命されないものは上がらなくても良いといったおっさんである。
それでも参加を希望するものが多いのだ。
それもそうだ。
この街のシンボルである。
次の機会がないかもしれない。
この機会に10階に行ってみようと思うものが多かったのだ。
アルキードが子供を背負って、階段を上がっていくのだ。
リトメルは文官なので体力もなく、子供は騎士達が背負ってあげるようだ。
範囲魔法である回復魔法Lv3をかけながらおっさんも進んでいくのだ。
(やはり、いくつかワープゲートがないとな)
この建物を作ろうと決めた時、おっさんが思ったことは移動の負担をどう減らすかということである。
1層1層がかなり広いため、常に別の階層に行く機会は少ないと思っているおっさんである。
必要な店さえ、各層においておけば、困ることはないだろうと。
しかし、今回みたいな儀式で最上階に皆で上がるならワープゲートはどうしても必要であるのだ。
スロープも外周にあるが、ピラミッドの外周は下層だと1層上がるだけで10km以上あるのだ。
馬車でも時間がかかる。
時間をかけて上がるおっさんらであったが、ようやく頂上についたのだ。
地面から2kmの高さだ。
下界はうっそうとした大森林の緑である。
世界の果てまで見えるのだ。
一面が緑の絨毯だ。
頑張って登ったかいもあってか、感動している人も多いようだ。
なかなかの登山である。
アルキードに至っては、騎士の鎧を着て、30kgほどの子供を背負い、槍を握っての登頂だ。
「すっごい高いよ!父様!!」
「そ、そうだな…」
はしゃぐ子供をしり目に、さすがに疲れた様子である。
10階は1.6平方kmの広さである。
縦横400mの空間なので下層に比べたら狭いが、結構な広さである。
最上階はその上に、雨避けとピラミッド感をだすために三角錐の天井を作っている。
「久々に来たが、いい景色ですね。さすが天空都市イリーナです」
「そうだな」
おっさんが感慨にふけっているので、イリーナが返事をする。
そして、イリーナは思い出すのだ。
なぜ、このような建物を作ったか、おっさんに聞いたときのことを思い出すのだ。
河原で、皆で食事をしている時であった。
焚火に当たりながら、おっさんは恥ずかしそうにこういったのだ。
『やっぱり、皆の思い出といったらダンジョンじゃないですか?そのイメージを元にこのような階層構造の建物を作りました。それに、おかげで地面を広く有効に使えますしね。広い土地で作物を育て、家畜を飼いましょう。見晴らしも素晴らしいですよ。それに…』
たどたどしく、あれこれと、とってつけたかのような理由を述べるおっさんであった。
それを聞いてイリーナだけでなく皆は分かったようだ。
おっさんのイリーナとの思い出といえばそれはウガルダンジョンである。
出会ってから1年ほど、そして1年近くダンジョンに費やしたのだ。
共に歩み共に過ごし、共に攻略したダンジョンをイメージした天空都市である。
おっさんのイリーナへの思いの詰まった街にしようとしたのだ。
なんとなくこれから大ごとにもなる気がした皆であるが、これもいいかと思ったようだ。
天空都市の最上階で跪くロキである。
その両端にはアルキードとリトメルがいる。
目の前にはおっさんがいる。
その後方には、その様子を見る100人近い人たちがいるのだ。
槍を渡すおっさんである。
ロキの持つオリハルコンの槍である。
「ロキ=フォン=グライゼルよ。あなたをヤマダ騎士団の騎士団長に任命する」
「は!」
山田も騎士団を付けたらかっこよく感じるなと思うおっさんである。
ロキがおっさんの領の騎士団長になったのだ。
感無量の顔をするロキである。
まだ10数名の騎士団であるが、数ではないようだ。
夢が叶ったロキである。
【おっさん心のメモ帳】
・任命式 ~ヤマダ騎士団結成~
大事な任命式なので、タブレットは出さず内容はあとでまとめるおっさんである。
「これから、たくさんの騎士が領内にやってきます。よろしくお願いしますね」
「は!!!」
忠臣ロキが力強く返事をするのだ。
同時にアルキードを副騎士団長に任命するのだ。
リトメルを領都の代官に任命したのだ。
その後、兵士長と従者長予定者の2名がおっさんの前に跪く。
ロキ、アルキード、リトメルは幹部になったので、おっさんの正面の端に並ぶのだ。
騎士、兵士、従者の長が決まったのだ。
役人は代官リトメルが長である。
「では、最後にアヒムとイグニル前に」
「「は!」」
兵士長と従者長もロキ達と反対側に並ぶ。
おっさんの前に跪くアヒムとイグニルである。
ロキはアヒムとイグニルも何か要職に就くのかなと思うのである。
チェプトは家宰になった。
アリッサはイリーナの料理教育係兼騎士。
メイはメイド長兼魔導士一期生。
皆何かの要職や役割を与えられているのだ。
できれば、アヒムとイグニルにも要職が欲しいと思うロキであったのだ。
「では、任命します。アヒム=ペリオ、そして、イグニル=ファスター、2人はロキ=フォン=グライゼルの配下にします」
「「は!」」
「な!?」
力強く返事をするアヒムとイグニルである。
そして、驚き思わず声を出すロキである。
「ロキをよろしくお願いしますね」
「「はい」」
「な!!ちょっとお待ちください」
ロキがたまらず止めに入るのだ。
アヒム達からロキの元に付けてくださいという話をイリーナと相談したおっさんであるが、ロキにはしていないのだ。
イリーナが、ロキが絶対に反対するから黙っておくようにと言われたのだ。
確かにそんな気がしたおっさんである。
「ロキ騎士団長いかがしましたか?」
おっさん前に移動して土下座をするロキである。
「アヒムとイグニルはダンジョン攻略に多大な貢献をしてきました。私の下ではなく、ケイタ様の直下においてくださいませ!何卒!!」
おっさんの直下と、ロキの配下では、騎士としての格が違うのだ。
直臣と陪臣である。
ロキはフェステル伯爵(当時の子爵)ではなく、クルーガー家に仕える騎士であった。
フェステル家にとっては、陪臣にあたる。
男爵家に仕える騎士は男爵になれない。
陪臣は直臣の騎士団長にも副騎士団長にも基本的になれないのだ。
騎士になって15年、必死に武勲を上げようとしたロキである。
危険なワイバーン討伐にも自ら手を上げたこともあるのだ。
どれだけ直臣が大事か分かっている。
部下思いのロキはおっさんの下に置いてあげたいようだ。
「それはできません」
「なぜですか!」
「アヒムとイグニルがそう望んだからです」
「そんな馬鹿な!ど、どういうことだ!アヒム、イグニル!!」
横にいるアヒム達を睨むロキである。
「恐れながら、私の直属の上司はロキ様です。それは今までもこれからも変わりありません。騎士とは、騎士道を貫くもの。ロキ様に教わった通りのことをしたまでのことです」
アヒムが代表して言う。
何を言うかも既に想定したようである。
ロキの睨みも一切意に介していないようだ。
決心は固いのだ。
後ろでやり取りを見ている人たちがざわざわしだす。
アルキードは騎士の経験も長いので、やり取りから何が起きたか十分に推察できたようだ。
部下思いのロキと、上司思いのアヒム達の間の話であるのだなと思うのである。
「ロキ=フォン=グライゼル」
「は!」
「私は、配下にはそれぞれの希望を最大限尊重します。私はアヒムとイグニルに対して生き方を尊重しました」
「…」
ロキは返事ができないようだ。
「ロキよ。あなたは、もし今回のことを気に病むなら、地位も名誉も勝ち取り、騎士としての成果を今まで以上に上げることです。いいですね?」
「は」
小さくであるが返事をしたロキであったのだ。
こうして街づくりのための要職が決まったのであった。
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